十四話 甘い考え
「はああああぁぁぁああああああ!!!」
モルトが声を張り上げながら斬りかかってきた。
俺はそれを軽く剣で受け止めた。
「っと、おいおいまさかこれで終わりか?」
「ふっ、そんなわけないだろ!!」
モルトは連続で斬りかかってきたが俺はそれを全部避けるか剣で受けるかでやり過ごしている。
一見今のモルトは全力で俺に斬りかかってきている様に見えるが実は本気で俺を斬ろうとしてはいない。
しっかりと本気で斬りかかっている様に演技をしているつもりかもしれないけどたまに口元がにやけているのがしっかりと見ている。
何かを仕掛けようとしているのがバレバレだ。
それに俺は初めからポーノが詠唱をし始めているが見えていた。
今は丁度モルトが重なって見えないが魔力の流れが見える俺はそろそろ詠唱が終わるのが分かっていた。
ちなみに魔法に込めている魔力の量からしてせいぜい基本属性のボール系か良くて貧弱なジャベリン系だ。
そしてポーノが詠唱を終え、モルトに声を掛けた。
「出来ましたよ!」
「よし、これで終わりだよ!!」
自信満々のモルトだが正直阿保なのかと思った。
声を出したら今から攻撃しますよって言ってるようなものじゃん。
本当なら普通に避けたり剣に魔力を込めて弾き返したりするのが手だとけど俺は敢えて違う方法をとった。
「ファイヤーボール!!!」
ポーノが放ったファイヤーボールが俺に向かってきた。
確かに素人には避けれない速度だろう。多分時速四十キロから五十キロは出ている筈だ。
そして避けれる筈のファイヤーボールを俺は避けずそこを動かなかった。
「これで終わりです!」
そして俺にファイヤーボールが直撃した。
ソウルにファイヤーボールが直撃した影響で起きた土煙によりソウルの姿が見えなくなった。
その様子にギャラリーの反応は様々だった。
ソウルに賭けていた冒険者は落胆の声をあげ、モルト達に賭けていた冒険者が喜ぶ。
しかし中には土煙の中を静観している者もいた。
モルトとポーノはこれで終わったと安堵の表情を浮かべていた。
モルトに関しては全力ではなかったとはいえ自分の攻撃を全て余裕の表情で受け、躱されていたことに自若干の焦りがあった。
「まぁ、所詮はこんのものですね。ジョニンを倒したのは何かのまぐれだったようですね」
「あ、あぁ。あんな大口叩いていた割には大したことなかったね」
「これであの虎の獣人の女の子も私たちのパーティーメンバーですね」
「ふふ、そうだね。しっかりと可愛がってあげなきゃね」
ギャラリーの中から見ていたレオネの耳にはしっかりとモルト達の会話が聞こえていた。
「は~、まったくもって下品な人たちですね。まぁそれに比べてソウルさんは下品ではないですけど鬼畜というか・・・ちょっと鬼ですよね」
だんだん土煙が晴れていきソウルの姿が見えてきた。
ソウルの姿を見たギャラリー達の反応はさっきとは逆だった。
そしてモルト達の反応も・・・
「な、なんで私のファイヤーボールを受けて立っていられるんですか!?」
「そんな・・・確かに直撃した・・・あ、あれは!!」
土煙が消え姿を現したソウルは普通に立っておりしかも無傷だった。
だがされにはきちんとした理由があった。
そもそもだ。ソウルにファイヤーボールは直撃していなかった。
「あ、が・・・かっ、は・・・・・・」
ソウルの前にはソウルによって持ち上げられファイヤーボールを真正面から受けたジョニンがいた。
ソウルはあらかじめモルトの剣を受けながらジョニンの方へゆっくり下がっていた。
もちろんモルトがソウルにポーノを見せないようにしてるのと同じようにしてジョニンの姿を見えないようにして。
「なっ! ジョニンを盾にしたんですか」
「ふ、ふ、ふざけるな!! 僕たちの仲間をよくも・・・」
二人はソウル悪態を突こうとしたがそれは軽く一蹴さてしまった。
「何自分の都合が良いように解釈しようとしてるんだよ。こいつにファイヤーボールを撃ったのはポーノ、お前だろ。
それともあれか、人を盾にするのは卑怯とか、酷過ぎるとか思ってるのか?
だとしたら甘すぎるだろ。そもそもこいつは俺の敵だ。敵を盾にして何が悪い。
考えがたりないな。これ決闘だ。外部からの攻撃などのルール違反等以外は基本なんでもありだ。
さてこれからは俺のターンだあんだけでかい態度をとっていたんだ、少しぐらいは楽しませてくれよ」
ソウルはモルト達が目で負えない速度でポーノの目の前まで移動した。
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