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第17話 卵1

(アレク視点)


エンジュを魔方陣から動かした勇者は殺してやろうかと思ったが……。

エンジュがダメだと言った。

そして、勇者はもう魔王とは戦わないと言って帰って行った。


勇者が魔王を倒しに来ない……。


「この世界のことわり」は不変な物だと俺は思っていた。

誰かの言葉や力で変えられないのが「この世界のことわり」だとあきらめていた。

なぜなら『魔王』は所詮「この世界のことわり」の構成要素でしかないのだから……。

ただ『魔王』という駒であり続ける事が、俺の存在意義だったのだ。


エンジュは「この世界のことわり」を変えた。

エンジュはきっとそれがすごい事だとは知らない。


俺はいつもの様にベッドでエンジュの髪をブラッシングする。

そして、エンジュの右足首に目が止まる。

もうそこに重い足枷はない。

だけど、白い肌に足枷の跡が青黒くなっているのが酷く目についた。

エンジュにはもう何かに拘束されることなく、自由に生きて欲しい……。

エンジュは勇者に自分は魔王のペットなのだと言っていた。

俺はエンジュにそう思わせていたらしい。

だから、俺は言った。

「俺はエンジュの事をペットだとは思ってない」

エンジュは首をかしげた。

「なぜそこで首を傾げるんだ?」

俺は最初に会った時に、エンジュを『飼う』と言った事を後悔した。

俺はブラシを持っていない方の手を、エンジュの頬に当てた。

こんなに大切にしてる。

愛しく思っている。

しばらく見つめ合っていた。

自由に生きて欲しい。

でもそばに居て欲しい。

気持ちが伝わればいいのに、言葉は出てこない。

そして、エンジュは違和感に気がついた。

「アレク右角が欠けてる……」

エンジュは右角をそっと手で触る。

エンジュの為ならば力が無くなっても、『魔王』で無くなってもいいと思った。

今も力はそこから止めどなく流れだしている。

俺は角に触れているエンジュをかき抱いた。


エンジュの甘い匂いが頭を痺れさせる。

抱きしめた腕の中に華奢で柔らかい体を感じた。

大切にしたい気持ちと、壊してしまいたい衝動で眩暈がした。

だから……。

俺はエンジュの首筋に口唇を落として望んだ。

「俺の卵を生んで欲しい。」

だか、エンジュは不思議そうに聞いた。

「卵はどうやって生むの?」


あまりにもエンジュが可愛くて愛しくて俺は笑った。

そして、その行為を言葉で説明できなくて……。

自分の欲を何も知らないエンジュに向けるのは、後ろめたい気持ちになった。

エンジュが望まないなら、何もしなくてもいいと思った。

俺はいつもの様に、ただエンジュを抱きしめて眠った。

それだけで幸せだった。


ただ一つ心配な事があった。

エンジュが目が覚めるまで、魔方陣からエンジュを動かしてはいけないと言われていたのに途中で動かしてしまったのだ。

……明日リッカルドのところに行って来た方がいいだろう……。

俺はその事を考えながら眠りについた。

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