16.ガールズトークって、なかなか聞ける機会がないんですよねえ。
驚くべきことに、車の運転は僕だった。
「って、ええ!? 前島さんが運転するんじゃないんですか?」
「ふん、甘いぞユーヤ」前島さんは勝ち誇ったような顔をする。なぜ。「あたしがそんな面倒なことをすると思うか」そもそもあなたの仕事でしょう。
問答無用で助手席に乗り込んだ前島さんは、あろうことかそのまま流れるように缶ビールの蓋を開けて飲み始めた。これじゃあ頼むに頼めない。まあ、スピード狂の前島さんがハンドルを握ったら酷い目に遭うからな……水戸さんたちもいるし、安全運転でなければいけないよね、と自分に言い聞かせて仕方なく僕が運転席に乗り込んだ。幸いというか、今日の車は前島さんの八人乗りワゴン車だ。まつげさんの軍用車両ではないから、使い勝手に戸惑うということはない。後部座席に荷物、真ん中に加賀さんと水戸さん、助手席に前島さん、運転席に僕、という陣形で座る。前島さんは出発までにあっという間に三缶ほど空けてしまって、水先案内をもう一切放棄するのか、僕は目的地へどうやって行けばいいのかというのが懸念だったけれど、さすがにナビまでは放棄しないようで口頭で指示してくれた。酔っ払いの道案内をどこまで信用していいのかという疑念は残るが、そこはもう仕方がない。
「水戸ちゃんは、最近は学校で何を習っているんですかー?」
「あ、さ、最近はその、イタリア料理を……」
「おー、イタリア。いいですねー」
背中に女子ふたりのトークを聞きながら、僕は前島さんの案内でハンドルを切る。
「――それで、今回の仕事って、何なんですか?」
もういいだろうと思って、前島さんに話を振る。車の中で教えてくれるという話だ。前島さんは車の窓を開けて、んー、と風を浴びながら、
「簡単に言うと、除霊だな」
「除霊?」珍しく、お祓いですか。
「依頼の題目はな……古い神社に呼ばれてな。何だか調子が悪いようだから見てくれないか、と。実際は多分違うんだろう。ま、大方の予想はできるが……」
調子が悪いって、どういうことなんだろう。神社だから、神具が古くなったとか……?
僕の想像に反し、前島さんの答えは端的で、そして驚くようなものだった。
「神様がいなくなったらしい」




