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明日の天気はきっと晴れ  作者: FRIDAY
第四話 佐々木さんの家出
35/38

35.頼まれました。

 言われてみれば、どうして今の今まで気が付かなかったのだろうと、つい数時間前までの自分を大外刈りしたい気持ちである。


「どうして大外刈りなんですかねー」

「小外刈りじゃ迫力に欠けるでしょう」

「大外刈りでも別に迫力はないと思うけどね……」


 加賀さん、まつげさんとそんな益体やくたいもないことを言い合う。ふたりだけじゃない、この場には、水戸さん、花笑ちゃん、木鈴さん、最上さん、前島さんまでもがそろっていた。

 そしてきっと、佐々木さんも。


 田中さんの啓示を受けた僕が全速力でゆうやけ荘に帰ると、田中さんの言う通り、確かに皆がそろっていた。花笑ちゃんの参観日を彷彿ほうふつとさせる感覚だが、用件は違う。


 佐々木さんを見つけ出そう。

 そう宣言して、僕は皆を連れ出し、ゆうやけ荘の正面でこの建物を見上げている。


「……うーむ」

 上を向いて歩けそうなくらいに心機一転した、とはいえ、その途端にまさか本当に上を見上げることになろうとは。

 思っていたよりも高いなあ。


「で、でも、本当に、そこに……?」

 一緒に見上げる水戸さんが、不安そうに言うけれど、僕は確信をもって頷く。

「大丈夫です。僕がちゃんと、連れて帰りますから」


 一緒に戻ってきますから。


 満腔の意をもって、僕は踏み出す。

 その先にあるのは、まつげさんと一緒に蔵から運び出してきた、長大な鉄梯子だ。


「壊れないとは思うけれど……気を付けてね。大丈夫?」

 足元を押さえてくれるまつげさんが、心配げに声をかけてくれる。僕は一歩目をかけながら、大丈夫です、と返した。

 それから、ちらっと前島さんを見る。僕が帰るなり梯子を出してくださいと騒ぎ、まつげさんと一緒に蔵から担ぎ出し、こうしてセットするに至るまで前島さんは終始無言だった。黙って腕を組んで見ているだけ。


 けれど、最後に僕が見たとき、前島さんはにやりと笑ってみせた。

 その意味するところはつまり、そういうことだ。僕は迷いなく、梯子を握る。

 長年の埃でもの凄くベタベタするぜ。


「ユーヤさん、お願いします!」

「落ちないでくださいねー」

「さ、佐々木さんが戻ったら、今日の夕食は豪華にしますから……!」

「頼んだよ、ユーヤくん」


 皆の声援を力にして、僕は一段、また一段と確かに昇っていく。両手をベタベタにしながら、向かっていく。


「ユーヤ」


 もう少しでたどり着く、というところで、静かに、しかしはっきりと、前島さんの声が聞こえた。


「――よろしく頼む」

 心得ました。


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