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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

その国は初手ですべてを誤った

作者: 姫崎しう

 黒髪で黒目のわたしと同じ年齢の女の子を見なかったか、ですか?

 魔人でも現れたんですか?


 違う? それならどうして?


 詳しくは話せないが、この国に必要な人だから……と。

 なるほど。それは残念でしたね。たぶんその人は死にましたよ。

 何で驚いているんですか? えっと、何を知っているのか、ですね。


 その人なら、たぶんうちで保護していましたから。

 ですが保護して数日で死んでしまいました。

 亡骸なら村の共同墓地に埋葬しましたよ。どこの誰かもわかりませんでしたし、数日で亡くなってしまいましたから。


 ですが、彼女のアドバイスのお陰でこうやってお店を持てるようになりましたし、村の人たちも助けてもらいましたから、しっかりと弔ってあげようということになりました。

 きっと教育の行き届いた高貴な出の方だったんですね。


 どうしました? どうして怒っているんですか?


 どうして最初に惚けたのか、ですか。

 なぜって、貴方達は最初にこう聞きましたよね? 黒髪黒目の人を知らないかって。

 彼女は黒髪でしたが、黒目かどうかわたしにはわかりませんでしたから。


 だって両方の目、どちらともがなくなっていたんですよ?

 どうして生かしておかなかったのか、って怒っていますけど、むしろ見つけた時にはその場で死んでもおかしくないほどでした。


 貴方達がどういう身分の方かは分かりませんが、心臓に剣が刺さった人を助けられますか?

 死ぬギリギリまで血を流してしまった人を助けられますか?


 国に必要だというのであれば、なぜ彼女はあのようなことになっていたんでしょう?


 こんなことで黙ってしまう癖に、よくわたしのせいにできましたね。

 あとどうして彼女があんな目に遭ったのか、知っていますよ。

 数日でしたが、お話しする時間はたくさんありましたからね。むしろ、彼女は苦しさを紛らすために、たくさん話してくれました。


 ですから、実は貴方達が何者かは大体予想がついています。


 お城で聖女召喚をしたんですよね。成功したはずの聖女召喚は、魔人のような見た目の彼女を呼び出しました。

 それに怒った国王様は彼女を王都から追放したそうですね。

 追放された彼女は生きるためにあちこちの村や町に行きましたが、その見た目から仕事を得られないばかりか、暴力も振るわれたと言います。


 そうしてこの村に辿り着いた時、彼女の両目はありませんでした。どこかの村でえぐり取られたんだそうです。

 体も傷がついていないところを探す方が大変で、どうやって歩いてきたのか骨も折れていました。

 彼女の見た目で追放すれば、こうなることは分かりますよね。


 むしろなぜ生きていると思えたんですか?


 ああ、この村だけが作物の収穫量が増えて発展しているから。

 そうでしょうね。精霊様に愛される聖女が眠るこの地が発展するのは、普通のことです。

 この村を害するものが現れれば、精霊様は守ってくださいます。


 ですがこの国にその恩恵が向くことはないでしょう。

 それが彼女の最後の言葉ですから。

 これから衰退していくと思いますけど、頑張ってくださいね。


 亡骸を持って帰りたい? わたしは止めませんが、精霊様がお許しになると思うのですか?


 ええ、はい。では、さようなら。



――もう二度とわたし(聖女)を探しに来ないでくださいね。

異世界転移タグについてですが、ガイドライン的に不要だと判断しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うんうん。 読んで良かった大満足です。
[一言] 追い出されて見た目故に迫害されて致命傷を負って野垂れ死ぬ直前に村に保護されるまでが短編で収まってて面白かったです。 …勇者、もとい聖女様が死後に精霊化した…?
[良い点] さらっと読めて面白かったです。 [気になる点] この使者と話していた女性は聖女で、姿を変えていたのかすでに死んでいて幽霊のような存在で現れたのか気になりました。 [一言] 作者様の他の作品…
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