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飛翔の前の助走は大きく、軽やかに

「「おお!!」」

「これは確かに凄いな……。」


私とウルティハ、そしてジュビア先生の三人で撮影した映像を見ていた。

その内容はもちろん先日、討伐依頼で撮影してきた物だ。

先日の討伐の時には偉大なる役者、エスセナ【グラン・アクト・セナ】の魔法を使わず、ジュビア先生に撮影は完全にお願いしていたのだが……。

その結果は、これがなかなか、初めての事にしては上出来では無いか?と感じる程の物であった。

一応のカメラらしく、ズーム機能や暗視しやすい機能などもつけてはいたのだが……先生が上手く機能を理解していたらしく、私達が魔獣と戦う姿がばっちりと撮れている。

今回は大型の魔導カメラだけかと思っていたが、どうやら大型の魔導カメラはそのまま固定したまま、小型の方をジュビア先生が持ったまま移動したりしていたらしい。

二つの魔導カメラによって撮った映像を掛け合わせただけでも、なかなか迫力ある映像が撮れたのだ。

この成果には私達はもちろん驚いたが、今回初めて魔法で撮った映像を見るジュビア先生からすれば結構大きな驚きになったのでは無いだろうか。

それを表すかのようにちら、とジュビア先生の方を見たが普段は見せないようなぽかん、と少し口を開けて驚いた様子を見せている。


(撮影に参加した先生でさえこんなにびっくりしているんだから……もしかしたら、行けるかもしれない……!)


私の中で確かな手応えを感じていると、外の廊下から誰かが走ってくる音がかすかに聞こえてきた。


ガシャーン!!

「はあ、はあ……二人とも、居るかい!?」

「「わっ……!?」」

「っ……エスセナ嬢、今まで廊下を走ってきたね?廊下は走ってはいけないと散々言われて……。」

「あれ?ジュビア先生……そうか、僕達の顧問になったんだったね。……って、それどころじゃない!それどころじゃないんだよ皆!」

「やけにテンションが高いわね……?」

「それはもちろんさ!!」


ジュビア先生の苦言にも割り込んで話すエスセナ。

エスセナには一応ジュビア先生が顧問になった事は既に伝えていたが、凄い適応力だ。

それはそれとして、今日のエスセナの目は光り輝いている。

いや、どこか目の周りの暗さが尚更それを強調しているように感じる。

よく見るとエスセナの目の下には軽い隈がとって見えた。

あの、自分をスターだと堂々と言って憚らない、つまりは自分を魅せるという事に余念がないあのエスセナの目に隈が出来るくらいにここの所作業詰めだったという事だ。

そのエスセナがハイテンションでこの空き教室に来た、という事はだ。

まあ、何となく言おうとしている事の予想はつく。

つく、がだ。

まあ、せっかくその作業を頑張った人からの口から聞かないというのは、流石に野暮という物だろう。


「おお、もしかして……!」

「そう!」



「脚本の大部分が完成したんだよ!!」



「「「……うん?」



「え、えっと……脚本の事だとは思っていたけれど、完成、じゃなくて、大部分が完成……なのかしら?」

「うん!というか、僕が考える部分は完成した、という所だね!」

「セナが考える所っていうと……セナの台詞とかの部分とかか?」

「流石にもっと書いているよ!僕がもう二人の台詞も大部分のお芝居も考えている!」


エスセナは寝不足故か何処かハイテンション気味に頬を膨らませて半目でこちらを見つめる。

ちょっといつもと雰囲気が違って可愛らしいが……私にはまだエスセナが言う事が分かっていない。


「えっと……なら、何を私達は考えれば良いのかしら。」

「よくぞ聞いてくれました!」


ふふん、と胸を張るエスセナ。

小柄な身体で、更に隈の有る顔でそれをやるとなんというか、いつも以上に遊び疲れた子供のようで可愛らしい雰囲気が強くなる気がするのは気のせいだろうか。


「君達には台詞や演技の方向を少し決めてほしいんだけれど……君達が映像を撮っているという話を聞いて僕は閃いた!」


「君達には、演技という物の経験値が必要なのだとね!」


「というわけで、次の休養日、皆でコミエフィンの劇場の演劇を見に行くよ!!あ、もちろんジュビア先生の分の予約も既に取っているからね!」

「お、おう、そうか……なんというか、行動力が凄いな……まあ、休養日も教師は仕事出来るから私は構いはしないが。」

「アタシ様達の演技を洗練させる、って事だな!任せとけ!」

「……うんうん、良い意気込みだねぇティハ!」


急なエスセナの誘いにほとんど流されるかのようなままに予定が決まってしまった。

……だが、なんだか、エスセナの様子を観察していると、なんだか妙な違和感を私は感じた。

何というか……ウルティハに言った事も間違いや嘘では無いけれど、何か裏にまだ何かがある、というような雰囲気を感じた。

エスセナが隠し事する理由自体は全く思い当たらないが……。


「……まあ、考えても無駄な事、かしら。」


私はやれやれ、と小さく息をついて首を軽く横に振る。

何はともあれ、だ。

エスセナの事だ、悪い事じゃないだろうし、何か意味があるのだろう。

それにこの場で演技に精通している人はエスセナ以外に居ない。

私達のスキルアップが必要、というのも事実ではあるだろう。

それに、私も前世も今世でも演劇を見に行く、という機会は無かった。

コミエドールには劇場なんて物は無く、強いて言うなら見世物小屋としか言えない物や旅の一座がたまに見世物をしていただけだった、と記憶している。

この世界での演技の今現在花形である演劇に触れる事が出来る、という物は、私としても興味深い。

私としても断る理由は特に浮かばなかった。

それに……。


「ソルスに教えたら、喜ぶかしら……?」


そんな事を思いながら、私はエスセナの提案に頷くのだった。

久しぶりにエスセナ登場からのエスセナ大はしゃぎ回でしたね。エスセナもウルティハも基本ハイテンションなので話を書きやすいです。今のいつものメンバーなわけですしね。ただ話がボケで脱線しやすいのが玉に瑕かな。次回は元々書く予定は無かったのですが、友人に相談した結果入れた方が良いと言われたので入れる事になったインフロールの演劇の深掘り回です。もうすぐウルティハとエスセナの話のクライマックスなのでその為の準備回ですね。

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