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その「魔法」の名前は 新たな「魔法」になる

(すっ、すっすっ……)

「……!」

(ささっ、すすすすすっ……!)

「「……。」」


最近のエスセナは、授業の最中はもちろん、授業の合間にも、放課後にもひたすらに筆を動かして何かを書いている。

いや、何か、というのは正確では無いかもしれない。

何を書いているのかの大体の見当はついている。

その忙しさもあってか、また今度は別の理由で最近はあまり顔を出さなくなった。

私としては、なるべく顔を出してほしいのだが、今回の理由は仕方ないからなぁ……とも思ってしまう。

私は私で使う物資や道具の準備をしたいし、ウルティハも使う魔法の研究をしたいが、そもそも筆が進まないとどうしようもない。

一応向こうから打ち合わせや欲しい物のリストを出して来たりはしてくるので、筆は進んでいるらしいが、それがどんな脚本になるのかは全然想像がつかないのでそこはもうエスセナのセンスを信じるしかないのが、少し不安が無いかと言えば嘘になる。

流石にとんでもないものを出してくるという事は無いだろう……と思いたいが、エスセナも脚本や演出に口を出したりした事はあるけれど、流石に自分が書いたり演出を考えたりした事は無い、と言っていた。

私達が出来る事ならフォローしたい所だが、私もウルティハももちろんそういう演技などに関しては素人だ。

果たして出来る事があるだろうかて……。

(大見栄切ってあんな事言っちゃったけれど、やっぱり少しくらいプロの手を借りたりした方が良かったのかな……。)

そんな考えが少し頭を過っていた所だった。


「おい、マルニ、ちょっと来い来い……。」

「ん……?何かしら?」


いつもの空き教室。

多分ジュビア先生かエスセナ以外に来そうに無いので、わざわざひそひそ声で呼ぶ理由も無い気はするが、何故かひそひそ声で私をウルティハは手招きする。

周りを警戒するような動作もしている辺り、本人としては隠したいような提案らしい。

私も一応、念のため周りを警戒するようにしながら耳を近づけた。


「なあ、アタシ様達もちょっと書いてみねぇ?」

「書くって……もしかして、脚本をかしら?」

「そう、って言っても、もちろんアタシ様でも、そしてマルニでも多分全部書ききるってことはできねえだろうけど。」

「それは私もわかっているけれど……なるほど、私達が今度はシーンのアイデアの提供をするって事かしら?」

「流石、察しが良いじゃねえか。というわけでな、今回はアタシ様があの魔法を教えておこうと思う。」

「つまり、私達が今のうちにシーンの考案をしたり、あの魔法で提供する為の記憶を今のうちにストックしておく、って事ね?」

「そう言う事だ。」


なるほど、それなら私達にも出来なくは無い。

それに今回の場合は私達が、「上手く」書く必要は無い。

私達の記憶のストックが、シーンのプラン、もしくはシーンそのものの提供になる。

つまり、日々の経験がそのまま生きる可能性も出てきた、というわけだ。

ウルティハが念のため小声で話すのも一応わかった。


「ならその為に、あの魔法に名前を付けなくてはね。」

「あ、そういえばそうだった。」


そう、魔法を教えるとなると、ただ魔法の魔法式を教える、というだけではない。

正確には、魔法式さえ同じにしたり、もしくは使いやすいように改造しても同じ結果に辿り着ければ教える事に成功した事にはなるのだが、問題はその魔法式の組み立ての時である。

前にもおさらいした通り、この国での魔法の考えは、「魔法はサイクルである」、だ。

つまり魔法を循環させる必要があるわけだが、この循環という型式を作る時にはイメージや発想が必要になってくる。


例えば、私がよく使う闇属性の魔法の一例。

闇属性は概念的な要素も含むため魔法によっても異なるが、簡単な闇属性の魔法なら、むしろ簡単な光で例えを考えれば良い。

名前をつけるまでも無い、魔力の弾を飛ばすだけの魔法なら、空間にある光、もしくは光の魔力を浸食の特性を使って、魔力を飛ばす、というだけである。

弾が物体や魔法にぶつかれば、浸食して魔力を奪ったりする事が出来るし、浸食の特性を乗せないなら単純なダメージを与える事も出来る。

ここにどう循環が関わるかと言うなら最後の飛ばした後である。

何かにぶつかろうとぶつからなかろうと、飛距離によって段々魔力は拡散していく。

空気抵抗、に近いものであろうか、私はそういう風に認識している。

闇の魔力が光や光の魔力を中心に他の魔力の粒などにぶつかって、段々と拡散していく。

そして、最後は空気などといった自然や空間に還っていく、という認識だ。


こういった魔法式の構築がしっかり出来ていれば、威力を増強したり、その場で魔法式を組み替えて性質を変えたり、魔法の発動速度を上げたり。

そういった事がやりやすい。

逆に魔力のコントロールだけで強引に魔法を撃つ事も出来るし、魔法が上手い人はそういう駆け引きなども出来る物、と聞く。

私も複雑な魔法では魔法式をあまり考えずに使うが、流石に騎士志望の槍使いの私は多分そこまでコントロール出来る自信は無い。


そこで出てくるのが「魔法の名前」、である。

魔法の名前は、魔法を伝える時に伝えやすくするのと同時に、魔法のイメージを考えやすく出来る。

複雑な魔法だったり大規模の魔法だったりだと、具体的な名前ではなく、偉人の名前やこの世界の伝説や逸話の名前がついていたりでイメージが難しいが……。

そこは前世での伝説の剣とか神話的なものだと考えると、私としてはイメージしやすかった。

(……ゲームとかでよく伝説の剣の名前とか出てたし。)

まあそういうわけで、名前をつければ今後伝えたりしやすいし、私も使いやすくなる、という事だ。


「私は新しい魔法の名前をつけた事は無いけど……やっぱりウルティは名付けたりした事があるのかしら?」

「もちろんあるぜ。アタシ様は魔法の研究家なんだから当然だ。」


嘘である。

正確には、「魔法の名前」は付けた事は無いが、「技の名前」は付けた事がある。

槍での武術で名前を付けたわけではないが、槍と魔法をミックスした独自の技はそもそも無い、というか、そもそも、闇属性の魔法を使った武術なんてそもそも少ないのである。

だから闇属性の魔法や魔力を使った槍術を自分で考える必要もあった。

(……ちょっと技の名前を考えるのが楽しかったのも無くはないけれど。)

そんなちょっと人に言いづらい事を思う私であった。


「でもなぁ、アタシ様、この魔法には付けたい名前がちょっとあるんだけどな。」

「付けたい名前?どんな名前かしら?」

「あ~、えっとだな……。」


私が聞き返すと、珍しくウルティハが頬を赤くする。

恥ずかしい……というか照れている?のだろうか?

こんな顔をするのは本当に珍しい……というか、多分初めて見たかもしれない。

エスセナですら照れたりするのは珍しいのに、というか、ウルティハにも恥ずかしいというか照れるという気持ちも失礼ながらあるんだな、と思ってしまった。

(ちょっと、可愛いな。)

と、心の中で思ってしまった。

こんな風にウルティハに私が思うのも初めてかもしれない。

今まで友達として接してはきたけれど。

ウルティハが周りをまた見回して警戒する。

その様子は先程以上に警戒心が強そうに見える。

よほど聞かれたく無いらしい。

私はそっと耳をウルティハに誘われるままに近づけた。


「ごにょごにょごにょごにょ……。」

「……!ふふ…なるほどね。」


私は小さく笑う。

照れる理由が何となくわかって、その理由が何となく可愛らしくって。



私はウルティハに魔法式を習って、イメージを固める。

大体のイメージは掴めた。

後は、魔法を詠唱するだけだ。

私は、その魔法の名前を口にした。


「偉大な役者、エスセナ【グラン・アクト・セナ】」


教室に、エスセナとの記憶の映像が流れる。

映像に流れる、これからこのインフロールに名前を残す偉大な女優、エスセナの笑顔は、輝くように可愛らしくて、美しかった。

魔法の理論を考えているときはかなり頭を使わないといけないので凄く疲れます。この国の魔法の基本的な構築が今回の話で出てきますが、文にもある通りそれはあくまで基本的な話であり例外は幾つも出てきますがその話についてはまたいずれ。理論的な話ばかり考えていて、文章が纏まっていないのは自分でも感じるので、読みづらいと思うので申し訳ないです。しっかりお話を中心に次の回以降は書いていきたいと思います、頑張ります。

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