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ハナちゃんのポンコツの恋  作者: ひろの
第一部 ポンコツのフクオカ

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10/31

第10話 訓練も日常業務の一つです

ハナとフクオカ、エルミナの3人が、視察として停泊中の第7艦隊の各所を練り歩いている。


「練度は悪くないわね。」


歩きながら、ハナがぼそっと呟いた。

後ろで何かしらのメモをしながらエルミナが続ける。


「はい、この艦隊は人的被害が比較的少ないため、新兵の投入も少なく、練度はむしろ古参が戦場で培った実戦技術によるものと言えます。」


フクオカ中将もそれに続けて話す。


「これもフクオカ提督の人命優先の采配のおかげですよ。

 さすがとしか言いようがありません。」


(ちょっと、みんな褒めすぎっ!そして3回目のさすがをゲット~!)


「みんな頼もしいわ。第7艦隊が活躍できるのも、私の采配ではなく、みんなの努力のおかげよ。」


「御謙遜を。提督の名声は神聖帝国外にも轟いてるみたいですよ?」


(やだやだ。フクオカ君に褒められると天狗になるよ?)


「え?そうなの?知らなかった。」


ジソリアンに対して諜報活動中のエルミナが付け加えた。


「はい、ジソリアンの中では、ハナさんの”二つ名”がついてるみたいです。

 よほど名将クル=ポクを討ち取ったのが大きかったみたいですね。

 ジソリアンは戦闘民族なので強さには尊厳があると言いますし。」


「で……聞くの怖いんだけどなんて呼ばれてるの?あいつらセンス悪そうで。」


「『零七ぜろななの刃羽』と呼ばれてるようです。」


「ン……普通だった。よかった。」


「ジソリアンの感性では刃は攻撃性、羽は俊敏性を表しています。

 最大の敬意が含まれていますね。

 でも、このせいで賞金首みたいに次からジソリアンに狙われたりして。」


エルミナが冗談っぽく茶化す。


「やめてよ。虫なんかにモテたくないわ。」


「しかし、フクオカ提督にぴったりの尊称ですね。」


「もう!フクオカ君、やめてよぉ……ん、こほんっ。

 慢心は良くない。」


思わずデレデレの心の声が表に出てしまって急に取り繕った。

またエルミナが笑いを堪えている。


「あっそうだ、面白いことを思いつきました。」


エルミナが良からぬことを思いついた顔をした。

ハナが少し顔をゆがめる。


「フクオカ。

 一回、あれで、”零七の刃羽”に挑戦してみなよ。

 訓練は大事だよ、我々指揮官にとってもね。」


エルミナは戦術研究室にある大規模戦術シミュレータを指さした。


「……面白そうですね。戦術シミュレーション対戦ですか?

 士官学校以来です。

 提督に稽古をつけていただけるなんて、夢のようです。」


(え?ええ?フクオカ君と対戦するの?やだぁ。手抜いちゃうよ、私。)


「零七の刃羽に挑む設定でフクオカが攻めのジソリアン、ハナさんが防衛でいい?戦力は五分設定にするよ。」


「私は良いんだけど、防衛の方が有利よ?」


「僕はその設定で構いません。」


「おっけー。じゃあ、私がゲームマスターになるから。

 あっそうそう。普通にやっても面白くないからさ。条件つけるよ。」


「条件?」


「勝った方は、負けた方に何でも1個だけお願いをきかせることが出来る!」


(え?!)


「え?……ぼっ僕はそれで構いません。提督が良ければその賭けに乗ります。」


(な・・・何でも?あれ?何?急にフクオカ君、目が本気になったけど。

 まさか、私にしてほしいことでもあるの?!)


「いいわ。」


(まさか…あーん、フクオカ君ったら、もう。

 フクオカ君が望むなら私の初チューくらい、別にあげるけどぉ!)


「ハナさん、何、身をよじって、悶えてるんですか?」


「あ…違うわよ!準備運動よ!」


(いや、待て待て、騙されるな!フクオカ君のことだ。

 多分、ポンコツだから何も考えてない!

 フクオカ君が勝った場合、

 『コーヒー奢ってください』

 とか、くだらないことを言いかねない。

 チューを勝ち取るためには私が勝って、要求するしかないっ!)


「おっ……。ハナさんもフクオカもやる気になったみたいね。いいぞいいぞ。

 じゃ乗り込んで!設定を入力するわ。」


「フクオカ君、ゲームとは言え、やるからには本気を出すわよ。」


「もちろん、僕もです。提督、そう簡単には負けませんよ。」


二人は小さな個室になっている戦術シミュレーションボックスに座る。

扉が閉まり、前方と左右の大モニタに様々な情報が表示された。

それはまるで指令室で実際に指揮をとるように。


「二人とも、準備はいい?設定は入力済み。今から5分の時間を与えます。

 各種情報を確認して、自己戦力を把握してください。」


ハナとフクオカは、それぞれの操作パネルを、素早く叩きながら視線を素早く動かし、各種情報を把握していった。この5分の間に自己戦力やその初期配置、各種装備や、宙域情報を把握しないといけない。


「5分経過!GO Fight!!」


エルミナが叫ぶ!

ハナとフクオカが真剣な表情で、それぞれのパネルから指示を出していく。

指示と同時にリアルタイムで周囲の状況が動いていく。


エルミナはその戦術画面を外のモニタにも投影した。

上級士官達が集まってきて、このトップ同士の戦術ゲームにくぎ付けになった。


二人とも、相手の索敵に専念しつつ、自軍の配置を組み立てていく。


(戦力は、ほぼ互角。本来ならば防衛側が圧倒的に有利。

 私が本気で守りに徹したら、例えフクオカ君が相手でも要塞が落とされることはない!)


ハナはフクオカの動きを探りつつも、少しずつ守りを固めていく。

その間にも状況は刻一刻と動く。ハナは別の操作盤を操り、モニタに追加情報を示す。


(防衛側は有利とはいえ、こちらは民間人を抱えている。

 フクオカ君はジソリアンの設定。民間人の襲撃や略奪でもポイントは入る。 

 これはあくまで対戦ゲームだ。防衛だけが勝利じゃない!

 すなわち、亀のように甲羅に閉じこもっていては、私が負ける)


ハナの瞳は本気そのものだ。“何でも願いをきかせる券”が賭けられていなければ、ここまで熱くならなかっただろう。


「フクオカ君はどう出る?

 正義感が強いから、民間人を襲わないかもしれない。

 いや、襲うと見せかけることくらいはするだろう。

 私は民間人を守る必要がある。民間人を餌に敵を誘い出す指揮官もいる。

 フクオカ君は私がそんなことをしないと思うはず。

 ゲームとは言え、民間人が襲われるのはいい気分じゃないっ!」


「あっはっはー!!!甘いぞ、フクオカ君!!

 チューは絶対に譲らんっ!!」


思わず叫んだハナ、外にも漏れ聞こえる。


「ちゅう?提督はなんて言った?」


「チューって言ったような?」


エルミナが「あんのバカっ」とでも言わん顔で取り繕った。


「宙域は譲らんって言ったんだと思う。」


「あー、なるほど。提督は本気なんですね。」


(この際、民間人を囮にする。私の本気を見ろ!)


フクオカの攻撃により、民間ステーションが次々と襲撃されてフクオカ側にポイントが蓄積されていった。その間もハナはフクオカ側の動きを見つめ、その場所をマーキングしていった。

そのパターンからハナは二手三手先まで予測する。


(やっぱりだ!フクオカ君は本気で民間人を狙う気がない。紳士っ!好き!!

 じゃなくて、あの襲撃が陽動となると、ここだ!本隊はここにいる!)


ハナが突き止めた場所に、全戦力を投入するとそこに予想通りフクオカの主力が存在した。

ついに両者が正面衝突する。


艦隊戦になってからは両者譲らず熾烈に争った。

だが、徐々にハナが押し始める。


(チュー!チューは勝ち取るっ!)


執念のハナ。


だが、フクオカも決して凡将ではない。巧みにハナの攻撃をかわしつつ、接戦に持ち込んだ。

むしろハナの癖をこれでもかと理解していて、なかなか攻めづらい。


遂にタイムアップが訪れた。


(よし、絶対に勝った!最後はほぼ互角の戦いになったけど、こっちがわずかに押し勝ったはず。)


二人は汗をかきながらも、シミュレーションボックスから出てきて点数を見る。


ハナ:192,226Pt  フクオカ:194,332Pt


「え?負けた?うそ?」


エルミナが説明する。


「ハナさん、艦隊戦では優勢でしたが、フクオカは常に裏で民間人の襲撃と略奪でPtを稼いでいましたよ。」


「え?」


「すみません、どうしても勝ちたくて。卑怯で、フクオカ提督に嫌われそうな作戦ですが。」


(えー……なんでそんなに勝ちたいのよ。コーヒー一杯でさぁ)


「あっそうなの。でも負けは負けね。さすがフクオカ君。で、何が欲しいの?買ってくるけど。」


「え?」


「どうせ、コーヒー奢ってくださいとかでしょ?」


「ちっ、違いますよ。せっかく勝てたんですし。でも少し考えます。保留で良いですか?」


「あ、うん。保留でいいけど。」


(やだぁ!

 次のデートで二人きりになったら、チュー要求する気なんじゃないの!?

 それか、『名前で呼んでいい?』とか??

 ウェールカム!ウェルカム!)


「あ……提督?顔が歪んでますが、大丈夫ですか?」


「あ、いえ、久しぶりの対戦で疲れたわ。今日は良い訓練になった!」


そういうと、ハナとフクオカは、視察を再開した。


「……保留??」


エルミナがぼそっと呟いたあと、二人の後を追った。

【あとがき】

『タイトル:提督の妄想爆発日誌』


「チューは絶対に譲らん!」(...って言っちゃった!)


ハナです!見てください、この私!フクオカ君との戦術シミュレーション対決で、まさかの大敗を喫しました!


勝負の賭けは「何でも願いを一つ叶える券」!

私は「フクオカ君との初チュー券」を狙って、訓練中にもかかわらず「チューは絶対に譲らん!」と叫んでしまう始末...。(外に漏れてたって、どうしよう!)


私が「愛の力」で猛攻をかけたにもかかわらず、フクオカ君は「民間人襲撃」という卑怯な手でポイントを稼ぎ、勝利を収めました!(そんなに勝ちたかっただなんて。フクオカ君のあんな必死なの初めて見た!)


しかも、勝利の報酬を「保留」にしたんです!


(まさか、次のデートで二人きりになったとき…チューしてほしいとか、名前で呼んでもいいですか?とか言い出すつもり!?)


フクオカ君の天然なのか策士なのか分からない行動に、私の妄想は宇宙をさまよっています!


これで、次のデートの緊張感はMAX!

フクオカ君の「願い」とは一体何なのか?そして、ハナ大将は、その願いを叶えてあげられるのか?


毎週日曜日 朝8時更新!


ご感想、スタンプ、フクオカ君が願いを「保留」にした本当の理由予想など、どんな些細なものでも大歓迎です!

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(ひろの)



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― 新着の感想 ―
ハナちゃんに会いたくて戻ってきましたw お漏らしハナちゃんかわいいですねw 勝負に専念すると言いながらもかなり雑念が混じっていたような…… さて保留になった件、このあと何かイベントが待ち受けていそ…
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