表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/57

悪魔の化身

 闘志を燃やす江真(えま)に対し、伴造(はんぞう)は言う。

「オヌシの話は聞いている。オヌシとて、教徒まで戦いに巻き込みたくはないだろう」

 確かに、江真は多くの人間を争いに巻き込むことを望んでいない。このままでは、彼女は下手に動けない。

「表に出ろ……伴造」

 江真の声色には、怒りが籠っていた。

「良いだろう……ワシが決してオヌシには負けないということを、圧倒的な力を以て分からせてやろう」

 そう受け答えた伴造は、余裕に満ちた笑みを浮かべていた。


 二人は教会を後にし、路上で互いを睨み合う。両者の手には、すでに炎の球体が生み出されている。

「始めようか」

「望むところだ」

「私から仕掛ける!」

 さっそく、江真は眼前の宗教家に向かって炎の弾を連射した。伴造は炎の球体で弾を受け止め、それから光線を放つ。灼熱の炎に身を呑まれた江真は、炎をまとった左腕でそれを払う。その瞬間、彼女のすぐ目の前には伴造の拳が迫っていた。

「……!」

 咄嗟の判断により、江真は両腕で己の顔面を守った。彼女の腕は、眼前から叩き込まれた拳を受け止めた。それから瞬時に跳躍した彼女は、標的の腹部に飛び蹴りをお見舞いしようとする。その蹴りを軽々交わした伴造は不気味に笑い、江真の鳩尾に肘打ちをした。

「ぐはぁっ……!」

 この一撃によって吐血した江真は、地に崩れ落ちる。そんな彼女の目の前には、次の炎の弾が迫っていた。その一撃を転がりながらかわし、江真も炎の弾を連射していく。しかし眼前の老人は、炎を帯びた右手で彼女の攻撃を受け流していく。伴造の自信は、決して驕りなどではない。紛れもなく、彼は強者だ。


 この戦況に追い打ちをかけるように、一つの人影が姿を現す。

「楽しそうだな、伴造。アタシも混ぜてくれよ」

――玲玖(れく)だ。彼女は伴造の隣に立ち、右手に炎をまとい始める。江真一人の力では、この二人に敵う見込みなどないだろう。江真は二人を睨みつけ、おもむろに立ち上がる。

「二人がかりか。だが、これならどうだ!」

 直後、彼女は両手から凄まじい火力の炎を発射した。辺りが煙に包まれる中、彼女は炎を放ち続ける。しかし眼前の二つの人影は、まるで崩れ落ちる気配がない。やがて疲弊した江真が攻撃の手を止めた時、そこには炎の盾で己の身を守っている玲玖たちの姿があった。

「ククク……アタシたちが組めば敵無しだな、伴造」

「オヌシとは、これからも良いビジネスが出来そうだ」

「ああ、アタシたちはネオ――頂点捕食者だからな」

 二人は笑っている。その笑みは、紛れもなく江真を嘲っているものだ。

「驕るな!」

 激高した江真は、二人に殴りかかろうとする。そんな彼女の拳を掴んだ玲玖は、即座にアームロックを仕掛けた。これはただの体術ではない。玲玖の体からは、灼熱の炎が流れ出ている。この技から抜け出す方法は、ただ一つだ。

「次こそは……必ず……!」

 江真は大きな爆発を起こし、隙を生み出した。この瞬間、辺りは再び煙に包まれた。

「見失うな! 伴造!」

「ダメだ……まるで見えない!」

 二人の視界は、煙によって覆い隠された。やがて視界が晴れた時、そこにはもう江真の姿はなかった。

「ちっ……逃したか……」

「二対一では勝ち目がないと、理解したようだな」

 獲物を逃した玲玖と伴造は、各々の拠点へと戻っていった。



 その後、教会に帰ってきた伴造は、教徒たちに新たな教えを吹き込む。

最上江真(もがみえま)は悪魔の化身だ。全力を以て殺害しろ」

 ついに、ケテル教は殺人まで正当化するようになったらしい。騒然とする教徒たちを前に、彼はこう続ける。

「見ただろう! あの女が炎を操っていた様を! だが、あの女は、ワシのような解脱者ではない! 奴の炎は紛れもなく、地獄の炎だ!」

 教徒たちは、伴造を妄信している。彼らはこの日を境に、江真の命を狙うようになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ