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女の子、神様に会いました   作者: おじぃ 監修:シュウ
2/2

女の子、覗かれました

 いやいやいやー、今日は大変な一日だったぜ! 学校では木村に追っかけられるし大通公園では麗ちゃんにブタ箱まで連行されそうになるし。そういや隣のクラスのあの男、名前なんつったっけ? 萌香曰く、前はぼっちで存在感を消そうとしてんのバレバレだから逆に目立ってたけど、最近人と触れ合うようになって目立たなくなったとかなんとか。名前を訊いたら、あははー、名前? ‘ボッチン’でいいんじゃない? だとさ。っておいっ! それ本名じゃなくて徒名だろ! しかもなんか卑猥ひわいだぜ!


 それはさておき、中学生の女の子、武田たけだ瑠璃るりちゃんにソフトクリームをぶちまけちまった俺は、テレビ塔の目の前にあるセイコーマートで詫びのプリンを買って、クリームでベタベタになった顔と制服のシャツを洗うため、麗ちゃんと見知さんも同行で家に招待した。俺ん家は札幌駅に近い8階建て賃貸マンションの3階。テレビ塔からは徒歩10分くらいだ。


「おーじゃまー!」

「「おじゃまします」」


 見知さん、麗ちゃん、瑠璃ちゃんが同時に言った。


「いらっしゃーいっ!」


 関西弁で三人を歓迎し、瑠璃ちゃんには先ず洗面所で顔を洗ってもらって、俺は中学生の頃に着てた『じゃがいもっこり』という股間がもっこりしたキャラクターのTシャツを用意して隣接してる母チャンの部屋に運び、そこで着替えるよう瑠璃ちゃんに伝えた。ボテボテナマハゲたる母チャンのTシャツはデカ過ぎて着れないだろうからな。ちなみに母チャンは仕事で留守だ。


 自室に戻った俺は、制服のブレザーから赤い熱血ジャージに着替えるため赤いトランクス一丁だ。開放感がサイコーだぜ!


「きゃああああああっ!!」


 おやおや!? 爽快感に浸ってると母チャンの部屋から悲鳴が聞こえたぞ! もしかして押し入れに泥棒でも潜んでたか!? 俺は瑠璃ちゃんを助けるために疾風はやての如く母チャンの部屋に突撃した。


「どうした!?」


「きゃあっ!」


 俺の登場に慌てた瑠璃ちゃんは両手をクロスさせて自分の肩を掴み、顔を紅く染めて前屈みになった。


「おっと失礼」


 俺は右手を顔の中央に立てて詫びた。瑠璃ちゃんは着替え中で、上は白い下着姿。肌も白くて将来の旦那さんは幸せだな。


「ウヒョヒョるりりん! これはけしからん! オジサンとイイコトしないかい!? ハァ、ハァ…」


「神威くん…」


 続いて客間の見知さん麗ちゃんも駆け付けたが、麗ちゃんは超ジト目だぜ…。


「おいおいっ! これも事故だ!」


「この姿でそんなこと言われても、瑠璃ちゃんは襲われそうになって悲鳴を上げたとしか…」


 この姿? おーとうひょひょいっ! 俺パンイチだったぜ!


「それに、元気になってるし…」


 麗ちゃんは頬を紅くして、斜め上から俺の股間をチラ見した。


「いや違う! 襲おうだなんて思ってないぞ! 元気になるのは男の宿命だからカンベンしてくれ! ってか瑠璃ちゃん! 何があったんだ!?」


 いつの間にか若干サイズが大きくてダボダボした『じゃがいもっこりTシャツ』を着た瑠璃ちゃんは、窓の上の白い壁を這う凛々しい黒い虫を指差した。


「ああ! コイツは俺の家族でな、‘ごきぶりん’っていうんだ! 一日中虫カゴに閉じ込めとくのは可哀想だから、たまに散歩させてるんだ」


「はぁ…」


 瑠璃ちゃんは何故か冷や汗気味に苦笑した。


 こっちを向いたごきぶりんは触角をピクピクさせて、瑠璃ちゃんに初めましての挨拶をすると、瑠璃ちゃんは会釈で返した。


「でよ、ウチ今夜カレーなんだけど、瑠璃ちゃんも食べてくか?」


「お近付きのシルシに晩餐しようじゃないか! ハァ、ハァ…」


「大丈夫。この人たちが悪いことしそうになったら、私が気絶させるから」


「気絶!?」


 大人しそうな麗ちゃんには似合わない驚愕の発言に、瑠璃ちゃんは動揺してるっぽい。そりゃそうだ、俺だってついこの前まで麗ちゃんを清楚でか弱い女の子だと思ってたからな。


「おやおや麗姫うららひめ、まるで私とねっぷだけが悪者みたいな物言いだけど、私は貴女の悪事を目撃しているよ。まだ16歳なのにアニ〇イトの18禁コーナーをまじまじと。しかも私服なのをいいことに一冊手に取ってそそくさとレジに…」


 ズドン!!


「ぐふぁっ!?」


 バタン!


 一瞬だった。見知さんが後頭部に踵落としを食らって気絶し、倒れ込むまで。麗ちゃん、色んな意味で遣り手だぜ…。


 瑠璃ちゃんは唖然としながら倒れた見知さんを見下ろしている。そりゃそうだ。目の前で人が気絶して倒れたら相当なショックだろうよ。


「さぁ、ディナーの支度をしましょう。神威くんはお米を研いでくれる?」


「はい…」


 流石の神たる俺でも、麗ちゃんには逆らえねぇ。


「あっ、私、カレー得意なので手伝います」


「そうなんだぁ、じゃあ手伝って貰おうかな」


「はい!」


 こえ~、麗ちゃん笑顔なのにガチこえ~…。


 そんなこんなで色々あったけど、カレーは無事に出来上がり、見知さんを起こしてリビングの食卓を囲む。みんなで『いただきます』の挨拶をしたら、楽しいディナータイムの始まりだ。今日は茄子やピーマンをふんだんに使った辛口の夏野菜カレーだ。作らせといてアレだけど、野菜とか辛口のルーが瑠璃ちゃんの口に合うか心配だ。


「どうだ? 辛くないか?」


 左斜め向かいの瑠璃ちゃんに問うた。俺の正面は麗ちゃん、隣は見知さん。麗ちゃん曰く、この配置が瑠璃ちゃんの安全確保に最適なのだとか。テーブルの真ん中には大きく千切ったレタスと6等分に切ったトマトにスライスオニオンを盛り合わせたサラダがドンと置いてあり、その横ではごきぶりんが可愛らしく触角をピクピクさせながら小皿に盛ったカレーを食べている。瑠璃ちゃんは、この人たち気にならないのかな? みたいな目で麗ちゃんと見知さんを交互にチラチラ見遣っていた。


「はい、辛いけど美味しいです!」


「そうかそうか! 良かったな!」


 おっと、大人しくても将来美人になりそうな雰囲気あるけど、笑うともっと可愛いじゃねぇか。少し心開いてくれたかな?


「しかし瑠璃ちゃんも麗ちゃんも料理上手だな!」


「ありがとうございます。食べてくれる人が喜ぶ顔が見たくて」


「私も、神威くんが喜ぶ顔を見たくて…」


「うひょーいっ! そうかそうか! 二人とも将来はイイお嫁さんになるな!」


 言うと、瑠璃ちゃんと麗ちゃんはクスクス照れ笑いした。いやぁ、ガチで可愛いな! 麗ちゃんを見ると鼻の下が伸びて、瑠璃ちゃんを見ると目尻が下がるぜ!


「ところで、るりりんは何年生なんだい?」


 見知さんがにこやかに問うた。


「一年生です!」


「そうなんだぁ。ところで、お父さんかお母さんには連絡しなくて大丈夫かな?」


 ここで麗ちゃん鋭い指摘。しかし知り合ったばかりの高校生と食事してるなんて知ったら親御さんの不安を煽りそうだけどな。


「はい! お父さんには帰り遅くなるってメールを送りました。でも、今日はお付き合いでお酒を呑みに行ってるみたいです」


 あれ? もしかして主夫ってヤツ? 俺ら三人はニコニコしながら胸の内でそんなことを考えていた。


「そうか! 父チャンは歳いくつなんだ?」


「今年で28歳になります」


 !?


 俺ら三人は笑顔のまま黙ってるけど、28歳の父チャンに中1の子とはこれ如何に!?


 まぁ、なんというか、同じ札幌に俺よりお盛んな男が居るとは思わなかったぜ…。


「じゃあ母チャンは?」


 瑠璃ちゃんは一瞬困った顔をした。やべ、主夫というよりシングルファザーだったか?


「…19歳になります」


 おーとっと!? こりゃなんてこった! 瑠璃ちゃんの父チャン、ヤリ〇ン通り越してもはや鬼畜だぞ!


 麗ちゃんと見知さんは、複雑な事情があるんだなと言わんばかりに不自然なくらい爽やかな笑顔だ。


 いや待てよ? 流石に19歳の母チャンに中1の娘は有り得ねぇ。あ、そうか! わかったぞ!






 瑠璃ちゃんは、妖精なんだ!!






 そうかそうか! そう考えれば6歳差親子ってのも合点がイクぜ! ちっちゃいオジサンみたいに限りなく人間に近い妖精なんだな!


 いやぁ、常識に囚われない柔軟な脳ミソを持つ神たる俺の明晰さには自分でも驚愕だぜ!


 ◇◇◇


 夜8時。瑠璃ちゃんの制服はすっかり乾き、そろそろお帰りの時間だ。少女が一人で出歩くのはキケンな時間なので、俺はJRの札幌駅で麗ちゃんと見知さんを見送り、そのまま瑠璃ちゃんと地下鉄に乗って家の前まで送ることにした。


「じゃがいもっこりTシャツを私におくれー!! もちろん洗濯せずにー!!」


 現在地はJRの改札口。周囲の人々は見て見ぬフリをしてるけど、見知さんは俺ん家を出る前からずっとこの調子で、もはや酔っ払いオヤジだ。


「いいから早く帰りますよ。神威くん、瑠璃ちゃんをよろしくね」


「おう!」


「またね、瑠璃ちゃん」


「るりりーん!! 私と一緒に住もうじゃないかー!!」


「さようならー」


 瑠璃ちゃんは苦笑しながら麗ちゃんと半ば強引に引き摺られてる見知さんに手を振った。


 なんやかんや麗ちゃんも俺を信頼してくれてるみたいだ。見知さんはガチで何するかわかんねぇけどな。


 JRの改札口前から地下鉄の切符売り場に移動。俺は地下鉄の切符を二枚買って瑠璃ちゃんに渡した。瑠璃ちゃんは遠慮して財布から自分のお金を出そうとしたけど、そこはオトナのヨユーを見せてやった。


「ここが私のお家です」


 帰宅ラッシュの地下鉄を降り、地上に出て徒歩5分。辿り着いたのは8階建てのマンション。昇降口にオートロックがある。たぶん賃貸じゃなくて購入タイプだ。ここまで来る間、俺たちは他愛ない会話をしながら、それなりに親密度をアップ出来たんじゃないかと思う。俺と瑠璃ちゃんはエレベーターで5階まで上がり、武田家の部屋前に到着した。今年で28歳になる父チャンがマイホームとは、そこそこ金持ちなのか。


 まぁ妖精説は冗談として、相当なヤリ〇ンでも瑠璃ちゃんをここまで育てたんだから、バツイチかもしんねぇけど悪いヤツじゃないだろう。


「おう、そうか。じゃあ気が向いたらいつでも連絡してくれよな! 欲求不満になったらデリヘルやってやるぜ?」


 実は俺ん家を出る前、俺たち三人は瑠璃ちゃんのケー番とメアドを教えて貰ったのだ。


「デリヘル?」


「おっと、なんでもない気にすんな!」


 冗談のつもりだったけど、知らないなら知らないままのほうがいいワードだから教えるのはやめとこう。


「はい。今日はありがとうございました」


「いやいや、俺こそ色々悪かったな! 俺一人っ子だからさ、瑠璃ちゃんと会えて、妹が出来たみたいで嬉しいぜ。たぶん麗ちゃんと見知さんも同じ気持ちだ」


「ふふっ、妹だなんて…。それじゃ、さようなら」


「おう! またな!」


 瑠璃ちゃんはペコリとお辞儀して、家の中に入っていった。俺は扉の閉まった静かな部屋前で数分待って、部屋に泥棒が潜んでて瑠璃ちゃんが襲われていないのを聞き耳を立てて確認してから来た道を戻り、俺が住むマンションのすぐそばにあるセブンイレブンでエロ本とコンドーさんを買って帰った。


 学校では殺されかけたけど、今日はハートがほっこりするサイコーな一日だったぜ!


 あ、コンドーさんって人身売買じゃないからな! セブンイレブンじゃ人は買えねぇぜ!

 ご覧いただき本当にありがとうございます!


 今回は『さつこい!』のおバカな一面と『女の子、娘にしました』のほのぼのした雰囲気を掛け合わせたつもりですが、いかがでしょうか。


 最後の一文が気になった方は、シュウさんの『女の子、買いました』をご覧ください。なお、作品中に登場した木村さんは、同じくシュウさんの『ぼっちデイズ』のキャラクターです。最新2話はこの作品とコラボしておりますので、神威が殺されかけた理由が気になりましたら是非ご確認ください。


 このお話はこれにて完結となりますが、これからもコラボ企画を開催するかもしれません。


 最後になりますが、シュウさん、ご協力ありがとうございますm(__)m



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