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ハナちゃんのポンコツの恋  作者: ひろの
第三部 答え合わせ

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第27話 我慢

「レイヴ、ハナさんからデートのお誘いがあった。

 嬉しい。」


「そうなんですか?よかったですね。

 でも中将、最後に心の声が漏れてますよ。」


「あ、いや、何でもない。」


「で、次はどこですか?僕で良ければ、何かお手伝いできるかもしれません。」


「次はニャオンモールの”ニャパスタ”で待ち合わせだ。」


「ニャオンモールですか。ニャパスタならカジュアルですね。

 ハナ提督って意外と庶民的なんですね。」


「あぁ、そういうところも魅力的だ。」


「惚気は結構です。

 今回はとりあえず助言は不要そうですね。

 また何かあったらメール下さい。」


・・・

・・


食事デート。


「あ…すみません、お待たせしま………。」


ミルクティグレーのミディ丈のAラインドレスを着たハナが現れた。

思わず息が詰まる。


(き……綺麗だ………。

 ………。

 ………。

 あ、見とれて意識が飛んだ。)


「あ……。ニャパスタと思って、僕はこんな格好で来てしまいましたが、実際はどこでした?」


「……あれ?ごめん、言ってなかったっけ?ニャレスターのつもりなんだけど。」


「ニャ…ニャレスターですか。これではだめですね。えーっと…。」


(まずいな。場所を聞かなかったのは僕の落ち度だ。勝手に思い込んでしまった。)


「待って待って!ごめんね、私が伝え忘れたのが悪いの。そうだ。

 ニャレスターに向かうついでに、デパートに寄りましょ?

 私が選んであげるわ。」


(ん?え?えええええ?!これは……買い物デートを追加か?!

 どういうことだ!?)


「え?あ……はっはい。」


・・・

・・


「これなんかどう?」


(待て待て、どう見てもこれじゃあ恋人同士だ。

 いや、嬉しいんだが。まだ僕はハナさんの恋人になれる資格がない!)


「じゃあ、これは?一度着てみせて。」


更衣室の中で取り急ぎ、レイヴに状況を共有した。


『どうしたらいい?』


ピコン


『状況把握しました。やられましたね、中将。

 これはエルミナ参謀長の謀略です。』


(むぅ…なるほど言われてみれば。

 確かにあいつならハナさんに余計な入れ知恵をしそうだ。)


立て続けにメールで作戦会議を行うが、時折、着替えてハナにその姿を見せる。

うっとりした目で見てくれている。


(うっ嬉しいんだが、だが……だが……まだだ。

 まだ僕はその立場じゃない。

 まずい。我慢しないといけない。だが折れそうだ。

 ………。楽しい……。)


『こうなったら仕方ないので楽しみましょう。

 ここでつまらない顔をすると次がないです。』


『了解した。』


(我慢が必要だが、次がなくなってもらっても困る。)


『食事は何時からですか?』


『20時と聞いた。』


『中将、これは敗北です。エルミナ参謀長の完勝です。』


『どういう意味だ?』


『もはや退路はありません。

 おそらく何らかの次の一手が待ち受けています。

 ニャレスタの食事が終わった後はご覚悟を。』


『待て、何の覚悟だ!?』


「フクオカ君、着替えた?」


「すみません、お待ちください。」


再び服を着替えて、ハナに見せる。

全ての服がまるでオーダーメイドされたかのようにフクオカにフィットしていた。


(これもエルミナの仕業か)


その間にも複数のメールが届いた。


(あぁ、確認したい。作戦を練らねば後手に回る)


「じゃあ、これも。」


ようやくメールを確認する。


『覚悟と言ったらこれですよ。』


その後のメールは様々な近隣のそういう目的のお洒落な宿泊施設の情報リストだった。


(おいっ!!待て待て!なんでこう、周りは僕の気持ちを無視して!!)


「ごめんね、私のせいだから、この服は私にプレゼントさせて。

 その代わり、私の買い物にも少し付き合ってもらえる?」


急に我に返るフクオカ。


(あ、しまった。邪念を捨てろ!

 あいつらのせいで、僕までその気になってどうする!!)


「あ……、もっもちろんです!

 フクオカさん、欲しいものを言ってください。

 僕もフクオカさんに何かお返しにプレゼントしたいです。」


ハナは買い物に付き合ってほしいと言いながら、何が欲しいか、その場で探しているような様子だった。


(ハナさん、甘いな。

 戦場では完璧だけど、デートではおそらくエルミナに乗せられて無理しているんだろう。

 そんなハナさんは、今のままで良いんだ。

 無理して背伸びしなくても。)


「ハナさん、これなんてどうでしょう?」


アイリス柄の高級ティーカップセットを指さした。


(アイリス柄……。今の僕にぴったりの花だ。

 まだ、僕はハナさんに恋のメッセージを送ることはできても、ハナさんの横に立つには程遠い。)


「あぁ、可愛い!さすがフクオカ君。

 いいわね、これ。これにしようかな?

 これだったら二人でお茶もできそうね。」


「え?あ、そうですね。

 フクオカさんの部屋に行くのが楽しみになります。」


「あ・・・あははは。そうね。これ!これにする。

 これが欲しいわ!」


「分かりました。これは僕にプレゼントさせてください。」


(ハナさんは花言葉を理解されてなさそうだ。

 でもそれでいい。今はそれで。

 いずれ必ず僕はハナさんの隣に立てる男になる!)


フクオカは心臓が高鳴っている。そして体中が熱い。

それもそうだ。エルミナとレイヴのせいで、意識しまくっている。


(このまま、食事に向かえば、自然とそういう流れになってしまうかもしれない。

 しかも相手はエルミナだ。

 ハナさんに良からぬことを刷り込んでいるかもしれない。

 ハナさんが妙に積極的になってきたらどうする?

 抵抗できるか?

 僕にそこまでの精神力があるか?

 いや、無理だ。

 この時点でもはや撃沈寸前の僕が耐えられるわけがない。)


ハナの方をちらりと見る。ハナも顔が真っ赤で汗をかいている。

おそらく自分と同様に妄想でもして、興奮しているんだろう。


(ハナさんを抱きたい。抱きしめたい。

 がっしりと抱き締めて放したくない。

 でも今じゃない。今じゃないんだ。

 ごめんなさい、ハナさん。

 せっかく楽しい一日だったのに。

 僕が腰抜けの無能だから悪いんです。

 もう少し待ってください。僕は必ずハナさんを……。)


ここがブラックホールの事象の地平面みたいなものだろう。

この先に踏み込んだら、戻ってはこれなくなる。

 

「そろそろ時間ですね、行きましょうか。

 ん?フクオカさん、ここに座ってください。」


ハナが緊張と興奮で発熱しているのを承知の上で、体調不良と思わせて畳み込んだ。


(今日は無念の撤退をする。必ずこの埋め合わせはします)


タクシーを呼び寄せて、ハナを無理やり乗せた。

そして混乱しているハナを強制的に帰宅させた。


フクオカはあまりの心苦しさと緊張と残念さ、起こりえたかもしれない夜のロマンスを頭に浮かべながらベンチに座り込んだ。そして胸を押さえて苦悶の表情をする。


(みていろ、このリベンジは必ず!)


ハナとフクオカの大人の階段を上る計画は見事に大失敗した。


その後、ハナとはいつも通り接することが出来た。


そして、ハナに対する心配とは別に、ジソリアンの不穏な動きを検知し、エルミナと共に警戒に当たることになった。


エルミナとその話をしている時に急に後ろから重い空気が流れ込んでくる。


「……。ストップ、フクオカ。この話は後にしよう。」


「あ、待て。話の途中だが。」


「緊急事態だ。私では収められそうにない。お前の出番だ。

 ハナちゃんは水族館か遊園地に行きたがっていた。

 この情報料は高いぞ。後払いでいい。」


「え?」


(あ、ハナさん?!)


「あ、提督?こんにちは、どうなさったんですか?」


極力さりげなく、挨拶を行った。

ハナはぬるっと廊下から現れて瘴気を放ちつつも、平静な顔で挨拶を返した。


「フクオカ君、こんにちは。

 最近ずっとエルミナと難しい顔で会話しているけど何か問題でも?」


(なんだ?嫉妬か?疎外感か?いずれにせよ、これは誤解だ。

 そうか、そういうことか。エルミナ。水族館情報、恩に着る)


「前回は……。その……。

 僕にとっても消化不良で、できれば、提督ともう一度。

 あの……。その…。水族館でも一緒に行きませんか?

 セレニャール水族館の巨大銀河イワシトルネードがとても幻想的で。」


ハナから瘴気が立ち消え、まるで清涼な風が吹き出すようだった。


「えぇ、喜んで。でも……。再来週の土曜日でいいかしら?」


「はい、もちろんです。楽しみにしています。」


(よかった。スムーズにデートに誘えた。

 そうなんだ、僕達にはこういう軽いデートが似合ってる。)


ハナが見えなくなってから、フクオカが呟いた。


「エルミナには頭が上がらんな…。」

【あとがき】

挿絵(By みてみん)

作者子ちゃんです。

ハナちゃん、大人の階段を上れなかった回の裏側です。


応援したくなる二人ですよね!


もう我慢するなよ、抱き締めてやれよ!とみんな思いませんか?


まぁ、これがフクオカ君なんです。

皆さんの想いも聞かせてくださいね!


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