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ハナちゃんのポンコツの恋  作者: ひろの
第二部 零七の奇跡

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第20話 奇跡

「ちょっと待って!今、何て言った!?」


「え?はい、フクオカ中将とヴァルク中将にご報告するようにと。」


「フクオカ中将とエルミナ中将が生きているの?」


「は?はい、もちろんです。特に戦闘は発生しておりません。」


「どういうこと?」


兵士とハナの会話は全くかみ合っていない。


「はい、提督が消失なされてからはまだ1日と経っておりません。

 その間、艦隊は待機して捜索をしておりましたので戦場には移動しておりません。」


「もー!全くわからない!早く二人を呼んで!!」


「え…はっ!直ちに!」


・・・

・・


先行して乗りこんできた軍医によるメディカルチェックを実施して、全く問題ないことが確認されてハナ達もひとまずホッとした。


そこへフクオカ達の軍用ビークルが到着・接舷した通知がモニタに表示された。


「みんな下がって。3人だけにしてほしいの。」


「は!」


先に乗り込んできたクルー達が退室していった。

それと入れ替わるように人影が現れる。


「ハナちゃん!無事でよかった!!ものすごく心配したんだから!!」


いつものエルミナだ。懐かしいエルミナの声だ。

ハナは駆け寄ってエルミナに力強く抱きついた。


「エルミナぁ………。エルミナぁぁぁ!!!」


「え?ハナちゃん??」


最初混乱したエルミナだったが、すぐに優しく抱き返して頭を撫でた。


「よっぽど怖い目にあったんだね、もう大丈夫だよ。」


ハナはエルミナの胸の中で大泣きしていた。


「ハナちゃん、鼻水が私の服に付いてるよ、もう。汚いなぁ……。」


そう言いつつも、泣き続けるハナを見て優しく頭を撫で続けた。


「クリーニング代高いからね。

 ね、それよりもハナちゃん、本命が待ってるよ?」


少し顔を上げて奥を見るとフクオカ君が安堵した表情で立ち尽くしていた。

ハナはすぐにまたエルミナの胸に顔をうずめた。


「ううん、いいの。まずはエルミナ成分の補充が先。」


「あはは……エルミナ成分って何よ?

 おーい、フクオカ、お前がハナちゃんを雑に扱うから、ハナちゃん、変な性癖に目覚めたみたいだぞ?

 先に私がハナちゃんに告白しちゃっていいかー?」


驚いた顔をしたフクオカに意地悪な笑みを向ける……いつものエルミナだ。

やはりエルミナ本人が生き返ってここにいる。

この奇跡の喜びが、ハナの心を満たした。


しばらくエルミナを堪能したハナは、ゆっくりとエルミナから離れて涙と鼻水を拭いてフクオカに顔を向けた。


再び涙が溢れだして、そのままフクオカに飛びついた。

エルミナの時と同様に泣きながらきつく抱きしめた。


フクオカもゆっくりとハナの腰に手を回した。

奥手なフクオカもエルミナに見せつけられて悔しかったのだろう。


「フクオカ君が無事でよかった。」


「それはこちらのセリフです。提督、ご無事で本当に良かった。」


「……夢じゃないよね?」


ゆっくりと離れてじっとフクオカの顔を見つめた。

フクオカの方が恥ずかしくなって目を背けそうになる。


「ちょっとごめんね。」


そういうと思いっきりフクオカの頬にビンタした。


ぴたーん!


「ん!?」


フクオカが少し呻く。


「エルミナ~!!痛くない、これ夢だぁ!!」


「提督、大丈夫、夢じゃないです。僕は痛かったですから。」


「あははははは……。ハナちゃん、そういう時は自分の頬でもつねりなよ。」


「ふふ……ふふふふ」


ようやくハナにも笑顔が戻った。


(私を置いて勝手に死んじゃうフクオカ君にはもう一発ビンタしてやりたいくらい!

 でも……。

 でも本当によかった。奇跡!!

 神様って本当にいるんだ。)


「エルミナ、もうちょっと状況を詳しく聞かせて。」


そういうとフクオカからさっと離れてエルミナに近づいていった。


「あら?やけにあっさりしてますが、良いんですか?

 そんなに嬉しかったんなら、どさくさに紛れてキスでもしておけばよかったのに。」


わかりやすく二人して赤面する。


「し、しない!いいの!フクオカ君成分はこれから時間かけてゆっくり充電するから!」


「そうですか。わかりました。」


返答しつつ、エルミナがフクオカの方を覗き見た。分かりやすくショックを受けている。


「私の指令室に行こう。状況を教えて。」


「はい。」


ハナに付き従い、エルミナも退船しようとした。フクオカとすれ違い際に。


「ふふ、まぁ、こんなもんだ。

 友達以上恋人未満なお前では、親友である私の足元にも及ばないってことだよ。

 早く追い付いてみな。」


鼻水のついたジャケットを指さしながら、ドヤ顔でつぶやいた。

悔しそうにフクオカがエルミナをこついた。


・・・

・・


二人からの状況をまとめるとこうだ。


今はコロンニャ星系の隣のニャグネム星系。これからコロンニャ星系へと向かう直前にハナが消失した。


ここで分かったことが一つ。この状況はかつてハナが体験した世界と全く変わらない事実と時間軸で動いている。その世界に、狩宴を体験し、フクオカとエルミナを失ったことを知るハナがいる。


仮説が一つ立てられる。


ハナは宇宙の裂け目によってタイムリープした。それも都合よく、狩宴直前にだ。


ハナがこの世界に現れた影響で、元から居たハナが消失した。

いや、正確には消失ではない。統合だ。


なぜならハナには狩宴の結果の記憶と、半年ほど前であるにも関わらず、この世界の昨日の記憶が、本当に昨日のようにはっきりと覚えている。


未来のハナがここに立っているのではなく、この世界のハナに未来のハナの記憶が統合されたとみるべきだろう。統合されたハナの存在は、宇宙の裂け目の入り口に転移した。

フクオカ達から見たら消失としか言えないだろう。


宇宙のアノマリー、人知の及ばない不思議な現象。

だが、この奇跡はハナにとって”希望”という言葉以外に当てはめようがなかった。


「だいたい現在の状況は掴めたわ。

 当初の予定通りコロンニャ星系の救援に向かう直前に私が消えた。

 なるほど。」


「はい、捜索のため、1日程度予定が狂ってしまいましたが、いつでも出発できます。」


「フクオカ君、エルミナ。『ジジキシ』の真の意味を伝えるわ。」


「ハナちゃんも独自で調査をしていたの?」


「えぇ。『ジジキシ』とは、私達、ニャーンには存在しない文化概念だから

 それに近い『敵』という翻訳がされていたの。

 実際は、『祭』、『生贄』、『名誉』、『強敵』、『狩』、これらの言葉を足して平均を取ったようなニュアンス、無理やり訳すなら『狩宴しゅえん』」


「そっそれって単に私達を殺すためだけに、こんな大規模な戦役を起こしたっていうの?」


「そう。彼らには親兄弟、そして愛すらないの。卵からかえった時には兵士か労働者。

 彼らにとっては復讐という概念すらない。

 これは彼らの名誉を満たすための戦いの儀式。」


「馬鹿らしい。これを司令部に伝えて援軍を待ちましょう。」


(いえ、だめ。それだったら、またいつジジキシで狙われるか分からない。

 彼らにとっては私は供物そのもの。

 今、全ての未来を知る絶対的有利なこの状況を利用して、この因果を断ち切るのが最善!)


「いえ、行きます。私は彼らの策略を全て見抜きました。必ず勝ちます!」


「しかし、危険では?」


「はい、もちろん危険です。だから二人には一つ約束してほしいのです。」


「はい、何ですか?」

「何?」


「この戦い、最初から最後まで何一つ私に逆らわず、疑わず、妄信してほしいの。」


「ど、どういうこと?そんな約束しなくても私達はハナちゃんを信頼しているよ?」


「いえ、この戦い、私は常道ではない戦術を取る。

 だから私の戦術に疑いを持ちたくなることもあるかもしれない。

 でも、一切私を疑わず信じて欲しいの。

 どんなことがあっても、私の言うことを聞いてほしいの!」


「分かりました、約束します。」

「分かった、約束する。」


「ありがとう。じゃあ、予定より1日遅れだけどコロンニャ星系に向けて発進する。」


「は!」


「……。その前にフクオカ君、私をぎゅっと抱き締めて勇気を与えて!」


「ぷっ……。ハナちゃん、どさくさに紛れて……あははは。」


(ちっ・・・さすがにダメか。せっかく何でも言うこと聞く流れだったのに。)


フクオカがそっと近づくとハナを優しく、そしてしっかりと抱き締めた。


(はぎゃ!? フフフフ……フクオカ君!?)


「提督、試しておられるんですよね?僕はさっきの約束を破りません。

 提督の指示には絶対に従います。」


(けっ結局……指示?!あぁ……でも幸せ。奇跡……。)


ハナがうっとりしているのを、エルミナが楽しそうに見つめている。


(よし!奇跡ついでに、未来、変えてやるんだから!!)

【あとがき】

『タイトル:提督の「奇跡の再会」と「未来改変」日誌』


生きてたぁぁぁ!フクオカ君とエルミナ成分、超特盛充電完了!


ハナです!宇宙の裂け目に身を投じ、絶望の淵にいた私に、神様は最高の贈り物をくれました!


まさかのタイムリープ(記憶統合)!フクオカ君もエルミナも、あの狩宴で失ったはずの二人が、階級もそのままで生きてる!


エルミナに飛びついて大泣きし、鼻水をベッタリつけて(ごめん、エルミナ!クリーニング代は出す!)、そしてフクオカ君の頬に愛のビンタをくれてやりました!夢じゃない!生きてる!痛い!


そして、私は未来の記憶を持つ存在として、この世界のすべてを知っています。


敵の策略:「狩宴」の真実


第7艦隊の敗因:退却を選択せざるを得ない状況


フクオカ君とエルミナの最期:私を守るための犠牲


もう二度と、あんな悲劇は繰り返させない! 私はフクオカ君とエルミナに「最初から最後まで、私に逆らわず、一切疑わず、妄信してほしい」という絶対服従を約束させました。


(最後にフクオカ君に抱きしめてもらったら、「提督の指示には絶対に従います」って言われちゃいましたけど!...まぁ、指示でも幸せ!これが奇跡!)


よし!奇跡ついでに、未来改変しちゃうわよ!!! あの「狩宴」の罠を、今度は私たちが仕掛ける「逆・狩宴」にして、フクオカ君とエルミナ、そして第7艦隊全員を連れて、絶対に生きて帰ります!


これ、ちなみにですが、女性読者は、ハナがフクオカよりも、エルミナとの再会を最も喜んだことに、共感していただけると思います。

男性読者は不思議に思うんでしょうね。ラブストーリーで恋人無視するの??って。


完結に向けて疾走、毎日 朝8時更新です!


ご感想、スタンプ、**ハナが最初に命じる「常道ではない戦術」予想、そしてフクオカ君の「願い」**はどこへ行ったのか、など、どんな些細なものでも大歓迎です! もしよろしければ、評価やブクマをお願い致します。 レッツログイン、ボタンぽんっ!


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