第29話 恋参謀対決
第四部 あなたの物語
ハナ、フクオカ、エルミナ、レイブ。
それぞれの物語がゴールに向けて紡がれます。
そして、時を零七の奇跡の時間軸へ戻す。
「・・・頭が付いて行ってない顔してますね?
僕のお願いは・・”僕が大将になるまで待ってくれますか?”
です。」
ハナの脳味噌が沸騰した。
「ひゃ・・ひゃい・・待ちまふゅ・・」
顔を真っ赤にして噛み噛みで答えた。
そのまま布団に頭から潜り込んで動かなくなった。
エルミナがフクオカに近づいて耳元で囁いた。
「やるな、フクオカ、サイコー。私も泣けてきちゃった。
えっと……ハナちゃんの薬指のサイズ教えてあげるよ。
代金として、リゾート地のメニャドゥの別荘を買って?」
「無茶いうな」
「えー?でも必要でしょ?」
フクオカがエルミナに手招きしつつ、ベッドから少しだけ離れた。
そして小声で続ける。
「別荘は買ってやれん。だから別のもので取引だ。」
エルミナがニヤっと笑う。
「ほぉ?別荘相当の別の物とな?」
「お前、今はフリーだろ?」
「な?まさか、お前、私を愛人にする気か?
一気に欲がパワーアップしすぎだろ!」
「馬鹿か!」
「じゃあ、なに?」
「レイヴ・アルディナス少将。あいつがお前に惚れてる。
侯爵家の三男坊だ。玉の輿に興味はないか?紹介してやるぞ?」
「え?今なんて言った?」
「僕の副官のレイヴ少将だ。紹介してやると。
嫡流じゃないので今は子爵だ。
だが、あいつなら、この第7で武勲を挙げ続けて、侯爵にだってなれるさ。」
エルミナは最初、びっくりして少し固まった。
そして慌てて確認した。
「えー!!!レイヴ君!?」
「なんだ、知ってるのか?」
「第7で知らない女子はいないでしょ!
彼、凄いモテてるんだぞ。
かっこいいし、優秀だし。生まれもいいし。
有望株すぎて……。
それで、なんで私?」
「いや、特に他意はなかったんだが…。
お前のことをずっと美人で気配りもできるし、明るく誰にでも優しい。
それに軍人としても一流だと吹聴しまくっていたら、興味を持ったらしい。」
「……。なんだ、フクオカ。
お前、私のことも、好きすぎじゃないか!
二股かけてたのか?」
「……。あまりそこに食いついてくるなよ。
嘘がばれるだろ?
本当は、小憎らしい恋参謀で、提督をいつも誑かしてる奴だって言ってたら、興味が湧いたらしい。」
「………………。それ…、落差が酷過ぎるってば。」
フクオカは意地悪そうな笑みをみせながら問いかけた。
「メニャドゥの別荘とどっちがいい?」
「レイヴ君、一択でしょうが!恋の百戦錬磨として、相応しい相手!
今は私のことを珍獣みたいに興味持っただけかもしれない。
でも、このきっかけを利用して、必ず落としてやる!」
「ははは、エルミナ。お前らしいな。じゃあ、契約成立だ。
明日、僕の執務室に来てくれ。レイヴを呼んでおく。」
「オーケー。ハナちゃんのリングサイズは9号だ。間違いない。」
二人してニヤリと笑った。
「おっと、ハナちゃんのこと忘れてた。」
二人が再びハナのベッドの傍に近づくが、相変わらず頭から布団をかぶったままだ。
「おーい、ハナちゃん、生きてるか?」
か細い声で返事が返ってくる。
「うん、待つぅ……。どれくらい待てばいい?
5分?…10分?」
フクオカとエルミナが顔を見合わせて笑いを堪える。
「ハナちゃん、まだ脳味噌が沸騰した影響が残ってるみたい。ふふふ。」
「フクオカさん、すみません。5分じゃ無理です。でもなるべく急ぎますね。
まずは怪我を治してください。そしてニャニャーンに帰りましょう。」
「うん、待つぅ……。ニャニャーンに帰るぅ……。」
「ゆっくり休んでくださいね。」
そうして二人はハナの病室を後にした。
・・・
・・
翌日。
フクオカとレイヴがニャニャーン帰還に向けての物資の補給状況を確認し合っていた。
コンコンコン。
「フクオカ、入るよ?」
「あぁ、エルミナか。どうぞ。」
エルミナが、チラッとレイヴを流し目で見つめた後、すぐにフクオカに向けて語りだした。
「フクオカ、主砲の換装の件だが……。」
エルミナはレイヴを無視して淡々とフクオカと必要事項に関して決定していった。
「オッケー、じゃあ、フクオカ。後は頼んだよ。
あ、えっと……君は?」
急に話を振られて慌てつつも、いつもの決め顔でレイヴも返した。
「は、レイヴです。エルミナ中将、以後お見知りおきください。」
全く興味がないと言った顔で、少し微笑んでエルミナも返す。
「えぇ、よろしくね。
ごめんね、レイヴ君、少しフクオカを借りたけど返すわ。
話の続きをして。」
そして、何事もなかったかのように立ち去ろうとする。
特にエルミナとは事前に打ち合わせをしていたわけではない。
普通に紹介するものだと思っていた。
フクオカは笑いを堪えるのに苦労した。
(エルミナ……、さすがだな。いきなり恋戦闘をレイヴにしかけやがった)
レイヴも無視されたのは初めてで俄然やる気がでてきているようだった。
「あー、待て、エルミナ。」
「なに?」
優雅に振り返るエルミナ。彼女のサラサラのロングストレートがふわっと揺れる。
(おぉ……見事だ。こいつ、このポーズをどれくらい練習してきたんだ?)
フクオカは内心で笑いまくっている。
「いや、実はレイヴが、今参謀として軍略を学んでいるんだが、お前に少し相談したいことがあるらしい。」
レイヴがびっくりした顔をしたが、見えないように足元をフクオカがこついたのを見て悟った。
「あ、はい。実は小官は先のジソリアン戦の軍監報告を見て分析しているのですが、ぜひエルミナ中将のご意見を伺いたく。」
「……。えぇ、いいわよ。でも今は忙しいから後で良い?」
「え?あ、はい。もちろんです。」
「これ、私の連絡先。明日以降ならいつでも連絡してきていいわよ。」
(こいつ、準備が良いな・・・はははは)
「は、ありがとうございます!!」
そして再び優雅に振り返ってエルミナは去っていった。
感慨深げにレイヴが呟いて、連絡先を見つめる。
「あれがエルミナ参謀長ですか………。
中将、ありがとうございました。」
「何がだ?」
「いえ、咄嗟に参謀長を呼び止めてくださいましたよね?
僕が参謀長に少し興味があると伝えていたのを、覚えていて下さったんですよね。」
「え?あぁ。」
「おかげで参謀長の連絡先を手に入れることが出来ました。
結構、これは入手難易度が高かったのかもしれません。」
「まぁ、そうだろうな。あいつもあのように見えて、人気者だ。
狙ってる奴も多かろう。」
「いいでしょう!面白くなってきました。
僕も本気で行かせてもらいます。落として見せますよ。
参謀長を!」
「あ?あぁ、そうか。頑張れ。あいつは一癖も二癖もあるぞ。
軽い気持ちで近づくと、あいつは高くつくぞ?」
「大丈夫です。僕だって、中将と違って、百戦錬磨ですので。
負けません!」
「僕と違って……は敢えて言う必要ないだろうが。」
(ふふふ、エルミナ。お前は凄い奴だな。
完全にレイヴの興味を惹いたぞ?
伊達に恋参謀は名乗ってないな!)
「では、失礼します。明日、参謀長に初撃を仕掛けます。
それに備えて作戦を考えます。」
「あぁ、……頑張れ!」
レイヴが退室した後、個人端末でカレンダーを調べた。
(ハナさんの退院は3日後か)
【あとがき】
作者子です。
ようやく、相思相愛パートに戻ってきました。
これからはハナとフクオカの心の声はどちらも表示しますよ!
ハナちゃん、沸騰モード可愛いですよね!
ハナちゃんは相変わらずポンコツ、フクオカは一皮むけた男、エルミナとレイヴが恋の百戦錬磨を賭けた名勝負。
まだまだ面白いですね。あと数話で終わるつもりが長引きそうで怖い!
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