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第11話 大賢者

(アレク視点)


エンジュが熱にうかされながら、言ったのだ。

ここで死ねるなら幸せだと……。

俺は自分の無力さ加減に腹がたった。


最初に会った時、エンジュは右足につけられた足枷と重い鎖を引きずって歩いていた。

たぶんエンジュは長い間神殿の外に出された事が無かったのだろう。

エンジュは神殿の外にだすと、まぶしそうに目を細めた。

そしてキラキラした目で世界を眺めた。

「世界は美しいですね。」

そう腕の中で言ったのだ。

エンジュにはこの世界がとても価値がある素晴らしいものらしい。

俺はあまりに長い年月『魔王』としてこの世界の均衡を保ってきた。

その役目を負う事が当たり前だと思ってた。

守ってきた世界は美しいらしい……そんな事を俺に言うものはいなかった。

俺にとって世界はただそこに当たり前に存在するものだった。

だが、エンジュが美しいと言えば世界は本当に美しいもののように思えた。


それにエンジュは俺に『仲間だ』と言った。

エンジュが何故俺を仲間だと言ったのかはわからない。

でも、ただひとりの魔王として存在し、人間からうとまれ、世界の均衡を保つ為だけに存在する俺はその言葉が嬉しかった。

そのエンジュが、今ここで死んでもいいと言う。

俺はエンジュを失えばまたひとりになってしまう。

なんとしてでもエンジュを救いたかった。

でもこんな症状は知らない。

刻々と状態は悪くなる。

人間の医者か神官を連れてくれば、どうにかなるのか……?

難しい様な気がした。


そして、俺はひとりの男を思い出した。

『魔物の森に住む大賢者リッカルド』

やつは不思議な人間だ。

確かに食べる為に魔物を狩るのだが、知能のある魔物とは仲良くしている。

魔物の森の遥か向こうにひとりで住み、そして自称大賢者なのだ。

昔とあることで世話になり、その不思議な力に驚嘆させられた。

やつなら不可能な事でもなんとかしそうな気がした。

ドラゴンで飛べば魔物の森の遥か端の方までもすぐに行って来れるはずだ。

俺はクレバーとサキに後を任せてドラゴンで飛んだ。


森の奥深くに結界に守られた小さな家を見つけた時、俺はほっとした。

そして、ありったけの出力で攻撃する。

俺の攻撃は簡単に結界に弾かれた。

やっぱりリッカルドは不思議な人間だ。

何度か続けると、面倒くさそうに男がでてきた。

「なんですか? 呼び鈴代わりに攻撃ぶっぱなすのやめてくださいよ」

俺は結界の外から事情を叫んだ。

「それは神が決めたその人間の寿命でしょう。俺は忙しいんです」

すげなく断わろうとする。

「何でもするから助けてくれ!」

俺は必死で叫んだ。

男はふーん。と言って何か考えている。

そして、恐ろしい事を言ったのだ。

「じゃあ魔王の角の素材が欲しいです」

俺は真っ青になった。

「無理だ!魔王の角は力の源でもあり、角はどうこうできるものではない!」

下手したら消滅してしまう。

「おまえは世界を滅ぼしたいのか?!」

リッカルドはふふんと変な相槌を打った。そしてさらに言った。

「だったら先っぽちょっとだけでいいですよ。何でもすると言いませんでしたか?魔王?」

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