初の二人撮影、初の二人魔物討伐
来月の中旬に出す予定だったんですけど、つい筆が乗って書いてしまいました。まあ、次は多分来月の中旬になる、はず……。そして初の本格的な戦闘描写です、稚拙な文章かもしれませんが頑張ったのでどうか暖かい目で見てください。
「氷の針【イエロ・アグッハ】!」
「GUOOOO!!」
氷属性の針を一気に大量に飛ばすウルティハ。
ゴーレム達は大量の氷の針が足や腕などに突き刺さる。
そしてこの魔法はそこで終わりでは無い。
刺さった氷の針が氷として纏わりつき、ゴーレム達の動きを阻害する。
動きが素早いというわけではないゴーレムだが、その分大柄な身体による攻撃は広範囲だ。
動きの阻害が出来たというだけで後は楽に戦いやすくなる。
ここは、いっそ新しい事も試してみたい。
「ッ!雷槍・瞬突!」
私は槍と足に雷の魔力を纏わせると、一気に跳躍する。
これは魔法では無く、技と呼べる物だ。
槍の基本戦術である、突き貫くという事。
それをより強力に、より速く、より確実に当てる。
それを突き詰めた私の十八番と言える基本であり私の特技とも言える技だ。
内容は単純。
雷の魔力による加速と浮遊を併用し、高速で移動しながら方向転換を繰り返し、相手を突く。
今回のように複数の相手が居る場合は……。
「はああああっ!」
「「「GUOOOOO!!!」」」
……このように、ほぼ全ての敵を貫く事が出来るのだ。
また、今回は使わなかったが、突進しながら雷の魔力を放出する「雷槍・瞬波動」という物も習得済みだ。
「よっしゃあ!やっぱり楽勝!アタシ様は最強!」
「まだ周りを警戒しなさい。……とはいえ、少なくともこれくらいなら確かに安全に討伐出来そうね。」
撃破したゴーレムのコアや魔力が篭ったパーツをウルティハに回収させ、私が周りを警戒する。
今回は討伐依頼なので別に魔物の素材は回収する必要は無いのだが、この手の素材は売ってお金にしたり、加工して武具にしたり、特にコアなどは魔法の触媒にしたりも出来るので可能ならば回収する方が望ましい。
騎士の訓練の時はあまり素材回収をしたりする事は無いので新鮮な気分だ。
大体訓練での魔物討伐の授業の時は先生や他の学科の生徒が必要だから回収してしまうからだ。
「にしても、今日は闇属性の魔力は使わないんだな?」
「ああ、それは二つ理由があるのよ。まず一つの理由として、闇属性の魔力は忌み嫌う人が多いからあまり使わない方が良いかもしれないという事。」
「ああ、なるほど、確かに闇属性の魔力の方が気になる客とかも居るかもしれないしな。んで、もう一つは?」
「もう一つの理由はもっと単純で……。」
と、私が言葉を続けようとしていた所だった。
「GLUOOOOOLOOOU!!!!」
「……やはり来たわね。」
先程のゴーレム達に似た、だが先程の声よりも大きく低い、唸りとも叫びともとれるような大きな声が大きな洞窟の方から聞こえた。
私達は森と洞窟の境界辺りで戦っていたのだが、明らかに想定していたゴーレム達の強さより私達が倒したゴーレム達は弱かった。
つまり……。
「……なるほどな。親玉の為の温存ってわけか。」
「そう言う事ね。ウルティも、どうせまだまだ魔力は余りに余っているでしょう?多分、今度は温存とか考え無しに撃っていいわ。」
「ははっ、洞窟をぶっ壊したりしない程度にな、お互い!」
現出した槍に闇属性の魔力を込めていく。
白っぽい明るい輝きに走る紫電が黒く、黒く、染まっていく。
やがて黒と紫の雷……「黒雷」と私は呼んでいる。
その黒雷を槍は纏う。
それだけではなく、魔力の残りのリソースを自分の肉体に魔力を流していく。
無属性の、魔法以前の技術である基本中の基本の一つ、「身体強化」。
この国での戦闘はこの身体強化を使って身体能力を上げるのが基本である。
それもあってか、魔法使いが接近戦に強い、という事もたまにだがあり得る。
もちろん、魔力のリソースを全て魔法に回す為に身体強化を使わなかったり、魔力の節約だったり身体能力や体術などに自信が無い人が使わないという戦術もあるが。
ちらり、とウルティハの方を見る。
ウルティハは身体強化を使っている様子は見受けられない。
ウルティハの魔力なら、瞬間的には私の出力、パワーを超える事も出来そうだが、身体強化を使わないという事は徹底的に魔法に集中するタイプなのか、或いは身体強化をする必要無し、と判断したのか。
まあ、彼女の事だ、魔法に強い拘りがあるから使いたくないという理由の可能性も普通にあり得る。
何はともあれ、戦いの準備は整った。
「GAAAUOOOOO!!!」
大きな咆哮と共に大型ゴーレムが襲い掛かる。
それが戦いの始まりを告げる鐘となった。
「はぁっ!!」
ウルティハが無属性の魔力弾を大量に撃つ。
無詠唱だけでなく魔法名も破棄した射撃【フシーロ】は、大型ゴーレムに数えきれないくらいに直撃する。
だが、流石に大型なだけあって、この魔物は先程まで相手していたゴーレムとはわけが違うらしい。
大量の白い魔力弾を全身に受けながらも、ゴーレムの突進は止まる様子は無い。
「UGAUUUU!!」
「ちっ、これじゃダメか!なら、大爆発【エクスプロシオン】!!」
今度は炎の中級魔法を足元を狙ってウルティハが撃つ。
赤い魔力弾が走るゴーレムの足元に着弾すると、着弾地点で文字通りの大爆発を起こす。
「GUOUU!?」
流石にこの爆発はゴーレムもそのまま受けきる事は出来ないらしく、足を止める。
爆発の土煙が巻きあがり、ゴーレムの状態を警戒しながら確認しようとする私達。
だが、予想とは違う物が土煙がまだ収まる前に現れた。
「うおっ!?」
「っ、危ない!」
私は雷の魔力で高速で移動しながらウルティハの手を引いて距離を取る。
ゴーレムの姿を確認するより前に、土煙の中から大きな岩が飛んできたのだ。
それを私はウルティハと一緒に回避する。
そのままの場所に居たら、身体強化をかけている私でも痛いでは済まなかっただろう。
身体強化を使っていないウルティハなら尚更だ。
やがて爆発地点の視界が晴れてくると、岩の正体とゴーレムの状況、その両方がわかった。
ゴーレムの姿は……健在であった。
足の辺りはある程度削れているものの、上半身はまだまだダメージはあまり見当たらない。
そして飛んできた岩の正体……それは、ゴーレムの周りに浮かんでいる淡く光る岩、そしてその周りには削れた地面。
「あいつ、魔物の癖に魔法使ってんのかよ!」
「……知らなかったの?魔物も魔法を使うの。」
「知ってたけど!アタシ様は魔法研究家だけどメインは理論構築と実験だから!!初めて見たの!!!」
珍しく私に突っ込んでくるウルティハである。
でもまあ仕方がない、確かにウルティハは実戦経験はそこまで多くないらしかったので見たこと無いのもまあ理解出来る。
魔物は魔力を主として生まれてくる、魔獣も魔力の影響を受けて魔獣と化すのだ。
私達人間のように詠唱したりはしないかもしれないが、魔物や魔獣が魔法を使ってくるのはある種当たり前の道理と言えるかもしれない。
このゴーレムは恐らく、土の魔力で地面から岩を生成しているのであろう。
この世界にも元素や錬金術に似たような考えもあるのだ、土から岩を生み出すという事も出来るのだろう。
事実として土属性の魔法や魔力は岩や石、宝石や鉱石に影響を与える物も少なくないらしい。
(しかし、魔法の岩攻撃、か……。)
ウルティハの手を離して考える。
「……ウルティ、ちょっと作戦があるの、いいかしら。」
「あん?……ああ、大体は理解したわ。アタシ様もセナ程ではないけれどコントロールには自信あるから、やってやんよ。」
「理解が早くて助かるわ。私の方はすぐにでも行ける、合図は任せるわよ。」
「おうよ、やってやんよ!」
そう、これはこれで都合が良いのだ、「私にとっては」。
私はすぐにでも左手を地面につけて片膝を着けて構える。
突撃の基本の構えだ。
ここからなら一気にスタートして最高速を出せる。
槍を持つ右手に魔力を込める。
バリバリと黒雷の音が鳴る。
勝負は、一瞬で、決める。
「GUOOOOO!!!」
ゴーレムが岩をこちらに発射してくる。
向こうもこちらをしっかりと認識しているから先程よりも正確に、速く、岩を飛ばしてくる。
ゴーレムの意思が読めない無機質染みた「目」を、輝かせながら。
「溶鉄の炎【イエロ・フシオン】!!」
「黒槍・瞬奪!」
ウルティハが水と炎の複合魔法を放つ。
そして、それと同時に私は闇と雷の魔力を一気に放出して高速で一気に駆け抜ける。
迫りくる岩の大砲。
だが、それは動き回る私はもちろん、立ち止まったまま魔法を使うウルティハにも一発も当たる事は無かった。
「全て」、私の槍が撃ち落としていたからである。
「GUO!?」
ゴーレムの、小さな驚く声が聞こえたような気がした。
だが、それはウルティハが放った魔法によって起きたゴーレムの爆発によってあっさりと途切れた。
恐らくゴーレムも知らなかったのだろう。
まさか、魔力を奪う魔力がこの世にあったなんて。
私の闇の魔力によって魔力を「浸食」された岩は、魔力を失って空中からそのまま力なく落下していたのである。
魔法の爆発によって、硬かった筈のゴーレムの岩の外殻は脆く剥がれる。
その顔から、光る大きな球が現れる。
それは、この魔物が形を成す為に必要な核たるコア。
恐らくこのコアの回収は不可能であろう。
ゴーレムのコアは、強力な物だと自己修復し始める事も少なくないと聞いたからだ。
だから。
私は岩を全て突き貫いて撃ち落とす勢いのまま、そのコアの元に飛んで行き。
「これで……終わりよ。」
黒雷を纏う槍で、そのコアを刺し貫いた。
洞窟内に、コアが砕ける高い音が響いた。
後で気づきましたけどこれでこのお話も40話ですね、まさかこんなに進行ペースが遅くなってしまうとは……予定だともう次の章くらいに入っていると思っていたのですが……。これからもゆっくりと、長い目でこの作品を見てもらえると作者としてとても嬉しいです、どうかこれからもよろしくお願いします。