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透華帳  作者: 彩葉 透華
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とある通院日

今日は木曜日だ。通院日だ。嫌いな医者に会う日だ。好きな心理士さんに会う日だ。隔週木曜日、それは心療内科への通院日。嫌で嫌で仕方のない日ではない。心躍る嬉しい日でもない。外に出て人混みに塗れて震える声で受診し、カウンセリングで何かを得る日だ。


今日はお外に出るのが辛いみたい。だって昨日もお外に出たんだもの。最近は毎日お外に出れるような体調ではない。そんな快調ならきっとお化粧して髪の毛整えて香水ふって、ついでにウィンドウショッピングでもしようかな、なんて思いながら服を掻き分けコーディネートをするんだろう。不調な私は着やすい楽な服を適当に選んで出かけるだけ。あ、そうそう、忘れちゃいけないスッピンの味方、マスクちゃん。これ付けてればスッピンでもヨユーっしょ、って脳内に住むギャルが言ってるから大丈夫。なはず。


ちょっと早めに行ってお昼ご飯でも食べようか。でも朝ご飯食べたからあんまりお腹空いてないし、そもそも外に出るのが気乗りしない。結局ギリギリまでベッドで枕とイチャイチャ。名残り惜しく後ろ髪を引かれながらも、迫る時間に慌ててスニーカーを履く。枕ちゃん、待っててね。ちゅ。


外に出ると嫌味なくらいに快晴。ちょっとくらい曇っててもいいのに。張り切っちゃって、もう。


足取り重くなんて言ってらんない。だって時間ギリギリだもん。行きたくなくても行かないと困るのが病院。キャンセルや変更は1週間前までと言われてるから、当日キャンセルは罪悪感に苛まれる。ギリギリもギリギリ、ギリギリすぎるので少し速足。これでちょっとは痩せるかな。ドキドキ。運動不足のせいで、心臓ドキドキ。


努力の甲斐ありギリギリに駅到着。乗り遅れなくて済んだ。よかったよかった。なんてTwitterで呟いてたら病院のある駅に到着。数駅なのであっという間。いやいや、電車で「あっ」と言ってはいけません。周りの人に認識されちゃうでしょー。


最近の私は兎に角、他人に認識されたくない。なんて、おじさんに「すげー髪だな」って言われるくらいの赤髪女が何言ってんだって思われるかもしれないけど、ほんと。本当は赤髪隠したい。だってお外に出ることで精一杯だから髪はボサボサスッピンマスク。おまけにいま身体に大量のお肉が纏わりついてる。みんな見ないでーーーーー。


なるべく空気ちゃんになりながら病院へ。「お願いします」と受付を終え、座ろうとしたら、うーん、今日は座り心地のいいソファーが空いてない。残念。仕方がないので硬い椅子に座ってTwitterを開いた途端「33番の方ー」ここの病院ではプライバシーに配慮して受付で渡された番号で呼ばれるのだ。へけっ。


うん、ドクター。今日も嫌な感じ。でも良くも悪くも診察はほんの3分程度。ううん、3分も経ってないかもしれない。また嫌なこと言われないように当たり障りなく終わらせた。セカンドオピニオン探さなくっちゃ。


そしてカウンセリングの時間まで待機。お、座り心地のいいソファーが空いてる。座っちゃお。そしてこっそり周りを見渡してみる。


心療内科には意外と、如何にもな人は少ない。みんな隠して抱えて生きてるんだな。その一方、今の私はなんだ。ボサボサ赤髪、スッピンマスク、適当な服。如何にもじゃないか。白目。



さぁ、カウンセリングだ。何から話そう。話す内容は大まかにしか考えてない。その時に思ったこと考えたことを話すようにしている。運が良いことに担当の臨床心理士さんとは相性が良かったようで、とても信頼している。私の味方だと思える。そう思える人は少ない。有り難い。


今日も涙目でカウンセリング室を後にする。カウンセリングが終わってからの時間は何とも言い難い感情になる。カウンセリング中に出てきた辛い感情、少し救われたかのような感覚、自分を客観視した第三者的目線。それらがぐちゃぐちゃになって、不透明だけど嫌じゃない、何とも言えない感情。それが過ぎるとまた嫌なことを考えて、「死にてぇなー」って。でもカウンセリング後のその言葉はどこか少し軽い。


病院を出たら今度は薬局だ。今日は診断書代でお金がかかったからお財布が保つかヒヤヒヤヒヤシンスー。保たなかったらATMまで走るから、許してヒヤシンス。お、思ってたよりお薬代かかってないぞ。走ることにならなくてよかったヒヤシンス。



朝あれだけお外に出たくなかったのに、ちゃんと病院に行けたご褒美として、某店でフラペチってやろうかな。こっちに歩いてきちゃったから、いつもとは違う店舗になるけど、まぁ問題ないだろう。と思ってたら甘かった。いや、フラペチーノがじゃなく。




キラキラしていた。そう、テラス席に座る人々が。




フラペチーノ片手にPCでレポートしてる風の男子大学生風。講義終わりにズッ友と談笑してる風の女子大学生風2人組。そんな人々で溢れていた。場違い。脳裏にバーンと浮かぶそんな言葉。途端に私は華麗なターンを決めて颯爽と歩く。そう、逃げ帰ったのだ。



そして帰宅後、某人を駄目にするなんちゃらに埋もれて呟く。

負け惜しみにコンビニで買ったカフェラテを片手に。



「家サイコー」

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