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第2歩 正門での戦い

圧倒的通学路を経てボッキーこと窪木紀文は母校である千歳高校にたどり着いたのだった。


春先の心地よい風と共に、吸い込まれるように学生達が校舎へと入って行く、そんな中ボッキーは校舎を蔑むように眺めてながら正門前で立ち止まっていた。



嘆かわしいな……



今日もまた、ここにたどり着いてしまった……


飾り気のないコンクリートで作られた感情をまるで感じない建造物……何が楽しくて周りの者達は進んで行くのだろうか。

まぁ、きっと愚かな者共は気付いていないのだろう、すでに死ぬまで下りることの出来ないレールの上に乗せられていることに、それでいて自分は自由だと錯覚していることに。


強制されていることに気付いていないんだ、ロボットのように統一された規格を作るべく作成された学習カリキュラム、敢えてそれを競わせて出来のいい者を抽出させ選定していく世界の裏のルール。



ふっ、外から陽気なメロディが聞こえてきてる……

これも無知な者共を洗脳するためのツールか……



「こらっ! 窪木! 始業のチャイムがなってるぞ! いつまでボーッと突っ立ってるんだ!」



ハッ!!


生徒指導の村松。

この男は時たま校門に立ちふさがり生徒達の監視をしている奴だ。


この俺が……世界を変える俺が、ただ突っ立っているだと?




なるほどな……

愚民にはそう見えてしまうのか、俺にすべて見抜かれているとも知らずに俺が何も知らずにただ、突っ立っていたように見えたわけだ。


バカバカしい、だが返事だけはしてやらないといけないか……


「仕方ないですよ先生、俺と先生じゃ見えてるものが違うんですから」


フッ、愚かな公僕じゃこの言葉の意味分からないだろうが仕方ない、知能指数が違いすぎる者同士では会話が成り立たないと言うからな……


「相変わらず意味不明なことを言ってるな……見えてるものが違うと聞こえる音も違うのか? チャイムが聞こえたろ! さっさと教室に行くんだホームルームが始まるぞ!」


「なるほど……フフフフッ……」


学校の陳腐なルールが俺に通用すると思うなよ、俺には俺のルールがある、俺に取って俺自身のルールは絶対だ!


「窪木! ふざけてるんじゃないぞ!! さっさと教室へ行け!」


「あっ……は、はいっ!」









*******




圧倒的正門前での出来事を終えボッキーは颯爽と教室へ向かっていた。


2年C組。


同学年では4クラスある中で、ボッキーはC組だ、トップしか目指さないこの男に取ってA組に入れなかったことは不満でしかなかった。


つい二週間ほど前、新学期が始まり2年になったボッキーは1年の時にも叶わなかったA組にまたもなれなかったことが許せなかった。


これは陰謀……


ボッキーの圧倒的に才能を恐れる教師達の嫉妬にもに近い策略によるものだ


と、ボッキーは確信していた。


もちろん、公立の高校でのクラス分けにA組、B組、C組等で違いはない、ただボッキーがそう思っているだけなのだが、自分のルールに忠実な故、C組であることを受け入れることが出来ず、クラスメイト達を見下しているのだった。





クソ……村松め……


これだから体育教師は特に嫌いなんだ、何かあれば力で解決しようとばかりに筋肉を見せつけるためにパツパツのシャツを着て威圧をしてくる。


俺はそんなものに何も感じないが、あれじゃ人によっては恐怖を感じてしまう、そんな旧世代的な指導を未だに行う村松は俺の作る時代には粛清されるべきだ。



村松……お前は奴隷決定だ……

今のうちにそのアホヅラで無駄に意気がっているんだな。



おっと……俺としたことが、教室を行きすぎてしまった。

流石の俺でも考え事をしながら歩いていると、周りが見えなくなってしまうな。




ボッキーはC組の教室前を行きすぎてしまったため、扉の前に戻るのだった。


しかし何かがおかしい、いつもと違う教室の雰囲気に天才ボッキーはすぐに気がつくのだった。





静かだ……


この時間、いつもならもっとクラスメイト達が騒がしくしているはずなのに、妙に静かだ。


まさか、休み……?


いや、そんな訳がない、ならさっきの村松とのやりとりはなんだったんだ。




なるほどな……



2年になって、C組の者共と一緒になり10日余りか、ようやくバカなC組の奴らも俺という神を敬う気になったという訳か。


絶対的神である俺が来る前はみんな祈りを捧げている、だからこれだけ静かだってことだ。


ならばここは俺が颯爽と登場して、気の利いた言葉でもかけてやらないとだな。




ガラガラッ



思い切りよく扉を開けてやった。


ここで、俺なりの朝の爽やかな挨拶だ!



「みんな、待たせたな! もう祈りを捧げる必要はないぞ!」





ただでさえ静かだった教室が凍りつくような空気になっていた……

だが、それに気付けるボッキーではなかった。




……あれ、みんな祈りを捧げてない。

俺を待っていたはずなのに、まさか……バカなC組は祈りすら耐えれずにやめてしまったのか?



あっ、担任の小野寺がもう来てる……

んっ? その隣にいるのは……?



普段通り席に座っている生徒達の前にまだこの時間にいるはずのない担任、小野寺先生が立っていた。

ボッキーは何が起きているのかわからなかった。

しかも、小野寺先生の隣には見たことのない女が立っていたのだった。

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