表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Wet work company  作者: 幽輝
1/5

プロローグ「Wet work company」

初投稿です 読んで頂けたら嬉しいです

「死んでいるようなものなんだよ。お前も、そして私も。」


冷酷で鋭い声に魘され、夢から目を醒ます。


何処で耳にしたのかは分からない。でも、夢にまで出てくるこの声はきっと僕の脳裏に永遠に焼き付いて離れないのだろう。


「あっ、レイ君起きた?もう少しだよ。」


運転席にいる優しい声の持ち主が呟く。


後部座席で寝起きの脳味噌を必死に揺さぶり起こす。


ここは隔絶された平行世界に存在する帝都レーヴェガーデン。小さな大陸丸々一つが一つの帝都となっており、技術は現代の地球とさして変わらず、様々な人種の人間や移民が定住しており、希望や幸福が満ち溢れている。というのが売り文句である。


しかし、実際に満ち溢れているのは「中心部」のみである。


この帝都は「中心部」と「外側」に分かれており、厳しい審査を受けたいわゆる富裕層の人間のみが生活できる。

「外側」は審査に落ちた者が生活しており、「中心部」とは裏腹に欲望や虚偽、怠惰が渦巻いている有様となっている。

この事から外側の人間は中心部の人間からは酷く軽蔑されているのが現状だ。


かといって、中心部の人間に欲望などが無い訳ではない。

中心部は中心部である程度の犯罪は起きているし、外側の人間が強盗目的の犯行をすることもある。

ちなみに、外側の人間も観光目的に入る事はできる。外側の建造物は中世的だが、中心部は開発が進んでおり、近代的なビルなどが建ち並んでいる。

僕達は外側の人間だが、とある“仕事"をする為に中心部へとやって来ている。


「着いたよ、この建物の奥の筈だね。ちゃっちゃと片付けて帰りにバーでも寄って行こうよレイ君〜」

「…またロゼさんに怒られますよリリアさん。」


車から降りて、堂々とそびえ立つビル街の入り組んだ路地を進んで行くと、恐らく所有者にも忘れ去られたのか、シャッターは閉められ壁も朽ちた哀愁漂う倉庫が佇んでいた。


僕とリリアは、着ていたスーツの懐から拳銃を取り出し、倉庫の脇の方にあるドアの前に立って聞き耳をたてた。

中では男の声二つが何やら取引の様な会話を交わしている。今回の目標であることを確信した。


「リリアさん、いつ入り」

ますか、と言う前に彼女はもう既にドアを蹴破っていた。


目に見えぬ様な速度で銃を構え、引き金へと指が伸びた。

その直後、張り裂ける様な音と共に、生々しく鈍い音がした。


呆れつつ、僕もドアの向こうを覗いて見ると、一人は仰向けに倒れていて、一人は腰が抜けたのか、震えながら座り込んでいる。

リリアはその座り込んだ男に銃口を向けている。その様子はまるで屍肉を見つけたハイエナの様だった。


中に入り、仰向けの男を上から覗き込むと綺麗に眉間に穴が空いていて下のコンクリートが赤く染まっていくのが分かってしまう。味方ながら恐ろしい…。


座り込んだ男が口を開けながら、何とか声を絞り出し叫んだ。


「ち、中央部の奴は犯罪者でも殺しはしないんじゃないのかよぉっ!?」


中央部の警備隊、通称ガーディアンは犯罪者が抵抗したりしても無力化で済ませるというルールがある。


だが僕達は、彼等には出来ない事が出来る。


リリアは嘲笑するかのように、

「残念、私達は殺せるの。だって」



私達はウェットワーカーだから。



そうして、倉庫の中には悲痛な叫びと乾いた銃声が反響した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ