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4.私のオアシスが

「あれ、水野さん」


シャツにチノパン、パーカー姿の清水さんがいた。嘘でしょ?!咲さんの所だけでなくこの場所も?!


──私のオアシスがなくなっていく。


「とりあえず、おはよう?」


そんな悲しい衝撃を受けている私に首を傾げながら挨拶してくる。


「…おはようございます」


しかたなく、イヤホンを外し肩にかけた。


「あれ?元気ない?」


しょんぼりしているのに気がついたのか更に話しかけてくる。


あなたのせいです。

つい内なる言葉が出そうになった。


「あっ波来るよ、足」


手を急にとられ引っ張られた。


「長靴なんで大丈夫です」


すぐに、とられた手を引っこ抜く。この人やっぱり遊びなれてそうだなぁ。急に触られるとびっくりするから、止めて欲しい。


ここの波は穏やかだけどたまに大きめの波がくるので私は短い長靴を履いてくるのだ。雨でもないのに変だけど、濡れるよりマシだ。


「ホントだ。準備いいね。水野さんは、これから拾い物?」


──咲さん、私の事何か話しました?


「咲さんには聞いてないよ?」

「…そうですか」

こわっ。なんで分かったのかな。


「そういう事は本人に聞いて下さいって言われたよ」


ニッコリ微笑まれても、困るんですけど。先週の時もだけど、普段スーツしか見ていない人と私服で会うのは変な感じ。しかし、色素が薄いのかさらさらな茶色い髪とメガネの奥の同じく茶色の瞳に人に好かれそうな柔かな笑み。背もまあまあ高く、服も別に普通なのに洒落てみえる。


いいなぁ、恵まれていて。


かたや、今日は夏じゃないしとスッピンな顔にジーンズで足は黒く短い長靴。


女子力ゼロだ。


「これからなのに荷物、重そうだね」


清水さんは、私の斜めがけバッグを指差す。


「朝早いのでサンドヴィッチを海で食べようと…」


「それ、いいね」


なんなんですか、見つめないで下さいよ。圧に弱いんですよ私は。…負けた。


「…半分なら」

「おっ有り難う。俺も飯、まだなんだ。車できたの?」

「いえ。バスを乗り継いで」

「じゃあ、お礼にならないけど俺、車だから送るね」


「いえ、いいです」


ハッキリ、バッサリ拒否です。それこそ迷惑なんです。


「そんな嫌そうな顔されると、余計しつこくしようかな?」


私の眉間に今、確実にシワができた。


「ふっ、面白いなぁ。家までじゃなくて近くで降ろすよ?」


「…わかりました。でも、私今から1時間くらいは拾うので、お腹空いているならご飯だけ渡しますよ」


何かどっと疲れて抵抗するのが面倒になった。それに、せっかく早起きしてバスで来たのに何もゲットできないなんて更に悲しいし、開き直る事にした。今から1時間もきっといないだろう。


食料はあげるから帰って下さい。


「俺もさっき来たから丁度いいよ」


──予想に反して清水さんと食事をとることになりそうだ。


「いただきます~」

「…いただきます」


1時間後岩場の頂上のでっぱりに座り、朝には遅く昼には早い食事になった。


「うまそう」


今日は薄めの食パンを軽く焼いた中にカリカリベーコンとレタスを挟んだサンドヴィッチを半分に切ったのが4つと梨。あと家で挽いたコーヒーであまり、工夫もない。パンがもう今日食べないとなので4枚分使っている。


食べきれない分は帰ったら食べようと思っていたんだけど、何故沢山あるかは、先に清水さんに説明した。


私は大食いではない。そこはなんとなく関係ないけど主張した。


「美味しかった。ご馳走さまでした!珈琲もいい味だね~。ご飯持参なんて瑠璃ちゃんは、拾い物歴どれくらい?」


なんで名前で呼ばれてるんだろう。なんか段々イライラしてきた。


「あの、知ってどうしたいんですか?」

「ん?」


前を向いていた清水さんが此方に顔を向けた。

私達は海に向かって座っていて今日は風があり、晴れているから富士山がとてもよく見えた。


「そこ、早速聞いちゃう?早いなぁ」


何が早いのかさっぱり分からない。顔が近づいてきて思わずのけ反る。見つめられると視線が痛い。


「興味でちゃったから。だから、覚悟しておいてね。」


そう言い彼は秋晴れに似合う爽やかな笑みを浮かべた。





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