私の魔法と属性
ゲームやったり仕事やってると投稿が遅れますね…できるだけ投稿を早くしなければ。
「では、まずは槍の現出からやってみましょう。」
「現出…?」
翌日、早速お屋敷の前の庭園でフレリスと私は鍛錬を始める事にした。
現出、という単語になんだっけ…と一瞬なるものの、すぐに思い出した。
「簡単な事です。魔法で武器や物を呼び出す事を現出と言います。このように…。」
そう言いながらフレリスは空中に手を翳すと、フレリスの眼が緑色に輝き、手の近くに魔法陣が現れる。
魔法陣がスライドしていき、魔法陣が通った後を魔力の量子が形を成していき、魔法陣が消えて眼が普段の茶色の戻ると魔力の量子は完全に槍の形になった。
風の魔力か木の魔力か、その槍は緑色の光を淡く放っている。
「このように、体内の魔力を反応させて、魔法を発動、魔法により魔力を物質化するのを現出と言います。」
「おお、凄い…!」
私の目は魔法で出来た槍とフレリスを見て今輝いているかもしれない。
今まで魔法を目にする機会自体は無くはなかったが、あくまで生活に必要な魔力の行使くらいで、しっかりとした魔法と言えるものはほとんど見たことがない。
おまけに生活に使う魔法ではないとなれば恐らく初めてかもしれない。
私の様子を見て笑みを見せてフレリスは言う。
「魔力での現出した槍ではなく物で作った槍でも良かったのですが、今回は魔力を使う練習でもあるので現出した槍を使いましょう。」
「どうやるの、フレリスっ。」
少し興奮気味になりながら、フレリスがやったように宙に手を翳してみる。
フレリスは槍を地面に刺して止めておくと、私の後ろに回って私の手に手を添えた。
「まず手に魔力を送る事を意識してください。貴女の中に魔力が頭に、胸の内に、そしてそれを表す瞳に。身体の中の様々な所から、流れる力を一点に集めるのです。」
「ん、わかった、やってみる。」
言われた通りにしてみる。
集中する為に目を瞑ってみる。
頭…多分脳というものの知識が世界に無いか、私には難しいと思って言わなかったのかもしれないけど…まずは頭から。
胸の内側…心臓かな、なら血液が流れるポンプのように、全身に力を流して手に集めていくように。
瞳…さっきフレリスの眼が光ったのを見たから、多分眼にも魔力が現れるから、それを意識して…。
今、と思った瞬間に眼を開ける。
すると自分の手の上に紫色のような黒色のようなな…まさに髪色や瞳に似た色の魔法陣が現れる。
「…!?マルニお嬢様!止めてください!」
何故だかわからないが、私を見ていたフレリスが驚いて慌ててる。
でも、今から止めるわけにはいかない、今感覚を掴んでいる内にこの力を使えるようになりたい。
だが、いまいち何かが足りない、後少しの所で、魔力のコントロールまではわかったのにその魔力を形にするきっかけが見つからない。
何かきっかけ…と考えていると更に集中が途切れそうになる。
このままでは失敗する。
フレリスが何か慌てているという事は、失敗したら不味いことになる、そんな予感が妙にある。
だけどどうすれば…!ああもう、わからない…!
私は一か八か、やけになった。
「現、出…して…っっ!!はああああぁぁ!!!」
「お嬢様!!」
力を込め、叫びながら手の上の魔法陣に向かって力を込める。
フレリスは魔力の放出に思わず気圧されそうになりながら叫ぶ。
そして…。
魔法陣は手の上から移動する。
魔法陣がスライド移動するのにしたがって、黒いような、濃い紫のような粒子が槍の形へと成っていく。
刃先が切り裂く事も出来る、鋭い穂先が出来上がり、柄は粒子と同じような色に輝く。
私が持つには少し大きい長さだが…
「現出…出来た…!」
思わず嬉しさで声が弾んだ。
「フレリス、出来たよ!初めてで、ちょっとイメージより大きくて長いけど…それでも出来たよ!」
フレリスのメイド服のスカートを掴んで見上げた。
きっと、きっと褒めてもらえる。
…そう思っていたが。
「………。」
「…フレリス?」
私の顔…特に私の眼を身ながら、複雑そうな表情をしているフレリスに、私は首を傾げる。
「…これは少し確認しなければなりませんね。この可能性を考えてなかった私にも非はありますが…。」
そう小さくぶつぶつを見ていると、私の手を掴んで私の方を見て言った。
「お嬢様、少し付いてきてもらえますか?」
「ご主人様、奥様、少しお聞きしたい事があります。」
「んん?何だ?」
「まさか早速問題でも起こしたのかしらぁ?」
私はフレリスに連れられて両親の元に来た。
両親は書類仕事の最中だったからか、私の鍛錬に対するフレリスの不信感からか明らかに不機嫌な反応だった。
その様子にも大して反応せず、慣れた様子で向き合っていた。
「お二人の得意な魔法についてお聞きしたいのですが。主に属性について。」
二人にざっくり本題について切り出すフレリス。
私はその言葉にギクッ、となった。
そもそも魔力の色的に、なんか怪しい色をしていた。
紫だから雷属性の可能性もある…と思ったけど、明らかに黒い魔力の方が多かった。
紫色は雷属性が混じった可能性が高いが、あの色の主な魔力の属性は…。
「俺の得意な魔法は闇属性の魔法だ。それが何か文句でもあるのか?」
「私も闇属性の魔法よぉ。縛り上げるのがだぁい好きだわぁ。」
(や、やっぱりーーー!!!)
私は心の中で悲鳴を上げた。
もしかしたら表情に出ていたかもしれない。
「なるほど…やはりですか。」
フレリスは相変わらず表情は変わらないまま…いや、よく見たら、なんか微妙に困ったような表情をしている。
その微妙な表情に両親は細かく反応する。
「何か問題でもあるのかしらぁ?」
「まるで闇属性に嫌な印象を持っているかのようだな?」
「いえ…見事な闇属性の現出だったので。」
「おおっ、現出に成功したのか!流石は俺達の娘だ!」
「ほんとねぇ、最強の騎士になれるかもしれないわぁ。」
…明らかに誤魔化した事には気づかなかったらしいが。
…それにしても、闇属性かぁ。
また外でフレリスと二人きりになってぼんやりと空を見上げながら考えていた。
「…その様子だとしっかり覚えているようですね、流石です、お嬢様。」
「ありがと、フレリス…。」
私を褒めてくれるフレリスにもついつい空返事してしまう。
しかし、フレリスが本気で褒めているわけではないのもわかっていた。
どうしようか困ったからお互いの気の紛らわしのつもりだったのだろう。
ここまで二人で困るのには理由がある。
闇属性と光属性は、他の属性や魔法と少し違う特性がある。
それは心の闇が大きい者は闇属性、光が強い者は光属性の力を持つという特徴だ。
早い話が、良い人は光属性、悪い人は闇属性、という風になる。
大体の人々はどちらも持たないから、貴重な属性ではある…が、それは同時にこの世界における善と悪がわかるはっきりとした見分ける目印になるという事でもある。
原作でソルスの光属性が貴重なのはそういう事である。
というか、なんなら光属性は闇属性より更に数が少ないので尚更だ。
「お嬢様に闇属性を持つような心の闇を持っている事は想定外でしたね…。因みに闇属性以外に使えそうな属性はありますか?」
「やってみる…んっ。」
言いながら、少し手の平の上に集中してみる。
まずは魔力が集まる。
今度は魔法陣ではなく純粋な魔力だ。
最初に黒い魔力が集まる。
「これが闇属性…。」
フレリスもじっくりと見るのは初めてなのか、屈んで顔を近づける。
危ない気もするが、多分大丈夫だから顔を近づけているのだろう。
私は集中集中…。
目を閉じて、違う力を使えないかを、体内を探るようにコントロールしてみる。
すると、バチバチと電撃の音が鳴る。
目を開けると紫色の中に白い光を放つ魔力が見えた。
「これは雷属性ですね…これが二番目に強い魔力でしょうか。これだけでも一般的には結構強い魔力ですね。」
…つまり、闇属性の周りに見えた紫色の光は、複合した属性だったということか。
ある意味、マルニのもう一つの本来の魔力の属性ということだろう。
「なるほど…一応他の魔力が使えないか確かめてみてください。
「わ、わかった…!」
頷きながらまた魔力を体内から魔力をかき集めてみる。
すると、緑色に魔力の色が変わる。
「これは…どうやら風のようですね。」
フレリスは感じる風から判断したらしい。
実際髪やメイド服のフリルがはためいている。
「もう一つ…!」
言いながら最後まで魔力をかき集めてみる。
すると、魔力の球が今度は青色に変わる。
「…この冷たさ、氷属性ですね。いや、不安定に変化していますが、水もあるようですね。」
「……っ!!」
ぐたり、と力が抜ける。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「な、なんか、力抜けて、疲れちゃって…。」
「初めて魔力を行使して、現出や魔力のコントロールまでしましたからね…失念していました、申し訳ありません。」
「ううん、大丈夫…気にしないで。」
首を横に振るが、正直滅茶苦茶疲れた。
なんというか、初めて全力で走った時のような疲れだ。
脚にじゃないけど疲れが溜まって少し立てそうにない。
私が肩で息をしていると、フレリスは考える素振りを見せた。
「これほどの魔力を持っていて、お嬢様の性格を考えると、闇属性の理由があるのか、そもそも心の闇を持つという前提が間違っているのか…。」
ぶつぶつと小さく考えながら呟いていた。
自分にとっても不思議なことだし、気にはなる事だが、今は疲れが凄くて考える力があまり無い。
「…いずれ分かるかもしれませんね。お嬢様、立てますか?」
「ごめん…ちょっと無理…。」
私は首を横に振る。
今回は、ちょっと自力で出来そうにない。
「分かりました、では、肩に掴まってください。」
そう言うと、フレリスは私を抱きかかえる。
…抱っこされている。
「フレリス…。」
「今は、ゆっくりしてください。」
フレリスはそう言いながら、私の背中を軽くポンポンと叩いてくれる。
今の精神年齢で抱っこされるのは恥ずかしい気がするけど…今は、この優しい手に、温かいフレリスの体温に、全て任せたい。
フレリスの胸元に顔を埋める。
意識がぼんやりしてきて…私は目を瞑った。
「私がどうにかしますから…今は、おやすみなさい、お嬢様。」
そんな言葉が聞こえた気がしながら、私は眠りに落ちた。