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06待機中(プロフェッサー編)

 EFの本部は結構広い。入社直後、一番にやるべき事が見取り図の暗記な訳だが、最短記録がEFのブレインたるプロフェッサーの一週間で、最長記録がスリーナイトの一年と大きな開きがあることからも、その事実は伺える。

 それだけ広い基地な訳だが、その基地内の30%程を締めるのが、プロフェッサー率いる技術部門の開発・実験スペースであり、その中の一室はプロフェッサーの私室。基地内唯一の畳張りの部屋である。

 その部屋の中で、ブラックライズがうつ伏せに寝転がっていた。寝転がって、垂れていた。

「あ〜、畳はいいなぁ」

「そんなに畳が好きなら、自室に敷けば?」

 褞袍(どてら)にコタツと完全な冬装備のプロフェッサーが、ブラックライズの兵装をいじりつつ提案した。確かに魅力的なその案だが、ブラックライズは垂れたまま首を横に振る。畳に顎が擦れて少し痛かった。

「しない。めんどいし」

「一々私の部屋まで来る方が面倒だと思うけど」

「基本的についでだからな。面倒って事は無い。ノープロブレム」

「……発音変。No problem」

「先生かよ……先生か」

 プロフェッサーの表の顔は、久野木高校英語教諭だ。

「Yes.Repeat after me.“No problem”」

「面倒だから、やだ」

「これが授業中だったら流石に手が出るわね」

 床に垂れて教諭の方を見ず、指名されれば面倒だと返す。余りに酷い授業態度だ。親の顔が見てみたいと考えて、ふとした疑問がプロフェッサーの脳裏をよぎる。

「そういえば、ブラックライズのご両親って何をしてる人だったの?意外とブラックライズの先生の姿、様になってるし教師だったとか?」

「あ?酒と煙草と浮気と賭事だけど。後買い物とDV」

 さらっと言ったその言葉には、特に気になる所は無かった。強いて言うなら、プロフェッサーの意図していた、「何の職業か」という問に対しての答えがなかったことくらいだから、それについて、プロフェッサーは改めて尋ねる。

「そういう意味ではなくて。何の仕事してたのかなって」

「さあ?仕事してるの見たこと無いし。すげぇ、運が良くてな。賭事強かったから、そういう意味ではかなり稼いでたし、働いて無かったんじゃね?お陰で、小学生の頃の親の仕事って作文、大変だったわ」

「あー、分かるかも。私もその手の宿題大変だったなー。大量破壊兵器造ってますなんて言えないよね」

「最終的には作り話で落ち着くよな」

「私、ちゃんと事実書いたけど。“皆の役にたつ物を造ってます”って」

「物は言い様か」

「そう言うこと。――はい、整備終わり。今、お茶とお茶菓子出すから、もう少しゆっくりしていって」

「了解」

 垂れ状態から復帰して、畳の痕がついた顎をさすりながら、ブラックライズがこたつの中へ足を入れる。

 小さな突起では使いづらいと、マウスピース型になった酸素ボンベがついた仮面の具合や武器のグリップの具合を確かめてから仕舞うと、それに合わせてプロフェッサーが緑茶の入った湯呑みと2つの饅頭の乗った皿をブラックライズの前に置き、礼を言ったブラックライズは湯呑みを持ち上げて1口。

 ……うむ。

「ルークが煎れた方が美味いな」

「ルークと比べないでよ」

 ガックリと肩を落とすプロフェッサーを尻目に、ブラックライズはのんびりと茶を嗜んだ。

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