少女
明日香の事を好きになったのはいったいいつのことだったのか。桜舞う中庭でであったときから気になっていた。あの桜の精のような儚さも美しさも、そして何よりその絶対に手が届かないと思わせるその雰囲気が。本当に同じ学校の生徒だろうか、そもそも同じ人間なのであろうか。はじめはそう思ったものだった。
気がつけば二人はいつも一緒にいた。互いに足りないところを相手に求めよりそう、そんな関係だった。いつの間にか、掛替えの無い存在になっていた。
そんな二人の関係を許すものはいなかった。皆一時の気の迷いだとも、不潔だともいった。そんなことはない。明日香と私の関係は一時の気の迷いなどではなく、より強固なもので、そして純粋なものだ。澄んだ青空よりも澄み、ユリの花よりも可憐で、ルビーよりも強固だ。だから二人でどこか遠いところまで行ってしまおうと思った。だから今このホームで待っている。
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待ち合わせの時間を少し過ぎて、雪も降ってきた。特急列車がシュゴーッっと凄まじい音を立てて通り過ぎてゆく。来ないのだろうか。この世に女同士の恋を受け入れてくれるところなどない、その考えに至ったその時に明日香がホームに降りて来たのが見えた。思わず駆け出していた。