さようなら
「ここにある魔道具は、私が作った物がほとんど。このポットは魔石を入れれば水がいっぱいになる。ナタリアが安心して飲めるように作った。このコンロは、ナタリアの食べるものは、毒見をするため、いつも冷めてしまうから、温めるために。この筆で書いたものは、特定の相手にしか見えないようになっている。あとは、、」
この人は、本当にナタリアさんを愛していたんだなあ。気持ちは伝えたんだろうか?ナタリアさんは気付いていたのかなあ、いまさらどうしようもないけれど、、、
その後も色々説明してくれた。
貧乏症の私は、全部欲しいけど、
「欲しいけど、こんなに入らないと思う。残念。」
「君のその黒い袋は、アイテムボックスになっているようだから入るだろう。」
「アイテムボックスってなに?」
「まあ、大きな袋みたいなものだ。もしあまり入らないなら、マジックバックもある。試しに入れてみればいい。」
私は、コンロをリュックに入れてみた。コンロはスーと吸い込まれた。
「ワワワ、凄い、凄い、入った。じゃ、いっぱい下さい。」
私は、次、次と、リュックに入れていった。魔法も教えてもらい、随分時間が経った頃、
「もう、夜も遅い。ここまでにしよう。無事にガタールに行くことを願っているよ。マイク、彼女を目立たない部屋に送ってくれ。」
アンドレアが ドアの方に向かって呼び掛けた。そこには、180cm以上ある長身の若い男性騎士が立っていた。
今まで気づかなかった。短髪で金髪、緑の瞳だ。モテまくっていそうだ。
「じゃ、ここでお別れだ。さようなら。」
アンドレアは、優しく笑ってくれた。
明日にはいなくなってしまう人に何が言えるだろう、数時間前に初めて会った人なのに、もう会えなくなると思うと悲しくなった。
私はただ感謝していることを伝えたかった。
「本当に色々、ありがとうございました。絶対にガタールに行きます。
そして、さようなら。」
泣きそうになったから私は、急いで部屋を出た。
直ぐに騎士が出てきて、
「こっちだ」と言って早足で行ってしまった。私は、見失なわないように急いで後について行った。
騎士に案内された部屋は、本当に狭かった。使用人の部屋なんだろう、4畳ぐらいの広さで、ベットと、机と、小さな窓があるだけだった。ランプがひとつあるだけで、部屋の中は、薄暗い。
私は、荷物を机に置き、ベットに横になった。硬い。板がそのままでマットはなかった。利用価値がないと、扱いはこんなものなんだなあ、誰も部屋に来なかった。
疲れていたのか、いつの間にか寝てしまった。目が覚めて、一瞬ここが何処か分からなかった。ああ、夢じゃなかたっんだ。何だか泣けてきた。一度涙が流れると、止まらなくなった。まあいっか、誰もいないし、私はそれから暫く号泣した。泣いたらスッキリしたのか、お腹が空いてきた。買い物袋から食パンと、バターと、苺ジャムを取り出した。
ああ、手を洗いたい。部屋から出て手洗い場を探して迷子になるのも困るなあ、どうしよう?何気なく手の平を見ていたら、キレイになった気がした。む?、何で?あ!クリーンか!
何かスキルが付いてるって言ってたなあ。これかあ。凄い、嬉しい。どんなスキルより一番嬉しい。
汚れたままでずっといるなんて耐えられない、良かった。落ち込んでた気持ちが少し、復活した。バターと、ジャムをたっぷり塗ったパンを食べながら、珈琲が飲みたくなってきた。インスタントがあったから取り出した。
お湯をどうしよう?あ!さっき貰ったポットと、コンロを使ってみよう!
本当に水が出てきて、コンロで沸かせられた。凄い。それに使いやすい。アンドレアがどんだけナタリアを想っていたのか伝わってきた。使う人のことを考えて工夫がしてある。優しさで溢れているのに、誰も幸せになっていない。何だか、痛ましい気持ちになった。
無事に珈琲が出来た。飲んでみると美味しい。ホッとした。お腹が満腹になると気持ちに余裕がでてきた。
いっぱい買い物していて良かったな。
窓から外を見ると、少し明るくなってきた。ヤバい、早く出掛けないと!
全部をリュックにしまって、部屋を出た。何人かメイドみたいな人に出会ったけど、誰も私のことを気にしなかった。城門まで行くと、兵士が二人いた。
「何だお前、どこに行くんだ!」と、聞いてきた。
「邪魔だから出ていけと言われたんで出ていきます。」そう言えば逃がしてくれると思ったが、
兵士は、不審者扱いしてくる。
まずいなあ…ここで止められるなんて…
「そいつは、行かせろ!」
後ろから男の声がした。
振り向くと、昨日部屋に案内してくれた人がいた。普段着を着ている。
「マイクカイザーさん!でも、こいつ変なカッコしてるし、怪しいです。」
うあ┅その通り、怪しいです。これは無理かな、と思ったら、
「俺が調べた。問題ない。」
マイクカイザーさんは、そう言うと、私を自分の後ろに隠すようにしてくれた。
「でも、┅」
若い兵士は、納得いかない様子だ。
「トニー、そいつらを行かせろ!」
年配の大きな男が、やって来た。
トニーと呼ばれた兵士は、姿勢を正した。
「隊長!」
ええ!隊長!うあ偉い人がやって来た。
「マイクカイザーは、除隊した。もう用はない。」
「除隊、!!どうして」
若い兵士は驚いてカイザーさんを見た。
マイクカイザーさんと隊長は、睨みあっている。
恐い~
マイクカイザーさんは、そのまま何も言わず、私の手を掴み、城門を出た。
城から離れた所で手を離してくれた。
ちょっと痛かった。
「あの、ありがとうございました。
無事に城から出られました。」
私がそう言うと、
マイクカイザーさんは、チラッと私を見て
「別にいい。」と言った。
よく見ると、顔が腫れている。殴られた跡のようだ。除隊したって言ってたなあ。それでかなあ~痛そうだ。
昨日のアンドレアさんの話を聴いたら、もうこの国にいたくないよね。
辞めたんだ。
そんなことより早く街に行かなくちゃ。私はマイクカイザーさんと別れて歩き出した。
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