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9.咲さん~ヘルプ!

シャラン


「いらっしゃいませ。あら? 連日来るのは珍しいわね。でも、来る気がしていたけど」


人生の先輩、助けて下さい。


「パンク寸前なんで助けて! でも、その前に本日の珈琲をお願いします!」


さっきまで海で拾っていたけど眠気がとれない。


「ふふっ眠そうだものね」


──ああ。やっぱり咲さんの笑顔は癒される!


「ご馳走さま」

「ありがとうございました」


入れ違いにお洒落風のおじいさんが会計のためカウンターの座席から降りゆっくりとした足取りでレジに向かっていった。


今日は日曜日。いつも海に行くのは週一くらいだし確かに私が出没したのは珍しいよね。


今日は珍しくカウンターに座ることにした。はぁ~やっと休日な感じがする。肘をつきぼんやりしていると。


「はい。どうぞ」

「ありがとう」


あれ、小さい貝の形のマドレーヌが数個カップの脇にちょこんと乗っている。


「可愛いでしょ?おまけね」

「ありがとう!甘い物は嬉しい~」


私は、コーヒーを一口飲みマドレーヌをつまみ上げ口にいれた。


「甘すぎなくて美味しい。プレーンなのはあえてですか?」

「ふふ、瑠璃ちゃん、わかってらっしゃる。あくまでも飲み物が主役がいいなぁと思ってね」


…咲きさんって何歳だっけ?ずっと見た目も中身も私が小さい時から変わらない気がするんだけど。


咲さんは、食べ物を扱うからか、いつも髪はきっちり上げている。でも、そのヘアゴムは毎回違う。今日はシルバー色の貝がついていおり、服はいつもシンプルで白かブルーのシャツにロングスカートでエプロンをしている。


シンプルなだけに美しさが引き立つというか。


むき卵のようなつるんとした顔に二重の大きな目で一見きつめ美人に見えるけど笑うと片方だけエクボができて、とたんに可愛くなる。


内面もだけど外もキレイっていいなぁ。


そんな事をこっそり咲さんの動きを観察しながら思いつつ、珈琲をゆっくり味わった。


私は、いつもここで飲む時は、最初はブラックで数口飲んだらミルクをいれている。


「今日はブラックのままにする」

「そう?後でカフェモカも用意するわよ。で、今日の一番と話したい事は?まぁそれは清水さん関係なんだろうけど」


思わず顔をカウンターテーブルに伏せた。そのまま咲さんの質問に答える。


「今日の一番は紅貝べにがい


今日の拾い物の数々を見せたくなり、起き上がりバックからプラの綿棒いれだったケースを出す。


「あら、結構立派じゃない」

「なかなか片方しか拾えないのが残念」


紅貝というのは、桜貝を横に伸ばし大きくしたような形で、色は紅とつくように濃いピンク色でとてもきれい。桜貝も数種類あり濃い色もある。両方とも薄く割れやすいのでケースに入れ持ち帰る。


「これ、沢山あるけどきれいね」

「いいでしょ。私でも何か作れるかと思って今集め中」


咲さんが言ったのは、波間柏ナミマガシワという貝で最初見つけた時、魚のウロコかと思った。


薄いけれど思ったより丈夫で色が豊富で黄色、白、ピンク、赤があり、黄色なんてラメ入ってる?ていうくらいキラキラしているのもある。


そんな事を咲さんに話すと。


「作るのなんて清水さんに聞けばいいじゃない」

「うっ、そうだけど」

「あっ、もう捕まっちゃった?」


バッタリ。

再度顔が沈んだ。


「彼、草食にみえて肉食よね」


何の話?


「意味がわかりません」

「瑠璃ちゃんって、拾い物と本、動物の話をする時はすごぉーくお喋りだけど、他はホント駄目よねー」


……テーブルに顔くっついたままでいいですか?


「で?今日、日曜日でお天気良いからお客さん来る前にちゃっちゃと話なさい。ほら、今日のコレは、おごりよ」


カタンとした音で顔をあげるとカップの中身は生クリームがたっぷりのったココアだった。


「カフェモカよりこっちのがいいかなと思ってね」


一口コクリと飲んだ。


「甘い、けど美味しい」


そうだ、話してスッキリしよう。


「かいつまんでいくと、清水さんは、私が嫌がった反応に惹かれ付き合ってと言われて渋ったら、1ヶ月お試しになりました」


あと、何を言ってたっけ?


「以上…あっ1ヶ月は清いお付き合いと言ってました」


咲さんを見る。


「押しに負けたのが悪いんだけど、どうしてこうなったかわからない」

「ん~瑠璃ちゃんは、清水さんの事好きなの?」

「そこなんですよ!」


つい身を乗り出した私にのけ反る咲さん。つい興奮しちゃったよ。


「清水さんにも言いましたが、嫌か嫌じゃないかなら、嫌じゃない」

「じゃあ、好きか嫌いかは?」


咲さんの問に。


「ズバリわからない」

「じゃ、1ヶ月付き合ったら?そうしたら少しわかるかもよ? どうせ瑠璃ちゃんのことだから、仕事とプライベートがごっちゃごちゃになりそうで嫌なんでしょ?」


──そうだ、まさにソレだ!


「普通下の子って要領いいって言うけど瑠璃ちゃんには当てはまらないわね。まあ彼が要領よさそうだから瑠璃ちゃんの気持ちが問題なだけで、仕事には影響しないようにするんじゃないかしら」


そうかな。


「イケメン年上眼鏡男子を釣った~くらいな軽い感じでいいわよ、今のところは」


──清水さんは、魚か。


「念のためもう一度釘さすか」


何かポツリと咲さんが呟いた。

な、何したんですか?呟いたセリフを聞く勇気はなかった。




* * *


「よし、これで寝る前の主な事は終わりかな」


ソックスは猫なのに食いしん坊で早起きして騒ぐから夜寝る前にご飯を少しだけあげているのだ。


「あ、まだあった」


寝る前に、今日拾った貝やビーチグラスを放置していたので洗うことにした。薄い貝は手を洗う洗剤とぬるいお湯に少しつけて洗い流す。


硬い貝やビーチグラスは、あまり使いたくないけど食器用の漂白剤を水にほんの少したらし、そこにしばらく浸けその後よく洗う。ウニなどは匂いが強いので、そういう場合は、1日から2日は浸ける。


洗い終わったら厚い紙の上にキッチンペーパーをのせ洗った貝をその上に広げて完成。タオルで手を拭いているとテーブルの上に置いた携帯がバイブのにしていたので震える。


見れば清水さんからの着信だ。どうしよう。出ようかでまいか。往生際が悪いな私は。えいっと、スライドさせる。


「はい」

「今晩は、瑠璃」


──この声アウトだ。










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