番外編1 海と水着と日焼け止め
まだ暑いから良いよね?という事で我慢できず季節感無視して書きました水着回です!番外編で水着回という事でちょっとエッチに書きました。
時は夏季休暇。
夏の暑さに勉強効率も落ちる……。
という事で、夏季には実家に帰る貴族も多い……。
まあ、言ってしまえばこの世界で言う夏休みである。
前世との夏休みの違いは、というと、人によって期間などが変わる、と言った所であろうか。
貴族としての家の仕事がある人や遠方からサンターリオ学園の寮に入ってきた人、後は平民出身の学生などはやはり長く休暇期間を取る。
そして、夏季休暇の間は出席などの成績には関係しない。
もちろん、普通に休んだり遊んだりする為に夏季休暇を取る貴族も居る。
夏季と冬季の長い休みには、このインフロール1の学園であるサンターリオ学園にも、そしてこの中央都市コミエフィンにもどこか緩いというか気の抜けた賑やかな空気が流れるのだ。
というわけで、私も夏季休暇を取る事にした。
一つは、コミエドールに一度帰る為に。
そして、もう一つは……
「おーい、こっちだよー!」
「さっさと行こうぜ~!」
「わかった、わかったわよ。」
子供のように……いや、ウルティハはまだ子供だしエスセナも私も前世の記憶があるとはいえ若いうちに死んだし身体も心も多分まだ事実として子供だと思うが。
それはそれとして子供のようにはしゃいでシレーナのビーチに向かって走る二人につい苦笑する私。
単純に海に来たのが楽しいのか。
いや、エスセナはもしかしたらシレーナの地元自慢もあるかもしれない。
まあそういう事を考えながら、私とフレリスは歩いて二人の後を追う。
「お嬢様、暑さで気分を悪くしたりはしてないでしょうか?」
「私はそんな身体が弱くはないわよ、安心して。それより、フレリスも日傘にちゃんと入っておくのよ?せっかくの肌にシミができたらいけないわ。」
「このサイズの日傘なら私もお嬢様も並んで歩けば大丈夫ですよ。それに、メイドの私としてはお嬢様の白い肌を守るのもメイドの務めです。まあ、お嬢様が日焼けした姿も興味深くはありますが。」
「うーん……小さいころは日焼けとかも気にせず走り回ってたけど、今は確かに日焼けは気にするわね……。」
「ふふ、あの頃はコミエドールのボランティアで外での活動も多かったですからね。」
「おーい、マルニ、フレリスさん、早くー!」
しまった、ついついフレリスとの話が盛り上がってしまった。
しかし、フレリスと話した事も事実だ。
どちらかと言うと今は肌は綺麗に居たい。
でもまあ、外で遊びたいのも事実。
だから今日はしっかり日焼け止めや海水浴後の為の化粧水も持ってきた。
そう、もう一つの理由は、海水浴する為だ。
エスセナがシレーナの貴族……という事で、アクトリス家のプライベートビーチに許可をもらって私、フレリス、ウルティハ、エスセナで遊びに来たのだ。
一般的な海水浴場もあるにはあるが、やはりそこはアクトリス家。
貴族やVIP専用に幾つかのプライベート用の土地があり、今回の海水浴は私達の貸し切りだ。
いつもの令嬢モードの仮面を被っているものの、正直結構私も浮かれていた。
というか、多分いつもより笑っている気がする。
もちろん、普段からウルティハやエスセナ、フレリスと居て笑っていないわけではないが、それでもやはり遊びに行くとなると気分が違う。
足取りも軽く、私達は歩いて行った。
今回は貸し切り、という事で、アクトリス家の使用人や料理人などが居るが、それでもほとんど人は居ない。
というわけで、遊びたいだけ遊ぶ自由な時間だ。
早速私達は水着に着替える、のだが……。
「え、えっと……私、変じゃないかしら?ちょっと、大胆過ぎた気もするけど……。」
「とても似合っておりますよ、お嬢様。それにお嬢様はスタイルも素晴らしいですから、それくらい見せる方が似合います。」
「僕の次に似合うよ!」
「セナの次はアタシ様だろ!というわけでマルニとフレリスさんは三番目に水着が似合うぞ!」
「それ、私とフレリス最下位のような……というか、フレリスは色合いが普段と変わらない感じするわね……。」
「私はメイドですので。」
フレリスの水着は紺色をベースに白いフリルが着いた、メイド服に近い色合いのビキニだ。
黒いリボンで飾ったリボン水着なのがシックな中に可愛らしさを見せる。
ウルティハの水着は緑とオレンジを中心にした、紐の部分が多めな際どめな水着に白のシャツを羽織っている。
私達の中で一番モデルみたいなスタイルの良いウルティハだとなおさら目を引く。
エスセナは水色のフリルに黒めの紺の布地の大人っぽさと可愛らしさを併せ持ったビキニだ。
エスセナのスレンダーで少女的な可愛らしさに対して水着はビキニなのがドキッとさせる。
因みに私の水着はセパレート風な紫に可愛らしいピンクの色がグラデーションになった水着だ。
水着自体は凄く可愛いと思う……思うけど、思ったより胸の露出が多めの水着なので、人目がほとんど仲間内だけと分かっていても少し恥ずかしい。
前世で水着なんて、学校指定の水着しか持ってなかったしそもそもそれを着る機会すら無かったので、今回が水着デビューだ。
因みにエスセナは前世でグラビアとかもやっていたらしく水着も慣れているらしい。
「さーて、準備は良いか!?」
「まず、何をするのかしら……?」
「うーん……まずは、水に浮いてみるかい?」
「……浮く?」
私は意味が分からなかった。
その数分後。
「こ、これは……何の修行よ……!」
「おいおいマルニ、先に沈んだら罰ゲームだからな!」
「こんなの僕には余裕余裕!」
「なるほど……私は不参加で正解でしたね。」
私、ウルティハ、エスセナは海面に浮いていた。
いや、水にぷかーっと浮いているとかではなく、文字通り水の上に立って浮いていたのだ。
ウルティハ考案の水に浮かぶ事で魔力をコントロールしながらの遊び兼訓練は、一番最初に海に落ちた人は罰ゲームで何か食べ物を持ってくるという事になっていた。
因みにフレリスは審判兼見物だ。
だが、この遊びはどう考えても私が不利だった。
最初は水属性の魔力で水をコントロールしようかと思ったが私の水属性の魔力ではすぐに沈む、と判断して急いで雷属性で海面と反発して浮く事にしていた。
だがやはり体力仕事の騎士志望に対して二人は魔法使い。
ウルティハは氷、エスセナは水で浮くというより椅子を作って座って余裕の表情だった。
やがて、私は限界が来て……
「きゃあ!?」
「はい、マルニ脱落なー。」
「騎士にしては頑張った方じゃないかい~?」
「ぷはっ……い、いつか仕返しするわよ二人とも……。」
「お嬢様、とりあえず上がりましょう。」
そんな、私にしては悪役令嬢らしい事を言いながらジーっと二人を軽く睨みながらフレリスに促されて砂浜に上がる。
「ふう……仕方ないわね。フレリス、貴女の分も持ってくるから、パラソルで待っていてちょうだい。」
「あら、私の方も良いのですか?」
「ええ、ちょっと持ってきたい物があったから。」
「ありがとうございます、では、お先に。」
そうやって話し終わると、私はアクトリス家の使用人の女の子の所へ行く。
「マルニーニャ様ですね!何か持ってきましょうか?」
「ええ、実は、用意してほしい物があって……。」
「お待たせ、フレリス。はい、これ。」
「……お嬢様、これはもしや……。」
「ええ、貴女と食べるならこれの方が良いかと思って。」
私は、持ってきた物を渡す。
「……ふふ、よく用意してもらえましたね、クールキャンデー。」
「この前コミエドールの名物としてこっそり教えたらアビシオ様に気に入ってもらえたのよ。
それはクールキャンデーだった。
クールキャンデーを食べながら、ゆっくり話すのも良いかと思っていたのだ。
因みに二人の方は魔法でキャッチして食べていた、器用な物だと思う。
「……こうやって、二人で遊んで過ごすってのも久しぶりね。」
「そうですね……基本は休みの日も鍛錬や勉強、溜まったコミエドールの皆さんへの書類の消化、羽を伸ばすとしても精々買い物とかをするくらいで……遊ぶ、というのはお嬢様が学園に入学される前の話ですね。」
「もうあれから半年近くも経つというのだから、早いものね……。エッセとの事もあったから、色々あった気がするわ。」
「そうですね……お嬢様も成長されて、すっかりご令嬢として立派になられました。」
「でも、まだ真のお嬢様はまだまだ、なんでしょう?」
「ええ、騎士としても活躍して社交界でも活躍する、真のお嬢様になってもらわなければ。」
「先は長そうね。」
「ええ……だから、ゆっくりでも構いません、しっかりと成長して行きましょう。」
「そうね。」
波音が聞こえる。
心が落ち着く感じがする。
目を瞑れば、尚更音に集中して意識は落ち着いて……と、思っていた所だった。
「お嬢様、すいませんがお願いが。」
「ん……何かしら?」
「日焼け止めの塗り直しをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「うん……?ええ、構わないわ。」
そう言って私が振り向くと、既にクールキャンデーを食べ終わってフレリスはベンチで背中を見せていた。
(……こうして見ると、フレリスの背中……というか、肌綺麗だな~……)
そう思いながら、近くにある瓶に入っている日焼け止めを手のひらの上で伸ばして、フレリスに触れて塗っていく。
「んん……ん、はぁ……。」
「……っ。」
(ちょっと、フレリスの吐息……何か色っぽいというか、エッチだ……)
そう思うと、なんか頭にエッチな妄想してしまいそうで軽く頭を横に振りながら日焼け止めを塗っていく。
後ろの次は前、お腹の辺りから触れる。
「ん、は、あぁ……。」
「ふ、フレリス……ちょっと声抑えて、恥ずかしいから……。」
「す、すいません……少し、気持ちよくて……んっ……。」
そんなやり取りをしながら何だかんだ塗り終わって。
「はあ……な、なんか妙に疲れたわ。」
「ありがとうございます、お嬢様、大変お上手でしたよ。」
「それはどうも……なら、さっき海に入ったから私にも塗ってくれるかしら?」
「ええ、お嬢様。では後ろを。」
「ええ……。」
そう言いながら、今度は私は背中をフレリスに見せる為にベンチにうつぶせになる……。
それがいけなかった。
「楽しそうな事してるじゃんよ~っ。」
「おやおや、綺麗な背中だね~っ。」
「……っ!?」
いつの間にか私の近くに居たウルティハとエスセナの声に嫌な予感がして急いで動こうとした……が、すぐにガッ!と足首を掴まれる。
気配の察知が遅かった、すぐに動くのを止められてしまった。
どうやら嫌な予感は、的中してしまったらしい。
「僕も塗ってあげるからねえ、可愛いらしいお嬢さん♪」
「塗って塗って塗りまくってやるからよぉ~!」
「ちょ、ちょっと、やめ…きゃん!?ふ、フレリス……!?」
「ご安心ください、大事な部分は避けますので、お嬢様。」
「何も安心出来な……ひゃん!?そ、そこ、だめ…っ…やん、そこ、おっぱ……!」
それから私は、三人が気が済むまで私が恥ずかしいくらいに悲鳴をあげながら身体中に日焼け止めを塗られた。
その後滅茶苦茶三人にお説教した。
「今日は楽しかったね~!」
「また明日も遊びたいくらいだなっ!」
「全く……遊びに来たのに疲れた気がするわ。」
「遊び疲れという物ですよ、お嬢様。」
あれから普通に泳いで遊んだり水をかけあって遊んだり。
海で遊んだり海で人もあまり居ないからという事で魔法を使って遊んだりして、その度にやりすぎて私が二人をお説教したりしていた。
遊びの筈だがなんだか私はいつもの通りな気もしたが……。
(でも、何だかんだ楽しかったな)
そう思った。
そして、それと同時に。
(もし……もし、来れるなら、ソルスとも海に来たいな)
そんな事を考えていた。
「……マルニ、マルニ!」
「んん……?ああ、ごめんなさい、ちょっと考え事していたわ。」
「全く、僕の話を聞いていないなんて、君も偉くなった物だね!」
「ごめんなさい、何だったかしら?」
拗ねたふりをしていたエスセナ。
でもすぐに表情はニコリと変わった。
「どうだい、僕の街は。素敵だろうっ。」
「……ええ、凄く素敵よ。」
「えへへ、そうだろうそうだろう!」
「アタシ様達が頑張って勝ち取ったこの時間だからな!」
「……ふふっ。」
どうやらエスセナは、その一言が聞きたかったらしい。
自分の街が素敵な所だ。
そう言われるのが、エスセナは好きなのだろう。
シレーナでは、色々あったからそうやって素敵な部分を紹介する暇も無かったから……。
だからこそ、観光都市シレーナのアクトリス家の娘だからこそ、そしてシレーナの事を勉強して改めてその素晴らしさに触れている今だからこそ。
女優エスセナにとって、未来の経営者エスセナとして、この街が素敵と言われたかったのだろう。
(エッセ、可愛い所もあるんだね)
そう思いながら、私は微笑んでみせた。
ウルティハとエスセナ、特にウルティハとの絡みが少なくなってしまったのが今回残念でした。いずれウルティハメインの番外編とかも書けたらいいなあと思います。次回も番外編となります。次章はその次に更新という事で、頑張ります。




