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番外編2 マルニの悪い癖?

時はやはり夏季休暇。

私はコミエドールに里帰りしていた。

両親に(恐らく)半分以上怯えられながらも久しぶりにオスクリダ家に帰ってきた。

といっても遊びに帰ってきたわけでは無い。

大体の時間はオスクリダ家の運営の見直し、主に財政や町の設備、環境の改善など。

そういうタスクは指示書として私を慕ってくれている民や役人の派閥に手紙でやり取りはしていたものの、やはり一番は現場を見る事だ。

というわけで里帰りもほとんど仕事で埋まって休みという感覚はあまり無かったのだが、それでも何だかんだ自由な時間が無いわけでは無い。

そういう時間は……


「はぁっ!」

「やぁっ!」

(カン、キン、ザザッ……!)


炎と風の魔力の剣と、黒雷の槍がぶつかり合う。

幾度かの打ち合いの後、距離をとって私は一息つく。


「ふう……本当に強くなったわね、ソルス。魔力を使った正面からの押し合いはもう勝てないかもしれないわね。」

「いえいえ、マルニ様もやっぱり騎士としての訓練を受けてるからか、前以上に動きが洗練されてて綺麗な槍術です、流石ですっ!」

「……。」


こうやって、ソルスやアルデール、フレリスと鍛錬をしていた。

こうやってソルスと関わるのはあまり良くない気もするが、コミエドールに帰ってきてソルス達に会わないという選択肢は私には無かったし、今のソルス達の実力を計るのも悪くはなかった。

今日はアルデールは居ない為、ソルスと模擬戦を行っていた。

身体に魔力を纏う事で自分達の身体を守りながら戦っているので怪我の心配もあまり無い。

にしても、二人の成長は目を見張る物がある。

騎士としての大成がほとんど確実なアルデールはもちろんだが、ソルスにも魔力を使ったパワーでの正面からの戦いはだいぶ押されてしまう。

潜在能力を考えると、多分来年学園に入ってきた頃にはあっさりと実力では抜かれるかもしれない。

騎士として自分が弱いわけにはいかないなと、改めて自分に喝を入れなければ……と感じてしまう。

(ところで……)


「……。」

「フレリス、さっきから私の方を見て、どうかしたかしら?」

「いえ、その、私の気のせいかもしれませんが……。」

「フレリスさん?」

「構わないわ、気になる所があったら、教えてちょうだい。」


自分の視点だけでは気づけない癖や弱点もあるかもしれない。

それが自分の強さに繋がるなら、聞いておきたい。


「では、言いますが……。」

「ええ。」


「お嬢様、もしかして足癖が悪くなりましたか?」


「……うん???」


あしくせ、足癖……


「え、えっと……私、そんなに足癖悪くなってたかしら?」

「ええ、槍での距離的優位性を取る為だと思いますが、蹴って距離を取ろうとする癖がついている気がしますね。」

「あ、そういえば確かにマルニ様、蹴りというか突きや斬るのはもちろんですけど、体術もよく使うようになりましたね!普段は突進して突いたりするのが主ですけど、近づいたら蹴りで押したり足元狙ったり!」

「……そ、そう、なの……気づかなかったわ……。」


騎士としては邪道な戦い方かもしれないが、私は他の人……特に剣術使いが多い騎士相手や魔物との咄嗟の戦いの為に確かに槍術に体術を取り入れた戦い方にするのは意識はしていた。

その方が反動で跳んだり逆に押したりする事で距離を取れるからだ。

だが、まさか足癖が悪いと言われる程蹴りを多様していたとは……。


「な、なんかそう指摘されると恥ずかしいというか……はしたない、かしら……。」

「い、いえ、華麗で格好良いと思いますよ、マルニ様!」

「ええ、実際お嬢様は以前より強くなりました。それは私から見ても間違いないでしょう。」


私が顔を恐らく赤くしていると、今度はフレリスが現出して土の槍を持つ。

次はフレリスが相手をしてくれるらしい。

私は気を取り直し、槍を構える。


「実際に……はっ!」

「っ、やっ!」


お互いの槍が交差してぶつかり合う。

お互いに槍なのでこのレンジはどっちもあまり自由には動けない。

だから……


「はぁっ!」

「っ!っと……!」


私は槍を絡めとるように回し、私自身も回転しながら逆に近づく。

そして、足元を崩す為に身体が交差するタイミングで足払い。

だが、フレリスもそれは反応して軽く跳ねるようにして躱す。

だからその着地を狙って今度は私は足元を突くが間一髪フレリスの土の槍が弾く。

お互いに構えを取り直してまた向き合う。


「私がこういう風に押される事が増えました、もう槍術でもお嬢様には勝てないでしょう、ねっ!」

「っ、そこっ!」


フレリスの突き、鋭いその突きを回し蹴りで弾いて逸らし、その回転の勢いのまま私はフレリスに向かって槍の刃先を振るう。

槍はフレリスの身体に触れ、身体に纏った魔力を弾いて魔力の鎧を霧散させる。

この模擬戦は私の勝ちだ。


「……こういうわけです、お嬢様の体術は、間違いなくお嬢様の強さに貢献していますよ。」

「そ、そうね……また蹴りを使ってしまったけど……。」

「わああ、二人とも格好良かったです!」


笑顔のフレリスに対して、私は苦笑いしていると目を輝かせて、特に私の方に来てくれる。

来てくれるのは嬉しいが、今回は恥ずかしい自分の癖をモロに出したようなものなので私としては恥ずかしさの方が勝つ。


「え、えっとその……ソルス?」

「はいっ、なんでしょうかマルニ様!」

「えっと、その、言いにくいのだけれど……私の戦い方を見て、はしたないと思ってないのかしら?」

「へ?」


きょとん、と本当に不思議そうに首を傾げて私を見つめるソルス。

そんな所も可愛いな……と内心思いつつ、私は言葉を続けた。


「だって、槍術でももっと騎士らしい綺麗な戦い方はある中で私はかなり邪道な、言わば何でもありな戦い方よ?戦い方として綺麗とは思わないし、それに、恰好によってはその、気にしてる場合は無いとはいえスカートとかだったら尚更はしたないし……。」

「……???」


もじもじと恥ずかしさで声がだんだん小さくなりながら言うもソルスは尚更不思議そうにする。

そして、ソルスはそのまま言葉を返した。


「えっと、戦っている時はスカートとか気にしてる場合では無いのは事実ですし……それに、やっぱりマルニ様の槍術は綺麗ですよ?」

「……へ?」


今度は私が同じような声を間抜けに返す番だった。

そのままソルスは言葉を続ける。


「そもそもマルニ様は騎士を目指して強くなった結果が今の戦い方、今の槍術に繋がっているわけですし……人を守る為に、誰かの為に強くなったマルニ様を綺麗じゃないなんて言わせないですし、それにっ!」


「マルニ様の鋭い突きも、舞うような蹴りも、とっても綺麗だと思いますっ!強さももちろんですけど、長い髪が靡いて服のひらひらと舞う姿も幻想的で……私は、マルニ様の戦い方、格好良くて美しくて、大好きですっ、もっともっとマルニ様に見惚れちゃいます!!」

「……!!そ、そう……その……あ、ありがとう、ソルス。わ、私もソルスに見惚れちゃうから、その気持ちは理解出来るというか、その、何というか……。」

「マルニ様……!!」

「ソルス……っ。」


私は槍を消してついソルスを抱きしめる。

ソルスも嫌がるどころか私よりも強く抱きしめているかもしれないくらい力強く抱きしめ返して、顔を近づけてくれる。

ああ、やっぱりソルスは可愛い。

白銀の髪も明るい赤と緑の瞳も、普段より輝いて見える、いや、普段から眩しいくらいに輝かしいくらいに可愛くて綺麗だけれど。

それにしてもこの可愛い顔を見ているとつい自分の物にしたくてドキドキと胸が高鳴り、独占欲が満たしてくる。

具体的に言うとキスしたくなってくる。

(ちょ、ちょっとくらいなら、触れるくらいのキスなら良いかな……女の子同士だし親愛のキス的な……!)

そんな明らかに邪な考えが頭を満たしてくる。

私も、そして原作的にソルスも初めてのキスだろうけど親友としてのキスならノーカンで良い筈……!

そう思いながら、私はゆっくりと顔を近づける。


「ソルス……。」

「マルニ様……。」


ソルスも目を瞑ってくれて、私も目を瞑って……。


「ごほん、ごほん。」

「「!!?」」


びくうっ!と身体が跳ねる私とソルス。


「全く……仲が良いの大変よろしいことですが、せめて人目は気にするようにしないと、足癖の悪さなんかよりもよっぽどはしたないですよ、お二人とも。」

「は、はい……。」

「ごめんなさい……。」


慌てて私達は身体を離して、そそくさと距離を取る。

くっ……あと少しでソルスとキス出来たのに……っ!


「と、とりあえずマルニ様!また模擬戦しましょうか!」

「そそそ、そうね、じゃあ、行くわ!」

「やれやれ……。」


私とソルスは声がつい上ずりながらもさっさと槍、剣を現出して模擬戦の用意をするのだった。


そんなこんなで、私の夏季休暇の里帰りは仕事と勉強と鍛錬とボランティア活動で過ぎ去っていくのであった。

というわけで番外編2話でした。…タイトルと番外編の二つを見ると、マルニの真の悪い癖は足癖の悪さよりも女の子に対してのむっつりスケベな性欲の強さ(特にソルスに)なのかもしれない……?とちょっと思ってしまいました。まあ、これは百合小説なのでマルニが女の子にムラムラするのは仕方ないのかもしれないですね…?というわけで書きたかった夏の番外編は書いたので、次回からは次章突入です、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

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