私についての世間話 ベルナ編 その3
「氷よ飛べ、つららは鋭く、飛んで落ちる……氷の針【イエロ・ハグハ】。」
「っ、黒紫の雷【ネグロビオ・トレーノ】・散!」
私が貫いた氷の城壁を砕いて変換させて、私の方に飛ばしてくる。
大量に飛んできた氷の針、無理矢理魔力を使って振り切るのも考えたが、被弾すればダメージと同時にこちらの動きの阻害もされる。
なので槍を振るって、拡散させる魔法で撃ち落とす。
この手の魔法は弾の一つ一つまではコントロールしていないのを利用して、闇属性の魔力で魔力を浸食し、そこから雷の魔力を拡散させて氷の針を破壊していく。
だが、氷の城壁を使った針の数はそれだけでは落としきれない。
「くっ……!」
くるくると槍をプロペラのように回転させて被弾を防ぎながら雷の魔力で移動していく。
だが、槍に氷が触れる度に段々防ぐのが難しくなっていく。
「なら……!」
私はこれ以上は防ぐというのは難しいと判断して、もう一度黒紫の雷で針から距離を開けた後、ベルナの方に向かう。
だが、今度は針は私の方を狙わず、ベルナのと私の間を塞ぐように並ぶ。
「氷と雷、響き合う、氷と雷、繋がり合う……氷雷の光線【イェーノ・ライオ】。」
「これは……危なっ!?」
紫色の髪が輝くように見えたベルナ。
そうしてまだ撃ち落とされていなかった氷の針の間に雷が走る。
先程私がやった破壊方法の仕返しでもするかのように、今度は氷と雷による弾幕、それを飛ばしてきた。
更には他の砕いていない氷の城壁からも雷の魔力を飛ばして来て、私を進ませない為の網を張り巡らせてくる。
更に、床に当たった氷もまた雷の魔力を発してくる。
流石に私は、搔い潜って突撃するのは難しいと判断して私は静止する。
さて、どうするべきか。
多分この網の張り方は恐らく魔力を浸食して奪う闇属性を使っても、何とかスペースを確保して凌ぐ事は出来るかもしれないが、攻撃に転じる手段が無い。
掻い潜って突撃するのが難しいなら、多少の無理をしてでも強引に突っ切るべきか?
考えていると、まだまだ詠唱は続く。
「氷の城【イエロ・カスティ】。」
今度は省略した詠唱で壁を動かしていく。
どんどん逃げ場を減らして行くという方向なのだろう。
機動力で負けているならそもそもその機動力を潰していく、というのは定石だが、複数の魔法をコントロールしながらそれをやっていくのは流石としか言い様が無い。
おまけに針をすぐにそのまま攻撃に転じる事も出来ると考えれば、ただの罠や障害物とも言えない。
「なら……これでどう!?」
私が黒雷を拡散させて氷雷の包囲網に少し穴を開けて距離を詰めていく。
「……。」
それに合わせて氷雷の包囲網をベルナは操作する。
さらに一部の氷の針は包囲網を解いて直接狙って攻撃してくる。
「はああっ!」
だがそれでも私は止めない。
黒雷の包囲網を魔力を奪ったり破壊しながら何とか距離を詰めていき、やがて突撃の射程圏内に入った。
これくらいなら掻い潜ろうと直接突撃しようと、無詠唱で迎撃して来ようとこっちの方が貫ける筈だ。
「これで、どうっ!?」
私は黒雷を纏いながら一気に突撃する。
自分に纏わりついた氷も吹き飛ばし、最大速度で突っ込む。
これで……!
「凍える盾【コンヘラル・エスクード】。」
「なっ……!?」
突っ込んであと数センチの所。
そこで槍は、そして私は止まった。
ベルナが唱えた魔法。
それは本来は氷属性の防御の魔法だ。
だが、ベルナは自分に触れる寸前でその魔法を敢えて唱えた。
そして、氷の中に私の槍を取り込み、更に私の足なども凍らせて完全に私の動きを止めた。
(不味い……!)
このままでは……と思った時である。
「氷よ、霧よ、包み込め……。」
更にベルナの口からは詠うように詠唱が始まる。
それだけではない。
私の周りが輝いている事に気づく。
私は顔を動かすと、氷の壁や床に氷と雷で魔法陣が描かれていたのだ。
魔法陣を使い、詠唱まで行う、つまりは間違いなく大魔法である。
「くぅ、うごか……なきゃ……うごか、ないと……!!」
もがいて何とか氷の塊から抜け出そうとするも、氷はどんどん私の身体を凍てつかせてくる、そしてその度に身体を凍えさせて動きを鈍らせる。
「こ、のっ……!」
もうこうなったら、と自分を纏う氷に闇属性の魔力を流し込み、そのコントロールを奪おうと試みる。
それにより、少しずつ氷はようやく解けていく。
だが……。
「氷霧の眠りは優しく、全てを包み込むであろう……。」
「くっ……ベルナァ……!!」
「氷霧の腕の中で時よ止まれ……氷霧の女王よ、良き夢を【イエブラ・レイナ・スエーノ】。」
ベルナの詠唱が終わった瞬間、魔法陣が輝き、空間が輝き、そして目の前が輝いた。
そして、急激な冷たさが身体全体を一瞬襲った後……。
そこで私の意識は、暗闇に落ちた。




