12月29日 第十四章「わかれ」
別れというのは、慣れない。
少なくとも私にとっては。
だって、一生の中で出会える人間って限られてるもん。
私は、愛美を、忘れない――
葬式の帰りのバスの中でのことだ。
「香澄」
青坂くんが通路側を見てボソリとつぶやく。
バスがごとんと上下に揺れた。
「何?」
「もし僕が死んだら?」
「……」
私はそっと目を閉じた。
「嫌だ。そんなの嫌だ。わがままかもしれないけど、私のそばにずっといて」
「……」
彼は返事をしなかった。だけど――
「香澄、愛してる」
そっと私の手を握ってそういった。それだけで十分だった。
「……私も」
私も窓の外の景色に目をやりながらそういった。
信号で一旦バスは停車した。
「香澄……」
青坂くんがはっきりそういった。
「愛美が最後に香澄と仲直りしようとしたわけ、わかる。人間、死ぬ前に自分の最愛だったものと喧嘩別れしたくないもんね」
「……青坂くん?」
彼の表情は消えてしまいそうなほどはかなかった。
その時だった。事が起きたのは。
停車中のバスに横から大型トラックが突っ込んできたのだ。私たちは宙に放り出された。上下左右がわからなくなって、やがて視界から光が消えた。遠くで爆発音も聞こえた。
「香澄は、僕が守るから――」
青坂くんの小さいけど、はっきりとそう言ったのが聞こえた。




