訳あり勇者 4話 本来の目的
トリスト『あの、クレドさん』
クレド『んー?』
トリスト『何故私に対してこんなに親切にしてくれるんですか…?』
クレド『…………それはな…』
トリスト『…!!』
急に空気が押し詰まる。クレドはゆっくりとした口調で話した。
クレド『それは…………………』
トリスト『………………!』
クレド『なんとなく』
トリスト『んえぇ!?』
あまりに驚き目を丸くするトリスト。あたりにも緊迫した空気だったので凄くビックリした…
クレド『冗談だっての!そこまで驚くとは思わなかったぜ』
トリスト『はぁ…えぇ…』
クレド『助けを求めてたように見えたから』
トリスト『え?』
クレド『初めてお前を見た時、お前は虚ろな目をしていたからな。なんて言うか…微かに恐怖も感じていたがそれ以前に感情が無かった。本当初めて見たぜ、あんな表情した人間!本当は正直話しかけようか戸惑ったぜ。』
トリスト『そうだったんですね…』
クレド『でもさ…それでも困ってる人間を放って置く事なんて出来ないんだ。だから俺は死んだ目をしたあんたをとりあえず家に連れて行く事にしたんだ。しかも後から聞くとお前記憶を失っていたんだよな……尚更放っておけねぇよなぁ…』
そんな事思っていたんだ…自分の事を心配してくれて、本当に助ける為にした行動だったんだ…気が付くと自分がクレドに抱いた警戒心はすっかり消えていた。
クレド『全く、昔の俺はこんなんじゃなかったんだけどな!……爺ちゃんに似てしまったのかな…おぇ』
トリスト『クレドさんのお爺さんは本当に良い人なんですね!昨日も…私が寝る時、子守唄を歌ってくれて、一瞬で眠る事が出来ました…!』
クレド『あれ?爺ちゃん音痴のはずなんだけどな…まいいや!成長したんだろうな!とりあえず改めて、今日から宜しくな、トリスト』
トリスト『えぇ、こちらこそ宜しくお願いします。クレドさん。そして本当に助けてくれてありがとうございます!』
クレド『ふん、礼は魔王を倒すまで取っておけ〜』
トリスト『』
クレド『ごめん』
家に戻る途中、いつの間にか空が赤くなっていた、かなり時間が経っていたようだ。凄く時間の流れが早く感じたので、少し不思議な気分だ。
クレド『嘘を付く上手さも爺ちゃんに似てしまったのかな………』
トリスト『どうしました?』
クレド『い、いや!?何でもねぇぞ!』
トリスト『なら良いんですけど…』
クレド『さっさと行くぞー!』
トリスト『あ!ちょっと待ってくださいよ!』
やっぱり変な人かも
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クレド『帰ったぜ爺ちゃん』
トリスト『戻りました!』
老人『戻ったか』
家に戻ったクレドとトリスト。しかし家の雰囲気は昨日とは何かと違った。何よりお爺さんが真剣な表情だった。
クレド『…………何かあったのか?』
老人『大都市ミティスに居る国王がお前をお呼びだそうだ』
クレド『何!?』
トリスト『大都市ミス……なんですか??』
クレド『北にある都市の名前だ。ここから凄く遠いんだよ…』
トリスト『なるほど…』
老人『何故急にクレドを…?現在魔族の進行がより多くなっておるのに………』
クレド『今嘆いても仕方が無ぇ。そうと決まれば明日すぐに出発する。トリスト、お前は来なくても大丈夫だぞ。呼ばれたのは俺だしな。』
トリスト『はい、分かりました…』
クレド『じゃ、俺は部屋に戻るから。お疲れ!』
そう言うとクレドは部屋に戻って行った。
老人『お前も今日は疲れただろう。もう休むと良い』
トリスト『あの…一つ質問しても大丈夫ですか?』
老人『どうした、何でも聞きなさい』
トリスト『クレドさんはどうして冒険者になったんですか?』
老人『…………………』
もしかして駄目な質問だったのかな…
老人『もうクレドから聞いたとは思うが、クレドがまだ幼い時、両親が魔族に殺されてしまってな…あの墓2つもクレドの両親の物なんじゃ…』
トリスト『なんて酷い事を………』
老人『あいつは冒険者が格好いいからやりたい!と言っておったが…本当は……復讐だろう…』
あんなに明るい人だったのにこんな過去を背負っていたなんて…
老人『それとクレドの両親を殺した魔族の素性はまだ分かっておらん…』
トリスト『え?』
老人『だがクレドの両親は冒険者では無いが、戦闘能力は決して魔族に劣っていた訳では無かった…つまり戦闘能力はかなり高い魔族だって事だけは分かった』
トリスト『戦闘能力が高い魔族……』
老人『話が長くなってしまったな。夜も遅いしもう休んでおきなさい。』
トリスト『そうします…』
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2日目。クレドは行く途中魔物による死線をかいくぐり、なんとか北の都市ミティスに到着した。
北の国王『久しぶりよのう、タリオニス殿…!?』
クレドは全身に大怪我を負っていた。
クレド『来る途中魔物に襲われたんだ。逃げ切ったから心配はいらねぇよ。…で要件はなんだ!』
北の国王『その前にまずお前の傷の治療からだろうが!少し待ってろ』
[[rb:ラディーレン・カゼン > 消滅する傷跡]]
クレド『…傷が……?』
北の国王『傷が少しずつ消えていくだろう…やっと本題に入れるわ…』
クレド『ありがとな国王、感謝してるぜ』
北の国王『ハイハイドウモ………最近お前の耳にも入っているだろう、魔王は死んでいないと言う噂が』
クレド『知ってるさ、俺の爺ちゃんに教えて貰ったんだ。半信半疑だったがやっぱり事実なのか?』
北の国王『結論から言うとそうだ。魔王と勇者が戦ったと思われる場所を我々が捜索した結果、魔王と思われる角を見つけたんだ。』
クレド『あのな、それも爺ちゃんから聞いたけどよ、普通の魔族にも角があるんだぞ?何故魔王の物だと言い切れるんだ?』
北の国王『まぁまぁそう慌てるな…見つけた角は物凄く強い魔法がかけられていた…』
クレド『その強い魔法ってのは…?』
北の国王『物質の存在を一時的に消す魔法だ、まるで魔族に見つける訳にはいかないと言わんばかりにな…しかし……今は当時より魔法の力は弱まっておる…』
国王は一息ついてからクレドに話した
北の国王『最近魔族による襲撃がますます増していっておる』
クレド『……………まさか』
北の国王『あの例の角にかかっている魔法の力が弱まってから魔族による襲撃が多くなったんだ』