13.というわけで、大騒ぎです。
以下、ダイジェスト。
「今日はまた一段と豪勢ですねえ」
「そりゃあね。歓迎会だもの。私も水戸ちゃんも腕によりをかけたんだから――半分以上が水戸ちゃんのレパートリーだけど」
「水戸さん本当に凄いですよねえ。むしろ学校で何を習ってるんですか?」
「え、あ、あの、私もまだまだで……勉強しなきゃいけないこと、いっぱい、あって……」
「あ、こらミトッちゃん、テーブルの上に登ろうとするんじゃない」
「ほら飲むぞ! 飲むぞ! 今日はわっちも飲み放題なのじゃ!」
「あれ、佐々木さん、お神酒そろそろなくなりそうですけれど」
「ええ! 佐々木ちゃん、もうそんなに飲んでるの!? あれ今月分だったのに!」
「こまけぇことぁ気にするんでないよまつげ。神酒がないんならあれじゃ、わっちもそのびーるとやらを飲む」
「ビールは苦いから駄目だってこの間言ってたじゃないですか」
「ん、甘酒ならありませんでしたっけ」
「それじゃ! ユーヤは冴えとるのう。まつげ、甘酒甘酒!」
「もう……ユーヤくん」
「え。あ、なんかすいません」
「まあいいけど」
「あ、甘酒ですか? 私も飲みますぅ!」
「おお、花笑も飲むかえ? 飲もう飲もう!」
「甘酒は未成年でも飲んでいいんだっけかな……あ、でも駄目! 花笑ちゃんはそれ以上酔ったらだめだからね!?」
「せっかくだし、ユーヤも飲めよ」
「ダメですよ前島さん。それ、アルハラっていうんですよ最近では」
「固いこと言うなよまつげ。なあ?」
「いや、僕に振られましても」
「飲まねえの?」
「飲まないですけど」
「えー、何でだよー」
「アルコールって苦手なんですよね……匂いが」
「んなもんは慣れだよ慣れ。慣れれば美味くなるんだよ」
「結構そういう話は聞きますけどね……」
「じゃあいいだろうさ」
「いやいや、でも苦手なものは苦手なんですよ。ほら、嫌いな食べ物ってあるでしょ?」
「あたしにゃねーな」
「そうですか……まあ、苦手な食べ物があるとして、ですよ。それを、慣れれば美味しいからって無理に食べ続けるのは嫌じゃないですか。ましてそれが、栄養があるわけでもなんでもない嗜好品だったらなおのこと」
「まあ、そうかもな」
「それくらいなら、僕は炭酸ジュース飲んでいた方が楽しいですよ。安いですし。リスクもありませんから」
「そうかいそうかい……あー詰まんねーの。ミトッちゃんは?」
「あ、わ、私も、お酒は苦手で……」
「えーでも料理で使ったりするだろー?」
「つ、使いますけど、基本的に風味付けであってアルコールは飛ばしますし……直接飲むのは、その……」
「最上も木鈴も潰れてるしなあ……あとは、花笑ちゃんか」
「絶対ダメですよ!?」
「あっはっは、冗談だよ。わかってるって」
「へえ、佐々木さんってやしきがみさんなんですかあ!」
「そうじゃ。この家で一番偉いんじゃ。このアパートの平和はわっちが守っとるんじゃ」
「そうなんですかあ!」
「一番偉いのは前島さんじゃないですかね……大家さんですし……」
「ん、ユーヤ何か言ったか」
「いえ何も」
「おーいまつげー、木鈴と最上が邪魔なんだけどー」
「あなたが酔い潰したんでしょう……あー、こりゃ完全に潰れてるね。誰か運んであげてくれない?」
「……え、僕ですか」
「ユーヤくんしかいないですよー」
「はあ。まあわかりましたけど」
「で、やしきがみさんって何なんですかあ?」
「わっちのことじゃ」
「佐々木さんはやしきがみさんなんですかあ」
「そうじゃ」
「じゃあ、やしきがみさんって何ですかあ?」
「わっちのことじゃ」
「そうなんですかあ」
「……ループしてるぞ」
「どっちも酔ってますねー」
「運んできましたよ」
「あふう、もうおなか一杯ですぅ……」
「じゃなあ。調子に乗って食べ過ぎたわ……」
「ふたりとも大丈夫ですかー? 苦しそうですけどー」
「いやあ、大丈夫じゃないかも」
「じゃなあ」
「はちきれそうですよ……けふ」
「はちきれそうじゃ……ぅこふ」
「ケーキできたよー!」
「おお、ケーキですか!?」
「ケーキじゃな! 食べるぞ食べるぞ!!」
「あ、あれ、ふたりとも、大丈夫じゃないんじゃ……?」
「何言ってるんですか!」
「ケーキは別腹じゃろ!」
「そ、そうなんですか……」
「切るよー」
「おっきいの! おっきいの!」
「いいや、おっきいのはわっちのじゃ!」
「佐々木ちゃん、主賓は花笑ちゃんなんだからね?」
「でもわっちは屋敷神じゃ」
「だから佐々木さん、やしきがみってなんなんですかあ?」
「屋敷神はわっちじゃ」
「……実は佐々木さんも屋敷神ってよくわかってないんじゃ」
「あー、ユーヤくん奇遇ですねー、わたしも実はそう思ってましたー」
「あ、疑っとるのか!? わっちが屋敷神であることを!!」
「いやそれは疑ってませんけどね」
「切ったよー」
「こっち! 私こっちです!」
「いいや! それはわっちのじゃ! 花笑はこっちを食え!」
「ヤです! これは私のです! 私が先に取ったんですう!」
「わっちのじゃ!」
「私んです!」
「だから主賓は花笑ちゃんで……っていうかふたりとも、そんなに強く取り合いしたらケーキ落ちちゃうよ」
「「――あ」」
そんなこんなで、にぎやか楽しい歓迎会でした。




