優雅な午後
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
も少し博物館と美術館と水族館があれば、良いのですが。
優雅な午後三時。英国の紳士淑女が茶会を楽しむこの時間。喫茶店は紛うことなく混んでいるので、私は公園のベンチに座ってぼんやりとしていた。
青い芝生が何処までも広がるこの公園。春という季節に合わせて、様々な花々が顔を上げる。二羽の白鳥が向かい合わせになって、水を吐き出す。その裏にカントリー風の洋館がちょこんと建っている。
時折日傘を差したご夫人が、緩やかに横切るのを見ながら、私は静かなる午後を楽しんでいた。
「あぁ……もう……暑っついなぁ……」
声がした方に顔を向けると、一人の書生が立っていた。踝近くまでの長髪に、目元を隠す様に伸ばされた前髪、鼻の上にちょこんと乗った黒眼鏡からは、何を考えているのか全く読めない。
書生は暑そうに髪と髪の間に指を入れて、バサバザと掻き回す。
「書生服辞めなさいよ。浴衣でも良いじゃない」
「お忘れかい? 今のところ、僕のアイデンティティなんだけど。それにこれ、一応は夏用ね」
それもそうだ。基本的に彼の服装は書生服。真冬だろうが真夏だろうが、それは変わらなかった。気が向けば服装を変えることも勿論あるのだろうが、今はこの気分らしい。
私はベンチを座り直し、彼を一瞥する。
「端っこの方に行けば噴水があるから涼しいよ。移動する?」
「いいよ。別に。此処だって噴水があるじゃない」
其れはそう。でも動きある水は白鳥の口から吐かれた水のみ。涼をとりたいなら、水全体が動き回る様なものが良いと思った。
けれどもそうしないのは、私に気を使って居るからかも知れない。
「……さっきまでは何も感じなかったんだ。何を食べても何も楽しくない。神社に行っても何も感じない。おぞましい場面を見ても嫌悪感さえ抱かない」
「疲れてるんじゃない? この世は君が思っているほど美しくない。君を苦しめる輩は君が思っている以上に多い」
彼は揶揄う様にそう言って、私の真横に腰掛けた。眺める先には広がる芝生と点在する花々。優雅な西洋式庭園。この世の醜さを忘れさせて暮れる光景だった。
「そうね。でも今は違う。ただこの美しい光景が、私を現実から乖離してくれる」
今日、何頭の揚羽を、何人もの日傘の夫人を見たか分からない。それ程、この光景が似合う世界だった。
「此処は一番ではないけどね。二番目かな。私の趣味の一つ。洋館と庭園が混じった、この絵画のような光景を見ること」
「良い趣味だね」
「そうでしょう?」
書生の彼は、木綿袴に夏浴衣です。暑っつい。
出した理由は同胞だから。
揶揄う様でいて、きっと揶揄ってはいません。
でも皮肉屋なんで、そう思ってもおかしくなさそう。
叙述トリックみたいな感じですかね。
私の一ヶ月の絶頂期は去ったので、何をし出すか分かりません。
問題を起こす前に、色々閉鎖しなくては。
という訳で、暫くは延々と癒しを探す旅に出ようと思います。
そこで見たのがこの話。
何の心も動かないと思っていたんですよ。
そんな事はなく。
『良い』と思う感性は、なけなしながら残っていました。