夢を見る
“清々しい朝はやっぱり気持ちが良い。”
少年は体を伸ばしながらそう思った。
2.夢を見る
少年が森を歩いていたときのこと。
“アルフ”
少年・アルフを呼ぶ声がする。
アルフは気付いたようで顔を上げる。
「誰?」
“いやだなぁ、忘れたって言うの。”
「そんなわけないでしょ。
沙希。」
“よかった。
忘れられてたら泣いちゃうからね。”
ははっ、と頭の上の声の主・沙希は、
乾いた笑い声を漏らしながら
歩いているアルフの前に姿を現す。
着流しに蒼く長い髪、東洋人の顔を持ち、さらさらと流れる風に乗って浮いている。
「君が来るのは久し振りだね。」
“仕事が忙しくてね。
なかなか遊びに来れなかったんだ。”
ヴィヴィアンも人使いが荒いんだから、
と苦笑いを溢す。
アルフは大きな木陰を見つけると沙希を座るように促し、自らもすわる。
「君も大変だね。」
“仕方がないよ。
ルルは元気かな?”
「元気だよ。
よく悩んでるけどね。」
“人のこと言えるかな。”
アルフは歩みを止めて目を見開き、沙希の方に顔を向けた。
沙希の蒼く長い髪がゆれる。
“君が悩んでるって教えてくれたさ。”
アタシの仲間がね、と空を見ながら呟く。
アルフは落胆したかのように溜め息をつき、肩を落とす。
「夢を見るってどういうことかな。
って思ってさ。
ちょっとこんがらがってたんだ。」
沙希は人生の先輩だろ、と冗談交じりに笑って返す。
“夢を見るのは人間の特権さ。”
アルフは目をさらに見開く。
“夢を考えられるのはそのものに自由があるからだよ。
だったら今すぐの答えなんか必要ないだろうし、
今を存分に生きるほうが、
ずっと大事だと思うけどね。”
まだまだ時間はあるだろう、老人じゃあるまいし、
と沙希はいやらしく笑った。
「そうかもね。」
有り難う、沙希。
”どういたしましてだね。”
自由に
気ままに
何より
存分に楽しむこと
今を、この瞬間を