第5歩 ゴッドファミリー
なんて一日だったんだ……
予想外のことがあまりにも多すぎた、転校生相戸瑠夏、得体の知れない奴だ、予期せぬ意表を突いた攻撃をメインに俺に近付いてきて、懐に入られてしまった。
これから奴はどうやって俺に攻め入ってくる?
直接潰しに来るのか、それとも周りを使ってジワジワと俺を追いやる作戦か……
残念だが味方はいない、孤独な戦いだ、でもそれは仕方のないことだ、世界のトップを走るものは常に孤独、隣に並ぶものがいたらトップじゃないからだ、もちろんそんなことは理解している、それでもこの奇妙な不安、奴は何者だ……
「とりあえず、少なくとも今は一勝一敗だ……」
隙を突かれてしまったものの、すでに奴の本性を暴いている、これは奴にとって大きな損失だ、贔屓目に見ても俺の一勝は硬い、隙を突かれたことだって余裕から来たものではあるが、それでもこの俺を驚かすことができたんだ、それを評価して相戸の一勝としてやろう。
「ねえ、ママぁ……お兄ちゃんがまた変なこと言ってるよぉ……」
「ほっときなさい、紀文はいつもそうなの」
おっと、考え込みすぎてリビングにいた事を忘れていた……
心の声が一部外に漏れてしまったみたいだな……
朝のホームルーム後は特別な会話もなく、淡々と授業が続いていった、瑠夏に対する異常な警戒を解く事はなかったが、周りの者達も特別気にする様子もなく、終わってみればいつも通りのリズムで家に帰ってきていたのだった。
ボッキーの家は両親と小学6年になる妹、ボッキーの4人家族、ごく普通の両親とおしゃべりで気がきく人気者の妹、梨那に囲まれた側から見たら幸せな一般家庭である。
だが、それがボッキーは気にいらなかった。
将来の約束された神に選ばれた男、むしろ自身が神であるとさえ自負するボッキーに取って普通ということが我慢できないのだった。
「ねぇママ! わたしね、漢字テストで満点が取れたんだよ!」
「へぇすごいじゃない、6年生の漢字って結構難しいのに、よく勉強してたのね」
「えへへ、漢字得意なんだ! 100点取れたのはわたし一人だったんだよ! わたしね、将来偉くなってママとパパにおっきいお家を買ってあげるんだ!」
満面の笑みで梨那は誇らしげだ、勉強ねぇ……
「ほんとぅ? 梨那はいい子ねぇ、ママ期待してるからね」
いい子? テストで良い点を取ればいい子か……
「うん! これからうんとうんと勉強して偉くなるんだ!」
「ククク……」
おっと、我が妹ながらあまりに滑稽でつい笑いが堪えられなくなってしまった。
テストなんてものはこの世で一番意味のないものだ、決まった事を答えて正解でそれがなんになる? ルールなんてものは時代よって変化していくものだ、それをキッチリと覚えたところでなんになる、しかも、採点をするものは上の立場だってことなのか? この俺より上の人間なんて存在しないんだ。
別の言い方をすれば俺の言葉は全て満点だ、仮に俺がテストでミスをしたとしよう、でもそこからは俺の回答が正解になる、だから勉強なんて必要ない、俺が常に正解だからだ!
俺の妹でありながらそんなことすら理解してないなんてな……
「もぉ! お兄ちゃん、何がおかしいの?」
不機嫌そうな顔をして妹なりに俺を睨んでるつもりか。
フッ、愚かな梨那でも俺に蔑まれていることには気付いたらしい……
俺の妹なら、胸を張って自分だけを信じて進んでいけばいいんだ、それがトップを走る者の家族としての務めだ!
ハッ!!
そうか……俺は相戸と対する時、自然と奴の出方ばかりを伺い、自分を見失っていた……
俺自身らしさを失っていたわけだ……
普段通りいつもの俺で相対せば全く問題のない相手だったはず、なのに俺は想定外の事態にばかり気を取られらしくもなく舞い上がってしまっていたということか……
「フフフ……もうこっちのものだ、見てろよ……」
まさか、家族にヒントを貰うことになるなんてなこんな家族でも役に立つことがあるとはな……
まがりなりにも一流の俺の家族の一員というわけか。
「ママ……今日のお兄ちゃん、いつもより変だよ……」
「ほっときなさい……」