4◆閑話:甘〜い恋バナする予定だった
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今日は、ちょっと久しぶりの女子会だ!
実はあの後も何度か、こうして侍女ちゃんたちとのティータイムを開かせてもらっている。
お陰でマリー以外の子たちとも少しずつ打ち解けてきている。……はず。たぶん。
「…………こほんっ。あの、本当に気にしてないから、三人揃ってそんな顔しないで!そもそも、政略的な話だったわけだし…」
何の話をしていたかというと、女子会といえばやってみたかった"恋バナ"だ。
しかし今の私相手じゃ気まずいのか、未だに皆からしてみれば"婚約破棄"がデリケートワードなのか、話題に出すと、こうなってしまう。
すかさずフォローを入れるも、ミリアは"嘘でしょ"って顔で、ルーシーは納得してないのか、哀れみの視線が痛く刺さる。
そんな中、マリーが「あっ」と声を上げて。
「ルナリア様。では……お噂は本当なんですか?」
「…え?」
何のこと?と聞き返す間もなく、侍女ちゃん二人が「マリー!」と必死に止めにかかった。
な、なんだ何だ。
マリーは負けじと「でも…」と抗うも、とうとうその口は塞がれた。
本当に何!?ムズがゆいよ~!
「ええと…聞かせて?ね?お願い!」
お願いはズルいか。断れなくなっちゃうよね。
なんて思っていると、油断した二人を振り払い、待ってましたと私の手を取ったマリー。
「ナイショですよ?これは風の噂で聞いたのですが~…」
なんて前置きをして、こんな話を始める。
「実はですね。ルナリア様に、ルーセント王国の第二王子殿下たちを婚約者候補として挙げる案が出ているんです。なんと我が国王様が…」
「(ブフーーーーーッ!!)」
「ルナリア様!?」
「まぁっ!大変、お洋服に」
不意打ちのことに思わず、紅茶を噴き出してしまった。
……え、もうここまできちゃったの!?
お父様。ちゃっかりしっかりシナリオ通り進めてくれやがりました。
侍女ちゃんたちが狼狽える声に「私は大丈夫よ…」なんて言いながら。
マリーは気にせず続ける。
「驚くのも無理はありません。でも、ルヴィウス様にルナリア様はもったいなかったんですよ!ルナリア様の良さが分からないなんて、ね?ミリア」
「マリー?」
「本当にその通りですよ!今回の事は、我が国ごと蔑ろにされて……何よりルナリア様への誠意も無く、大変遺憾でした。」
「ミリア?」
ミリアは、ルビー色の目をギラつかせる。深い紫色の髪をかきあげた仕草が美しい。
じゃなくて……あれ、なんかスイッチ入っちゃった?
普段は皆のまとめ役で、お姉さん的な存在のミリア。彼女が意見するのは珍しい。
もしかしたら、愛国心が強いのかも。
「ですから、私は……第二王子のブライアン様が良いと思います。彼はとてもお優しくロマンチストで、ルヴィウス様とはまさしく正反対!きっとルナリア様にも、尽くしてくださいます」
「は、はぁ」
(それは絶対ないよ、ミリア……)
グッと言葉を呑み込んだ。
ブライアン・ヴァン・ルーセント。
ルーセント王国の第二王子にして『Lucent Kingdom~王子様に恋して~』ゲームでいうと、二人目の攻略対象キャラの彼。
燃えるような赤い髪は腰まで流れ、普段は後ろで一つ結びにしている。瞳は褐色の肌に映える金色で、母親に似た抽象的な顔立ち。
確かに女の子には優しいタラシ……げふんごほん、だけど。
逆を返せば、兄弟の中で最もチャラい。特に女性関係が誠実のせの字もない節操なしだった。
それから、言わずもがな作中の彼もルナリアのことは厄介者扱い。
──「気の強い子は嫌いじゃないけど、過ぎると可愛くないよね」。
と、彼のセリフにもある通り、ルナリアの高飛車な性格を嫌っている。
ってなわけで、婚約者候補として終始認めていないのだ。
「だ、ダメよミリア!彼はその……政治面ではお話が通じないから。国のことを考えてはくれないわ」
ここは噂を利用してブライアンNGってアピールしなくちゃ!
事実、彼はルヴィウスと正反対の性格で、王族らしくない自由奔放な態度が周囲を困らせていた。
政務はサボりがちだし、エロ魔神。かなりの問題児だ。
……って、悪口みたいになっちゃった!
フォローするではないが、そう振る舞う裏で密かにルヴィウスに劣等感を抱いている。
まぁ…今思えば密かでも何でもない。
第二王子だし、ありがち設定ではある。
公には知られていないが、実は国王と愛人の息子であるのも理由の一つなのだ。
それも、アンジュには心を開くと教えてくれるんだけど、知った後も今までのように接してくれるアンジュに対し、
──「初めて本当の自分を受け入れてくれる人に出会った」
と、惹かれていくのがシナリオなんだよね。
「そうなんですか?困りました……ルーシーはどう思う?」
「え?あ、あの、私っ」
急にミリアからバトンタッチされて、ルーシーはコーラルピンクの瞳を泳がせた。
完全なる飛び火だ。
この子は、少し大人しめの性格で自分から話すのは苦手だからなぁ。
「ルーシー、無理に答えなくていいのよ?本当…」
「わっ、私のオススメは第三王子のオリヴィエ様です!」
「ルーシー?」
おかしい。この子まで変なスイッチ入っちゃってる?
「正直申し上げますと……ルナリア様、ルヴィウス王子は圧倒的にカリスマ性が高く、人気ではあります。ですがオリヴィエ王子なら政治面も性格も、文句の付け所がありません!慈悲深く、まさに完璧なお方だと耳にしました」
「う、うん」
(あれ。名前聞いただけで悪寒が……)
オリヴィエ・ヴァン・ルーセント。
ルーセント王国の第三王子で、『Lucent Kingdom~王子様に恋して~』三人目の攻略対象。
白い肌と鮮やかなペリドットグリーン色の瞳に、星を散りばめたような金の髪をもつ。
噂通りの紳士で、兄弟の中では最も王子らしい王子だ。
だがしかし、騙されてはいけない。
彼も作中ではルナリアへの苦手意識を顕にしている。
──「君かな?彼女を傷つけた悪い虫は」。
というセリフとともに、ルナリアが剣先を向けられるシーンは音楽がつくとホラーゲームだった。
というか……実は腹黒くて、BADENDを迎えるとヤンデレ予備軍としての力をいかんなく発揮する。ここまで怖いキャラになるのはゲーム版ならではだったのだけど。
怖い。怖すぎるよ。
「ダメっ!彼は……な、何となく、上手くやってける自信がないから」
(ウッ、何となくって心苦しい!)
政界ではルヴィウスに次いで期待度が高く、社交界でも人気が高い。
表面だけ見れば非の打ち所がないからね。
「でも、お立場が少し弱いのが気になるわね」
「んー…そうでした」
ミリアの指摘に、ルーシーの眉が下がる。
たしかにその通りではあるのだが。
オリヴィエの幼少期は複雑。孤児院で育ち、国王に見初められて養子になったという生い立ちがあるため、王位を継ぐには実質難しい立場である。
しかも彼にも、公にされていない問題が一つあった。
それは、『半獣族』の血が流れており、犬族の耳と尾を持っているということだ。
普段はほぼ無いが、気を抜くと耳と尾が出てしまう。
作中では、ある日ひょんなことでアンジュの前で出てしまったことがある。
その時、アンジュが気味悪がらずに「綺麗」と言ったことで、オリヴィエも心を許すことになるんだけど。
「む、難しいですね……残るは第四王子のレナード様ですが、ご年齢がまだお若いですし」
「そうね。ルーセントの国王様は可愛がってるみたいだけど」
ルーシーが唸り、情報通のミリアが付け足した。
レナード・ヴァン・ルーセント。
ルーセント王国の第四王子で『Lucent Kingdom~王子様に恋して~』四人目の攻略対象。
癒し系ショタだ。透き通るアクアマリンのブルーの瞳は、少したれ目で儚げな印象を与える。白金色の天使のような髪は、柔らかいマッシュボブ。いずれも母親譲り。
大切に育てられた末っ子ゆえに、兄弟の中でも一番純粋な心の持ち主に育つのが、彼だ。
第四王子なので、本来、王位継承権は一番低いが、実質ルヴィウスに次いでの優位な立場にある。でも兄弟みんなに可愛がられている。
しかし、本人はあくまでも兄たちのサポートをしたくて、兄弟に確執があるのをどうにかしたいと思っていたりする。
それから、剣も魔力も弱いが、勉強と政務においては優秀そのもの。
実技より頭脳戦の方が強いのである。
作中ではアンジュが、そんなレナードのことを決して「弱い」とは言わず、むしろ「強い」のだと褒めたことで自信をつけさせたのよね。
……しかし……。
ふと、レナードのBADENDを思い出した。
アンジュがレナードを攻略することが一番私にとって安全。一見そう思えるのだが……
「ダメ!ダメダメダメダメっ!!彼は……ほ、ほら、アレよ」
そう、アレ。実は油断してると一番危ない存在だ。ヤンデレ予備軍より、ただルナリアが処刑されるよりも何よりも、最もえげつない兵器を持っているのがレナードだ。
それは、兄弟仲の悪さのせいで覚醒してしまって、最終的に、国を滅ぼすことになるという展開になること。
つまり回避するには、兄弟仲に亀裂が入らないように阻止し続けねばならないという……。(しかもかなり難しい)
ちなみにルナリアには過去散々、子ども扱いとイジワルをされて、かなりの苦手意識を持っている。
「超嫌われているわ」
「……」
「……」
「……」
「……」
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今回は会話メインですね。箸休めです(笑)
女子会というカタチで、ルナリアと世間からの3王子の印象を紹介してみました。




