第十二話
遅くなってすみません!
「ソウル君如きが随分と威勢がいいですね。良いでしょ。
そこまで言うならば君と僕らで決闘をしようじゃないか」
決闘、冒険者達が喧嘩になりそうな時や報酬で揉めたときに使う方法。
モルトは確かにランクはEと決して高いとは言えないがランクEの中ではこのギルドではトップクラスでありジョニンとポーノも自分とそこまで変わらない強さを持っているのでランクF如きのソウルには絶対に負けないと確信していた。
モルトから決闘を提案されたソウルはモルトが面白いように自分の挑発に乗ったことにばれないように二ヤリと笑い決闘を受け入れた。
「良いぜ、その決闘受けてやるよ」
「ふふ、それじゃぁ、練習場の方に移動しましょうか」
モルト達三人が戦う前から勝利を確信しにニヤニヤしている様子にソウルは心の中で爆笑していた。
練習場にはモルト達とソウルの決闘を聞きつけて来た冒険者達でいっぱいだった。
冒険者達にとっては良い見ものでもあり賭け事にもなるので数少ない娯楽でもあった。
そして決闘を行うモルト達とセイルに様々な声が降りかかった。
「ソウル! 俺はお前に銀貨一枚賭けるぜ!! 頼むから今日の酒代にしてくれよ!!」
「モルト、ジョニン、ポーノ!! いつも偉そうにしてるんだから実力見せろよー!」
「ソウルーー!! その可愛い女の子ために頑張れよーーー!! てことで銀貨三枚!!」
「モルトオオオ!!! そんな綺麗な女の子連れてる奴なんてぶっ飛ばしちまえ!!!!!」
「ソウル、俺はお前の実力を信じて今日の稼ぎの全部を賭けるぞ!!! 銀貨二十枚だ!!!!」
などなどたくさんの声がソウル達にかけられた。
賭けの相場はモルト達が三人でEランクの中では強い方ということもあって一・五倍。
ソウルの方はここ一年ギルドにおらず実力が分からないため五倍となかなか高い。
だが実はモルト達よりソウルにかけている冒険者の方が多かった。
理由はズレンの知り合いということもありここ一年でかなり力を伸ばしたのではないかと思う者。
特にそれらしい理由はないがソウルの態度が一年前と違いおどおどした様子から自信があふれている様子に変わっているのを見たのでこれはいけるかもしれないと思っている者などがそこそこいた。
ソウルとレオネは今回の決闘のことについて話していた。
「まったく、私が関わっているのに勝手に了承しないでくださいよ」
「そんな怒んないでくれよ。それとも俺が負けるとでも思ってるのか?」
「いいえ。そんなことはあり得ません」
レオネはソウルの問いにきっぱりとそれはないと答えた。
その様子にソウルは少しモルト達が可哀想だなと思った。ほんの少しだけ。
「どちらかと言えばソウルさんがついうっかり力加減を間違えてあの三人を殺してしまわないかと心配です」
「・・・・・・安心しろ」
「なんですかその間は! もう、本当に心配になってきたじゃないですか」
「大丈夫だって。とりあえずこんな決闘より今後どんな依頼を受けるとかそんなことを考えていてくれ」
「・・・ソウルさんの実力を改めて思い出して今更あの三人が可哀想に思えてきましたよ。
まぁ、とりあえずあまりいたぶらず早めに終わらせてくださいね」
「ああ、わかってるよ。それじゃぁ行ってくるわ」
「はい、いってらっしゃい」
ソウルはレオネの傍から離れモルト達が待っているところに向かった。
「おやおや随分と遅かったですね。彼女との別れの挨拶でもしていましたか」
モルトは見下すような目でソウルを見ながら話しかけた。
ソウルはそれをバカにするような態度でモルト達を文字どうり馬鹿にした。
「お前らこそ荷物をまとめて故郷に帰る準備は出来たか? ギルドに来るのも今日で最後になるかもしれないんだ、せいぜい足掻けよ」
「っ!!! どうやら自分の実力を過大評価しすぎているようだね。そんなことが二度と言えないように叩きつ潰してあげようじゃないか」
「モルトも言うと通りだ、決闘だからって余裕こいていられるのも今の内だ。せいぜい死なないように逃げ回れよ」
「ふっ、君みたいな身の程知らずは僕の魔法の威力を試すにはちょうど良い実験体になりそうだね。頼むから一撃で倒れないでもらいたいね」
三人の言葉にソウルが鼻で笑い、大きな声を張り上げた。
「御託はいいからとっとと三人がかりでかかってこい!!! それとも怪我するのが怖いんだったら今すぐにでも故郷に帰ったらどうだ!!!」
その言葉が決闘の合図替わりとなりモルト達とソウルの決闘が始まった。
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