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ハナちゃんのポンコツの恋  作者: ひろの
第三部 答え合わせ

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25/31

第25話 切り札

「中将!?初デートが焼肉ですか!?」


「いや、分かってる。分かってるんだ。

 初デートで色々問題があるのは調べた。

 だが、ハナさんが行きたいなら、僕はそこで最善を尽くす!

 最大限楽しんでほしいし、僕のことをもっとみてもらいたい。」


「中将、けなげですね。中将ほどのハイスペックならどんな女性も一発で落ちるだろうに。」


「……、ハナさんがいい。」


「はいはい、わかりました。

 僕でよければいくらでもご協力します。」


フクオカは第7艦隊 左翼隊参謀のレイヴ・アルディナス少将――侯爵家の三男坊――と真剣に会話している。

彼は2歳年下で、フクオカのことを尊敬し、左翼隊副将として第7艦隊左翼の運用に大いに貢献していた。

挿絵(By みてみん)


「でも、中将。案外デートに焼肉も悪くないですよ?」


「そうなのか?」


「はい、気取ったレストランよりもカジュアルです。

 リラックスして過ごせる場所として好意的に受け止める女性も多いです。」


(そっ、そうなのか!確かにこいつは結構遊んでるからな。

 そのあたりの発言には説得力がある!)


「肉が好き、食べるのが好きという女性にとっては、美味しい焼肉は好印象ですよ。」


(ほぉほぉ。)


「個室ですし、肉を焼く共同作業が会話のきっかけになります。

 周りを気にせずに楽しい会話に繋がりやすいです。」


(なるほど!)


「自分が食べたいものや量を調整しやすいですしね。

 なにより、中将の気配り、優しさを示すにはちょうどいいです!」


「ほぉ。そうなのか?」


「はい、でも、とても高度なテクニックが必要です。

 練習はした方がいいですね。」


「レイヴ、今から行くぞ。好きなだけ奢ってやる。

 お前の知る、雰囲気がよくて、一番高くて、そして美味い店にいくぞ!」


「あーはい、ごちになります。行きましょうか。

 何回でも付き合いますよ。

 女の子も連れて行きますか?」


「馬鹿っ!要らん!」


(焼肉と決まった以上、くよくよするな。

 戦場が決まれば、そこで最高のパフォーマンスを出すのが軍人だ。

 訓練あるのみ!レイヴがいてくれて良かった。)


それから、毎日レイヴは焼肉に付き合わされて、しばらく肉は食べたくない状態になったという。

その代わり、妥協のない優秀な軍人であるフクオカは、最高の焼肉スキルを手に入れた。


・・・

・・


ハナとフクオカの焼肉デートは成功したと言えた。

レイヴ直伝の焼肉スキルはハナを満足させて、いつも以上に楽しそうにハナと会話が出来た。


「いやー。他人のお金で食べる焼肉はホント、美味しいんだよ。」


ハナが冗談を言った。楽しんでくれている証拠だ。


「あっそうだ!今度は私が何か奢ってあげるよ?

 そうしたらね、きっとフクオカ君もこの気持ちが分かる!


(え?あぁ!?

 これは冗談の続きか?それともお誘いか?!

 おい、レイヴ!?

 この状況はシミュレートにないぞ!

 いや、臨機応変に動け!これは願ってもない!

 僕の方から誘うにはどんな理由付けしようかと、今もまだ悩んでいたはずだ。

 それがハナさんの方から?!

 千載一遇の好機!

 ここを見逃すようでは、将とは言えん!)


「あっ、そうですね。では、よろしくお願いします。」


(しまった……。もう少し嬉しそうにした方が良かったか?

 しかし、これが冗談だったら変な空気になってしまうからな。

 今ので正解のはずだ。)


「あぁ、楽しみにしていて。」


(よかった。普通に受け入れられた。

 これは2回目のデートの約束ということで良いんだな?

 レイヴにメールで確認したい……したいしたい……。)


「フクオカ君、今日はありがとう。とても楽しかった。」


「フクオカさんにこんなに喜んでもらえて、僕もとても楽しかったです。」


(あ……、そうか。この時間は永遠ではないんだ。

 もう時間だ。いや、まだ終わっていない。

 最後までフクオカさんの期待に添えるように振舞わねば!)


「では、お送りしますね。駐車場が遠くてすみません。」


「大丈夫、行こうか。」


夜の繁華街、恋人たちの姿のちらほら見える。

手を握って幸せそうだ。


(羨ましい……。)


フクオカはその気持ちが抑えきれなくなって、つい反射的にハナの手を握ってしまった。


(あっ!?しまった!?

 つい、のぼせ上ってしまった。

 いきなり手を握られてハナさんも困惑するじゃないか!

 恥ずかしくて顔を見れない)


「すみません、失礼します。ここは人通りが多く、道が複雑で。

 初見だと迷子になりやすいんです。」


(馬鹿か!僕は何を言ってる。)


なんとも言えない時間が流れた。そして駐車場について手を放した。


(待て、すぐに振り返るな。顔が赤くなっているかもしれない。

 落ち着け。落ち着け。ジソリアンが1匹…ジソリアンが2匹…)


そして振り返る。


「駐車場に着きました。」


ハナを乗車させ、帰路につく。


そしてハナを送り届けた後、簡単な挨拶をして別れた。


(今日は―――最高の一日だった!)


・・・

・・


「中将、どうでした?」


「あぁ、レイヴ、ありがとう。お前のおかげで上手くいった。」


「良かったですね。」


「次のデートも約束できた。いつになるかはまだ未定だが。」


「おぉ!では次も頑張りましょう!

 ですが、次は気を付けてください。」


「気を付ける?何をだ?」


「これは僕の勘ですが。次はきっと、もっと攻めてきますよ。」


「どういう意味だ?」


「もう!なんでわからないんですか!

 ハナ提督は絶対中将のことをよく想ってくれています。

 だから、その……もうちょっと進展するって言いたいんです。

 もっと生々しく伝えたほうがよいですか?」


「ば、ばか!何を言っている!そんなことはない。

 変な事を言うな!」


「はいはい。あちらにはエルミナ参謀長が付いているんですよね?

 今日、休憩所で見かけましたが、何か企んでそうですよ?」


「はぁ、あいつはなぁ。ありえそうで怖い。

 ハナさんを悪い方向に引っ張っていかないか心配だよ。」


「まぁ、良い方向かもしれませんよ?」


「……。」


「とにかく、こちらも準備と覚悟と戦略は持っておきましょう。

 どんな状況にも咄嗟に判断できるようにするのが我々軍人の務めです。」


「あ、あぁ。」


「ところで、いつも中将の口からエルミナ参謀長の話が出てきて、ものすごく興味があるんです。

 今度、紹介してもらえませんか?」


「あ?別に構わんがやめておけ。あいつは良い奴だが、ちょっとヤバイ。

 下手に近づくと、食い散らかされて、骨も残らんぞ?」


「へぇ?面白いですね。益々興味が湧いてきました。

 もうちょっと修行するので、後で絶対、紹介してくださいね?」


「まぁ、別にいいが。」


・・・

・・


ハナとフクオカ、エルミナの3人が、視察として停泊中の第7艦隊の各所を練り歩いている。


第7艦隊はとても練度が高い。これはハナが人命第一で作戦を実行するため、それだけ戦死者が少ない。

そして、生き残った者は戦場で鍛え上げられて歴戦の兵士となる。


それもあって、”黒光る甲殻”艦隊を倒し、彼らから尊称として”零七の刃羽”の二つ名をハナは与えられた。


これは名誉なのか、今後狙われるという呪いなのか判断が付きづらい所ではある。


「あっそうだ、面白いことを思いつきました。」


エルミナが良からぬことを思いついた顔をして、ハナとフクオカに提案した。


「フクオカ。

 一回、あれで、”零七の刃羽”に挑戦してみなよ。

 訓練は大事だよ、我々指揮官にとってもね。」


エルミナは戦術研究室にある大規模戦術シミュレータを指さした。


(戦術シミュレーションか。

 ハナさんに近づき、横に並ぶためには、今どれほどの立ち位置にいるか知るのも悪くない。)


「……面白そうですね。戦術シミュレーション対戦ですか?

 士官学校以来です。

 提督に稽古をつけていただけるなんて、夢のようです。」


「零七の刃羽に挑む設定でフクオカが攻めのジソリアン、ハナさんが防衛でいい?戦力は五分設定にするよ。」


「私は良いんだけど、防衛の方が有利よ?」


(望むところ!僕は不利な状況でも必ずハナさんに追い付いてみせる!)


「僕はその設定で構いません。」


「おっけー。じゃあ、私がゲームマスターになるから。

 あっそうそう。普通にやっても面白くないからさ。条件つけるよ。

 勝った方は、負けた方に何でも1個だけお願いをきかせることが出来る!」


(ま、待て!? 相変わらず無茶なこと言う!

 いや、違う。これはチャンスだ。僕の望みは一つ。

 僕がハナさんに想いを告げるにはこれを利用して時間を稼ぐしかない!)


「え?……ぼっ僕はそれで構いません。提督が良ければその賭けに乗ります。」


「いいわ。」


「フクオカ君、ゲームとは言え、やるからには本気を出すわよ。」


「もちろん、僕もです。提督、そう簡単には負けませんよ。」


二人は小さな個室になっている戦術シミュレーションボックスに座る。

扉が閉まり、前方と左右の大モニタに様々な情報が表示された。

それはまるで指令室で実際に指揮をとるように。


そして激戦が繰り広げられる。


(やはりハナさん、有利な立場に立てない。

 そしてこのままだと艦隊戦に持ち込まれる。

 そうなればハナさんに勝てる気がしない。

 待て…負ける訳にはいかないのだ。

 軍人なら覚悟しろ。どんな卑怯な手を使っても。)


フクオカの目が真剣になる。


(どんな卑怯な手を使っても勝つ!)


フクオカも非凡な男であるが、まだハナの方が一枚上手のようだった。

なんとか接戦に持ち込むのが精一杯だ。


遂にタイムアップが訪れた。


ハナ:192,226Pt  フクオカ:194,332Pt


「え?負けた?うそ?」


(あぁ、そうだ。僕はハナさんが優しいのを利用して卑怯な手で勝利を収めた。)


「すみません、どうしても勝ちたくて。卑怯で、フクオカ提督に嫌われそうな作戦ですが。」


「でも負けは負けね。さすがフクオカ君。何が欲しいの?

 どうせ、コーヒー奢ってくださいとかでしょ?」


「ちっ、違いますよ。せっかく勝てたんですし。

 でも少し考えます。保留で良いですか?」


「あ、うん。保留でいいけど。」


(これは、僕の最終の切り札だ。大事に使わせてもらう!)

【あとがき】

挿絵(By みてみん)


作者子です。

まさかのフクオカサイドにも恋参謀が現れました。

しかも、この人も超ハイスぺ。エルミナとの接近も匂わせ。


悶えそうですね!(笑)


はい、引き続き、答え合わせです。


この答え合わせ、滅茶苦茶書くの難しいのです。

投げ出したくなりそうです。


でも、頑張ります!これこそが、二人の恋の真髄なので!


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