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王族デートと現状把握

困った。

非常に困った。

これは全く想像していなかった展開だ。

私は先程のクラブでの会話を思い出す。



「え、えっと……仲を深める手伝い、とは……?」

「その……私も、次期王女として、シャル君……リジャール王子と、仲良くなりたい、な……って……。」

「ベルナ様はリジャール様の事が大好きですの!だから政略結婚としてだけでなく、恋愛的な意味でも結婚したいとお思いですのよ!」

「……ん、シャル君の事、好き……だから……。」


長めの前髪に軽く目は隠れるが、ベルナ様の赤い頬は隠れていない。

完全に恋する乙女といった雰囲気だ。


「それで、その……今度、その……デート、するから……仲良くする、手伝い……して、ほしい……。」

「な、なるほど……。」

「王族と次期王族候補のデートかぁ……流石に僕達でも想像ができないけれど……。」

「てか、アタシ様達恋愛経験はからっきしだぞ、アタシ様達でいいのか?」

「逆に頼れる方が居ませんの、大体の貴族はデートを失敗させて自分達が次期王女になろうと狙っている方が多いのです。かくいうアタクシも元々は王族にお近づきになり、貴族としての評価を上げろ、とお父様お母様からは最初は言われていましたわ……。」

「まあ、そう、でしょうね……。」


(ごめんなさい、私もソルスの為にはベルナ様には失敗してほしいと思っています……。)

そんな事をつい思うも当然ながら口には出せないので私は苦笑いしながら冷や汗をかく。

……しかし、この話を聞いてそういえば、と思う事もある。

私も人の事は言えないが、ベルナ様はどうやらかなり内気で感情表現が苦手らしい。

それに対して、少なくとも原作でのリジャールは、明るく爽やかで優しい、太陽と風に舞う花びらのような人だった。

そんな人が、ソルスの存在が大きかったとはいえ、婚約破棄してソルスを選ぶ理由。

もしかしたら、リジャールとベルナ様との仲が、あまり上手く行ってなかったのもあるのだろうな、と。

それに加えてもう一つの理由を考えれば、確かにソルスを選びたくもなるだろう。

性格面でもソルスと相性良かったので尚更だ。


「で、変わり者な貴族が集まるクラブがあるという事で、そういう人達なら大丈夫かもと思って皆さまにお願いしに来たのですわ!」

「言われてるぞ、マルニ。」

「言われているねえ、マルニ。」

「貴方達に言われたくないわよ……!……はあ、わかりました。私もあまり大したアドバイスは言えないと思いますが、何とか考えてはみます。」

「……!!ありがとう、マルニーニャ、さん……!!」

「あ、あはは……ま、マルニで構いませんよ、ベルナ様……。」

「ベルナで、いい……!!」

「わ、わかりました、ベルナ……。」


先程の赤い顔から一転、物凄く嬉しそうに手を握って目を輝かせて私を見つめるベルナ。

何というか、見た目はどちらかと言うとゆるふわしたお姉さんみたいなのにこういう所は何処か少女的というか……

(くう、この人、可愛い……!!これで仲良くなれなかったってリジャールどういう事……!?)

心の中でつい唸ってしまった。

こんなに可愛いお姉さんだったら大抵の人はドキドキしそうなのに。


というわけで、ベルナとティエラの頼みにより二人のデートを支援する、という内緒の依頼を受ける事になったのだが……。


「デート、かぁ……。」


私は一人、ぽつりと呟く。

当然ながら、私はデートなんてしたこと無い。

前世ではほとんど病院でそれが当たり前だったから恋愛をする機会も無かったし、今世でもそういう縁談の誘いの話が両親からは全く無かったわけではないが、私は全部断ってきたのでそういう経験を今世でもしたことが無い。

そもそも私は、恋を知らない……。

(……ソルス……。)

何故だろう。

恋、という事を考えると、ソルスの笑顔が頭に焼き付いて離れないのは。

……いやいや、まさか。

女の子同士だし、何よりソルスは三人のうち誰かに結ばれるのだ。

なら、そんな事を考える必要無いのに、なのに、どうして……。

(私……もうすでに、恋、してるのかな……。)


井戸の水で顔を洗って軽く頭を冷やして冷静になる。

私が考えなければいけない事は、いくつかある。

まず、この世界がどの道を通るのか、だ。

これはソルスが入学してから考えるべきで今考えても仕方ないかもしれないが、それでもこのデート大作戦には関係するので考えないわけにはいかない。

仮にソルスがリジャールと結ばれるルートならば、まずこのデートは失敗するのだろう。

場合によっては失敗させなければいけないのかもしれない。

だが、他のルートなのでは?

そうも考えるが、少なくとも現状のソルスの話を聞いていると、どうもアルデールのルートには入る気配は無い。

ならばリジャールとジュビア先生の二択、になってくるのだが……。

ジュビア先生もジュビア先生でクラブの顧問という原作と違う道を歩み始めている。

という事は、ルートにも何か変化があったり、もしかしたら違う人と結ばれたりするのだろうか……?

そう考えると、今のこの思考自体に意味が果たしてあるのだろうか?という事になってしまうのだが。

でも、そう考えると今回のデートは、成功させるべきかさせないべきか……と考えても答えは出ないが、とりあえず王族へ貢献するという貴族としての立場としては、成功させるべきなのだろう。

更に問題となるのは、そもそもそのデートをどうやって成功させるべきなのか……という事なのだが。

だが、これには一つ、勝機になる物がある。

それは、私がリジャールの好きなものや性格といったデータを把握している、という事だ。

「やがて光の君と共に」をプレイしまくったのだ、当然だ。

それを利用すれば、デートを上手くいかせる可能性も間違いなく上がる筈だ。

もちろん、把握しすぎているからってそれでベルナやリジャール本人に変に警戒されては意味が無いが……。

それでも、何も勝機が無いわけではないのは確かだ。

ある程度の行動の指針になるのだから。


「とりあえずまずは……。」


ある程度の指針は決まった。

後はデートのイロハを考えるとしよう。

私は自室に戻る事にした。

この作品は、百合作品でありながら乙女ゲームを舞台とする作品です。それがどうこの物語に作用するか、これからの展開を楽しんでもらえたら幸いです。

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