第9話 反省会は必須です
翌日。
「おはよう、エルミナ!」
「おはようございます、ハナさん。」
「おはよう、フクオカ君。」
「おはようございます、フクオカ提督」
(ん?提督?戻ってる?え?あぁ。
そうか、プライベートは別だよね、うんうん)
エルミナがじっとハナの方を見つめている。
それに気づいたハナが笑顔で頷いた。
(大成功だよっ!)
まるでアイコンタクトのようにエルミナも笑顔で頷く。
二人のやりとりに少し不思議な顔をしたフクオカ中将だったが、そのままハナのもとへ。
「提督、先日から承認待ちの書類が山積みになっています。」
「あ……、そっそうだね。急に気分が滅入ってきたよ。」
「僕の方で、優先順位別に仕分けておきました。優先度の高いものからお願いします。」
(フクオカ君、やっぱり仕事でも優しい、頼りになる、愛してる!)
「あと、こちらは委譲さえしていただければ、僕の方で決裁できるものです。」
山積みの書類の半分くらいが仕分けられている。
「い……いいの?」
「はい、少しでもフクオカ提督の負荷が減るのであれば、お任せください。」
(あぁぁん、優しい優しい好き優しい優しい優しい!)
「では、任せるわ、とても助かる。」
「はい、任せてください。」
そういうと半分ほどの決裁書類を持ち上げて、自分の執務室へと向かっていった。
「相変わらず、よく出来た男だな。」
フクオカ中将がいなくなったのを確認してから、エルミナがぼやきながら近づいてきた。
「えぇ、やっぱり素敵。最高。好き。」
「ハナさん、いつもは隠してるはずの心の声が漏れてますよ。気を付けないと他人に聞かれます。」
「!!」
慌てた顔して両手で口を押えるハナ。
「危ない危ない。で、エルミナには残りの半分を委譲したらいいのね?」
「え?いやですよ。ちゃんと仕事してください。それとも何か奢ってくれます?」
「……。今度エルミナのコーヒーにフクオカ君の爪の垢を混ぜとく。」
「やめてくださいよ、汚い!」
「汚くないっ!」
「はいはい、で、どうでした?」
「どうって?」
「昨日の話に決まってるじゃないですか。上手くいったんですよね?
今日、すごく上機嫌だし!」
ハナが黙ったままニヤリと笑った。
「良かったですね。」
エルミナも我が事のように嬉しそうだ。
「で、聞いてもいいんですか?どこまで進展しました?」
「ん?進展?」
「はい、進展。」
(進展……したんだっけ?)
「キスしました?」
「ぷっ!!」
あまりに驚いて噴き出してしまい、顔を寄せてニヤニヤしていたエルミナに盛大に唾がかかる。
「いやっ汚い!!!唾を噴かないでください!!」
「ごっごめん。きっキスしてよかったの?」
「もう…汚いなぁ。
えっと、キスしていいとか悪いとかじゃなくて、そういう雰囲気には?」
「なってない。いや、焼肉デートだと息が臭いじゃない?だから……」
「言い訳ですっ!何のためにブレスケア持ってかせたと思ってるんですか!
はぁ……いや、まぁ予想通りです。大丈夫大丈夫。
ハナさんにはハナさんのペースがありますからね。」
「……。」
「ハナさんらしくて逆に安心しました!で、何か1mmくらいは進展したんですよね?」
「うっ、うん。呼び方が変わった。」
「おぉ!!!それは30㎝位進展してますよ!やっとハナって呼んでもらえたんですね!!」
「フクオカさん」
「ん?」
「フクオカさんって」
「んん?」
「だからフクオカさんに変わったの!!!」
「………。0.5mmくらいしか進展してないじゃないですか!!」
「うぅぅ……やっぱりそうだよね。」
「他には?」
「手を………。手を繋いだ。」
「ほぉ、ハナさんから?フクオカの方から?」
「フクオカ君から。」
「ほぉ、それはそれで10cmくらいは進展しましたね。
あの堅物が……。なるほど、なるほど。」
「人通りが多いから迷子になるって。」
「……。はい?」
「迷子になるからって手を握ってくれた。」
「………。2mmしか進展してないじゃないですか!!」
「………。何も進展してないの?」
「はい、率直に言います。何も進展していません。
何やってるんですかぁ!」
「……。」
「まぁ、ハナさんが幸せな気分になれたんだったらそれはそれでいいんですけどね。」
「うん、幸せな気分だった。さっきまでは。」
「あぁ、ごめんごめん。せっかくの幸せ気分に水を差しちゃったね。」
「ぐすん……やっぱり、全然進展してないんだ……。」
「いや、ハナさんとあのフクオカだったら2.5mm進めば上々ですよ。」
「はぁ、次は頑張る。」
「次?」
「次の約束はしたよ。」
急にエルミナが明るい顔になる!
「オッケーです!進展してます!次の約束を取り付けたんだ?
及第点です!ハナさん、合格合格!」
「え?そう?」
「はい、積み重ねです。次も反省会しますからねっ!」
「はい!恋参謀!!」
少し目を泳がせた後、エルミナが再びニヤリと笑ってハナに問いかけた。
「ハナさん、昨日のデート、笑顔が多かったですか?」
「うん、二人してずっと笑ってたよ。」
「自分らしく、心地よい会話は弾みました?」
「うん、もちろん。」
「時間の経過は早く感じられましたか?」
「うん、もっと一緒に居たかった。」
「オッケーです。なんか、ずっと見てきたせいで勘違いしちゃいましたが、そういえば、これ初デートですよね?」
「え?そうだけど。」
「だったら昨日のデートは100点満点です。ちゃんと次の約束も取り付けましたしね。
次も頑張ってください。恋の百戦錬磨、エルミナ様の採点は正確無比です。」
「え?あ、うん!頑張る!次も頼むよ、エルミナ様!」
【あとがき】
『タイトル:提督の反省会日誌』
進展度、合計2.5mm!(でも、初デートとしては100点!?)
ハナです!昨日の焼肉デート(?)、最高でした!フクオカ君は相変わらず仕事もできて優しくて、もう終始デレデレでした。
しかし!恋の参謀長・エルミナによる厳正な反省会の結果、驚きの事実が発覚!
キス:なし(焼肉だから!...は言い訳認定)
呼び方:「提督」→「フクオカさん」(+0.5mm)
手繋ぎ:「迷子防止」(+2mm)
合計:わずか2.5mmの進展!?
正直、ショックでしたが、「初デートとしては100点」、そして**「次の約束を取り付けた」**というエルミナ様のお墨付きをもらって、ちょっと元気になりました!
...私らしいペースって、そういうことなのね。
よし、次は必ず進展させます!
フクオカ君が優しすぎるあまり、私のことを**「尊敬する上司」から「仲の良い同姓の友人」**くらいにしか思ってない可能性も…。
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(ひろの)
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