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この国に相応しい者
「余りにも酷いことが起こると、脳は、誤作動を起こすらしい。私が王子を抱きしめていると、脳が暴走した。
あらゆる知識が、洪水の様に頭の中を駆け巡った。過去と今と未来が、一度に目の前に現れた。そして人の生と死の謎も解けた。
この体は、意識の入れ物でしかないこと。死とは、この意識が、体から離れるだけのことだと。この話は長くなるからここまでにしとくけど、全てを悟ったんだ。ああ、もう、この世に用はない。肉体の死を選ぼうとした時、この国の未来を観てしまった。金を使い果たし困窮した、王妃と宰相は、無いなら、あるところから奪えばいいと。隣国に戦争を仕掛け、逆に滅ぼされるところを。それはいい。しかし、負け戦の下最後の悪足掻きで、異世界から勇者や聖女を召喚し、この世界を大混乱に貶めるんだ。能力の無い者が次元に穴を開け歪ませれば、取り返しが付かない。一度作った魔方陣は使わなければ壊せないんだ。だから、馬鹿な魔術師が、穴を開ける前に、私が使って壊す事にした。この国を助ける者ではなく、この国に相応しい者を召喚することでね。」