19.だって加賀さんはロリじゃないですか。
「二手に分かれるぞ」
行くぞ、と言ったばかりなのに、部屋を出るなりあっさりと前島さんはそう言った。
「え、二手?」
「そうだよ。あたしとお前が連れ立って歩いても効率が悪いだろう。お前は神域内を、カガッちゃんとミトッちゃんも連れて見て回れ。この際だから、本殿の中も見せてもらうといいぞ。一般人が滅多に立ち入れる場所でもないからな」
「それは、そうさせてもらいますけど……折角だし」まつげさんが聞いたらもの凄く羨ましがりそうですね。「でも、前島さんは何をするんです?」
「あたしはあたしで、別方面から当たる。ま、基本的には文献にあたるというか、そっちの方の調査だな」
それはどちらかというと、助手の方が担当しそうな内容だけれど……言いたいことだけ言うと、「じゃ、頑張れよー」と手を振って行ってしまった。
はあ、とため息をつきながらも、仕方がない、僕は僕で言われた通りにするために、一度部屋に戻ることにする……眼鏡がないと、僕には何にも見えないからね。ブレスレットも忘れるなと言われているし、何か危ないこともあるかも……危ないことがあって、加賀さんと水戸さんはどう守ればいいんだろう。僕にできるのは壁になることくらいしか……あ、壁か。
そんなことを考えながら、荷物を置いていた部屋の障子を開けてみると、部屋の中には妙齢の女子がふたり、それから幼女がふたりいた。女子というのは水戸さんと、巫女服姿の田中さんと、
「あれ? 加賀さんがふたり?」
「おやー、失礼ですねーこのユーヤさんはー」
加賀さんが軽く憤慨して見せる。その加賀さんと、どうやら歌い手遊びをしていたらしいのは、水戸さんの膝に座る女の子。見知らぬ子だ。
「その子は?」
「美羽ちゃんですよー、この神社の宮司さんのお孫さんですー」
握りあった手を上下に振りながら、ランランと美羽ちゃんは歌っている。
アルプスいちまんじゃく。
「初めまして。ユーヤです」
「あ……初めまして。美羽です」
しゃがんで視線の高さを合わせた僕に、ちょっと照れくさそうに美羽ちゃんは答えてくれた。人見知りはしない子のようだ。よろしく、と軽く握手してから、僕は自分の鞄の方へ行く。
「あ、あの、ユーヤさん……前島さんの、お仕事は」
たどたどしく、水戸さんが問う。美羽ちゃんを膝に乗せていることに慣れないようだ。僕は眼鏡とブレスレットを取り出しながら、ええ、と答える。
「皆で一緒に、御神域の中を見て回ることになりました。前島さんは別の方で調べるそうですけど、僕らは足で調べます」
「あ、それじゃあ、美羽が案内してあげる!」
ぴょん、と美羽ちゃんが立ち上がって元気よく挙手をする。成程、そういえば考えていなかったけれど、案内は必要か。いやまあ、僕らより先にこちらに来ている田中さんに頼んでもいいかもしれないけれど、折角だし、ここは美羽ちゃんの好意に甘えておこう。
「それじゃあ……よろしくお願いするよ。水戸さんと加賀さんも、いいですか?」
「あ……はい」
「いいですよー」
加賀さんと水戸さん、それに田中さんも立ち上がった。僕が見ると、田中さんはこともなげに、
「私もご一緒します。特にすることもないので」
……あれ、田中さんって、バイト中なんだよね?
あまり深くは考えないことにして、こっちだよ、と元気よく走り出した美羽ちゃんに続いて部屋を出て、とりあえず玄関に向かう。元気がいいなあ……と美羽ちゃんの後姿を見てから、ふと隣を歩く加賀さんを確認した。
それから改めて美羽ちゃんを見直す。
「ねえ、美羽ちゃん。美羽ちゃんって……いくつ?」
「七歳だよ! 小学二年生! この間誕生日だったんだ」
嬉しそうに答えてくれる美羽ちゃん。成程、七歳か……。
「おや、どうしましたかユーヤさん。七歳と聞いた途端に目の色を変えて。犯罪ですよ」
「やめてください田中さん、僕は変態じゃないです」目の色も変えてませんからね。
美羽ちゃん、七歳。
加賀さんは僕よりひとつ年上で、二十一歳。
目測だけれど、恐らく美羽ちゃんの方が加賀さんより、わずかに身長が高い。
「……うーむ」
「またユーヤさんが失礼なことを考えていますねー、お仕置きですよー」
言うなり加賀さんの踵が振り上げられて勢いよく僕の足へ「ぐああぁぁ!」
決して加賀さんの合法性について考えていたわけではなく! ただ成長期について思いを馳せていただけだったのに!




