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謎の夢ときっかけ作り

やることが多くて更新が大幅に遅れて申し訳ない…言い訳にしかなりませんが。あと、なんか予定より話が伸びてもう一話幼少期編続きそうなので申し訳ございません。

私は暗闇の中に居た。

いや、正確には暗闇じゃない。

周りは暗いけど、よく目を凝らすと誰か人が見える。

…あれ、目を凝らしている?

なんだかそれすらなんだか曖昧な感覚だけど…まあ、あまり気にする事では無いのかもしれないような気がしてくる。

とりあえず、その人物をよく見つめる。

髪は暗闇よりも黒い黒に紫が混じる、私の髪に良く似た色の髪色だけど、ロングなまで伸ばした私の髪と違ってミディアムくらいの切り揃えられた髪だ。

顔は見えない、私が見ているのは背中の方だからだ。

服は、血のように暗く赤いフリルに暗めの紫の色のショート丈のドレスだ。

黒いコルセットに巻かれた腰は細く、スタイルの良さを引き出している。

身長は私より少し小さめだけど…凄く綺麗に見える。

「あの…」と私は声を出した…つもりだった。

だが、声が何故か出ない。

喉元を触ろうとするが、手が動かない。

というか、そもそも今私は私の身体越しに私を見ているのか、私の身体が存在しているのかすらわからない。

慌てて気持ちだけで身体をジタバタさせるようにしていると…。

その人物が…彼女が。

私の方に気づいたのか、それとも元々気づいていたのかわからないが、ゆっくりと私の方を振り向いた。

前髪に隠れていた目を…顔を上げて彼女は私に見せた。


彼女の目は、黒い紫の中に赤い輝きが混じる、二層に分かれた宝石のような瞳だった。

その輝きに、本能的な恐怖を感じると同時に、どこか美しいと感じて…私はその瞳から目を離せなかった。

私は気づかなかった。


彼女の口元が、笑みに歪んでいる事に。


「…何、あの夢…。」

私ははっとして目を覚めると、あの光景が夢だった事に気づいた。

「何だったんだろ、あの夢は…。」

ぽつり、と思わず呟いた。


今まで、見たことを覚えている夢は別に幾つもある。

流石にほとんどは記憶してないというか、見たこと自体を覚えてないのがほとんどだとは思うけど。

確か聞いたことがある。

人は一度の睡眠で三つは夢を見ているだとか、夢を覚えていなかったり曖昧な記憶なのは自分の心を痛みから守る為だとか。

この世界の人間の脳の構造とかは知らないけど、地球と同じなら多分同じ原理や構造をしているのだと思う。

つまり、今までそういう「眠りから目覚めた時に夢を記憶している」ということは初めてではないという事だ。

だからこそ、今日見た夢は今まで見た夢となんだか違う感覚があった。

背筋がゾクゾクとする、寒気がする、身体から嫌な汗が出る、呼吸が荒い。

傍から見たら風邪症状だろうけど、この身体になって風邪を引いた事は無いが、黒野心時代に何度も風邪を引いたから分かる、今回は明らかにそういう物じゃない。

なんというか…ホラーとかとも違う意味の恐怖というか、見たくない物を見てしまったという感覚が近いかもしれない。

なんと表現するべきか、自分でも分からない。

だが、一つ私の中に浮かぶ物があった。


私は闇属性の力を強く持つ、という事だ。


(あれが私の中に在るもの、という事…?)

実感がいまいち湧かないけど、闇属性の力の源である、心の闇。

それが今さっき見た夢に関係があるのだとしたら…きっと今の夢のきっかけは、昨日闇属性の力を引き出した事が、心の闇に触れる事だったのかもしれない。

だとしたら、これから私が向き合わなきゃいけないものなのかもしれない。

(せめて、あれが何なのか分かればいいんだけど…。)

そう思いながら私は、やけに豪華なベッドから出た。


そんな夢を見るようになってからしばらく月日が経ち…。


「お嬢様、準備は出来ましたでしょうか。」

「うん…じゃなくて、ええ、出来たわよ。」

私は荷物の確認を紙を見て確認する。

食料、衣類、掃除用具、紙類…様々な荷物が荷車に入っているのを確認する。

私にフレリスが確認を任せてくれている(もちろん他のメイドさんにも手伝ってもらいはしたが)のは、多分信頼されているということ…だと思う。

とりあえず、これで完了な筈だ。

「大丈夫と思うわ、フレリス。」

「ありがとうございます、それでは行きましょうか。御者の方、お願いします。」

「はいはい、わかりました…では、いきますよ。」

荷車を括りつけた馬車の御者が綱を鳴らすと、馬は馬車を引いて歩き始めた。

私とフレリスは馬車に揺られて町へ向かう。


今日は慈善事業の日だ。

私とフレリスが考えた、オスクリダ家のイメージアップの為…を建前に、私がある目的を果たす為に始めた、食料や衣類の支援や仕事の手伝いをする日だ。

フレリスも自分の孤児院はもちろん、他の施設などの支援になるならと喜んでやろうと話になった。


私の目的は一つ。

それはソルスに出会う為である。

マルニは、ソルスと幼少期に出会っている。

どんな時、どんな状況で出会ったかは語られて居なかったが、その事実は変わらない。

つまり、私は子供の内にソルスに出会う必要がある、もしくは出会う運命にある。

なのでソルスからの印象が良くなるように、という私なりの努力のつもりである。

…小賢しいやり方かもしれないが。

だから私達は提案したのだ。


もちろん両親は反対した。

「町の人々に慈善事業して何か得があるのか?金や権力になるのか?言う事を聞く役人共だけで十分だらう。」

「平民からのイメージなんかより貴族や王族の方々からのイメージングの方が何倍も何十倍も大事だわぁ。」と。

この時は説得に苦労した。

その場その場の行動の言い訳や理由付けなどでは無く、両親の考え方、引いては今までの生き方やオスクリダ家の在り方に関わる事である。

平民は金を搾り取るもの。

それが当たり前の生活だったのだから何かを還元しようという話自体が本来考えもしないことである。

なんと答えるか考えた結果…私の我儘と屁理屈で押し通すことにした。

「私達が頑張って町の人達のお手伝いしたりしたら、皆前より言う事を喜んで聞くかもしれないですっ。それに、町の皆から良く言われたら、偉い人達とのお話も上手く行くかも…ですっ。」

どうにか理由を必死に考えながら提案する。

「もしもの時の護衛や手伝いは私や他のメイド達がやります、護衛の兵士を付けなくとも大丈夫です。私達だけで事を行えばあまり金銭的なダメージも無いでしょう。」

フレリスが後ろから援護して言葉を続けてくれる。

フレリスはそこから更に付け加えた。

「それに何より…お嬢様が初めて提案したお仕事です。早いうちから社会勉強として、お嬢様のお仕事を私もお手伝いしたいと思っています。」

「んん~~…っ。」

私は両親をじっと見つめる。

最初は難色を示していた両親だったが、フレリスの、「私の提案したお仕事」という点を強調した言葉にか、それとも私の視線にか、つい両親は考える。

そしてしばらくして父が口を開いた。

「…やるならば必ず利益に繋げろ、良いな?」

「あら貴方、許すのかしらぁ?」

「全くメリットが無いと判断したらやめるように言う、平民達に払うような金は少しも無いからな!」

そういうわけで、何とかお願いを押し切ったのであった。

…騙して悪い気もするけど、これも未来の為に必要な事だから仕方ない、と自分に言い聞かせた。


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