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前世の記憶、それは私達の武器

ルビとか傍点の使い方が未だに分かっていないのでカッコで強調をしたりしているので可能ならいつかある程度文章を手直ししたいですね…あと、ゲームをなるべく早めにやらないといけないような状況になってきたのでもしかしたら投稿速度が落ちるかもしれません、申し訳ありません。

「エッセ!」

「っ!?……マルニ?」


学園を探し回り、色んな生徒や教員に聞き出し、ようやく図書室に居る事を突き止めた私達……主に私は、いつもならしないであろう騒音厳禁の図書室の扉を勢い良く開ける。

エスセナは、本を読んで居た所であった。

ここならバレないと思っていたのか、私の予想外に大きな声に驚いたのかビクッ!と反応して。

少し目線を机の方に動かして何を読んでいたか見る。

まあ予想の範囲内の内容だった。

経営学、企業運営のマニュアル、産業についての研究書……。

明らかに普段のエスセナだったら読まないであろうお堅い内容の本ばかりだった。

私は少しイラっとする。

さっきまでは心配や、もしかしたら同情の気持ちも混じっていたかもしれない感情だったが、今は感情のバロメーターは怒りの方に振り切ろうとしている。

それもこれも、私達にもっと話そうとせず自力でどうにかしようとしている事と、私達に隠れてこそこそやっていた事が理由である。

……まあ普段の私の行動や私がやろうとしている事を考えると、人に言う資格は無いかもしれないが、それはそれ、これはこれ、今回は棚に上げさせてもらう。

「え、えーと、マルニーニャ嬢、図書室ではお静かに……。」と恐らくここの司書の人が注意してきた。


「大丈夫です、エッセを引き摺って連れて行くだけなので。エッセ行くわよ。あとウルティ、貴女は本を代わりに片づけた後、私達をいつもの場所に追いかけてきて。」

「は、はぁ!?君は何を言って……ってわっ!?」


反論しようとするエスセナを無視して後ろから首根っこを掴んで私はエスセナを図書室から引き摺って行く。


「お、おい!?ああ、えっと、騒がしくしてわりぃ……!」


後ろでウルティハの慌てた声が聞こえてくる。

ふんだっ、たまには私が振り回す方で何が悪い。

まあ多分後からウルティハはすぐに追いかけてくるだろう。

だからこそこのエスセナの事が今は必要なのだ。

私は目的地を目指して歩いていく。


「あ、あの~、マルニーニャさん?そろそろ離してくれても良いんじゃないかなあって僕思ったりするんだけれどぉ……。」

「うるさい、いいからついてきなさい。」


ふんっ、力は騎士志望の私が三人の中で一番強いのだ。

絶対、今回は逃がさないんだから。


というわけで移動する事空き教室。

因みに階段や段差はエスセナの身体を持ち上げて運んだ。

ダイエットの体系維持もあるし小柄でスタイルも主張が激しくない身体だからか、騎士志望組の中でもそこまで筋力がある方でもない私でも持ち上げるのは割と簡単だった。

流石に段差とか「お尻が変形した!」とか言われたら流石に申し訳なくなってしまうので。

エスセナをとりあえず座らせる。


「いたた……もう、全く、いきなり来たと思ったら乱暴すぎやしないかい!?」

「私達を避けているのがわかっていたからよ、全く……だから、きっちりとお話がしたいと思ったからね。」

「うっ……さ、避けているなんて、何の話やら……。」

ドタドタと教室の外から足音が聞こえてくる。

「はあはあ、ほ、本の片付けやってきたぞ……というか、本の大体の場所をアタシ様が把握していたから良かったけれど、普通他の奴に頼んだらもっと時間掛かるぞ普通……。」

ウルティハが息を切らしながら来た。

どうやら急ぐ為に走ってきたらしい。


「ちょうど良かったわ。二人の協力が必要な事だから。」

「あ、ああ?協力ぅ?」

「僕も協力って……僕の事なら、多分僕に出来る事はもう……。」

「予想してたけど、もう諦めたから私達に迷惑をかけたくなくて避けていた……って事かしら?」

「っ……な、何の事かな?だから僕は避けたりしてなんか……。」

「お前な……アタシ様は当たり前として、まだ知り合ってそんなに経っていないマルニにもバレバレな演技とか、お前らしく無いぜ天才女優。」

「くっ……。」


エスセナは俯く。

私の指摘もウルティハの指摘も図星だったらしく、何も言い返せなくなる。

多分、エスセナもエスセナで、避ける事には罪悪感があったのだろう。

あくまでも想像だが……多分、演技として嘘をついたりするのは得意なのかもしれないけれど、エスセナとして、水嶋エンジェ王姫としては嘘をつく事はあまりしたくないのかもしれない。

正直、役者だとか芸能界だとか、この世界に転生した後も貴族社会だとか……色々な事を経験して、色んな汚い部分、暗い部分を見てきたであろうに、この純粋さを保っているのは、天性のお人よしなのだろうか、それともこの純粋さがこの人の役者としての強さの一つなのだろうか。

素人ながらに、そう思わざるを得ない所だった。

そして……だからこそ、そんなこの世界で出会った友達だからこそ、私も助けたい。

エスセナの事も、エスセナの事を気にかけるウルティハの事も。


「……まだ、諦めなくてもいいかもしれない、って言ったら、エッセは、ウルティは、どう思うかしら?」

「「……え?」」


二人は私をじっと見つめる。

私の口から出てきた言葉が予想外の物だったのだろう。

……正直私としても賭けの部分もある。

だが……私の思いついた方法がもし上手くいけば、「エスセナが役者である必要性」も、「ウルティハの魔法の必要性」も証明出来る。

そうすれば、もしかしたら条件をクリアしたまま、エスセナの役者の道を護る事も、アクトリス家とインベスティ家が関係を悪化を防ぐ事も出来るかもしれないのだ。


「でも、そんなの出来るなら天才のアタシ様が気づくはずだぜ、何でそんな事思いついたんだマルニ?」

「そうだよ、それに僕も必要な手段って僕も思いつかなかったってことだよね?」

「……いや、正確には、二人とも方法自体は思いついてはいたのよ。でも、あまりにもその方法が小さな方法だったから忘れていたというか、見逃していた方法なの。……私も、ヒントが無かったら思いつく事は無かったかもしれないくらいに。」

「もう既に……。」

「思いついてる方法……いや、もしかしてだが……。」

「ふふ、流石気づいたみたいね。」


表情の変わった二人に私は小さく笑う。

そう、その答えはもう既に「在った」。

だが、その答えはあまりにも身近すぎて、小さすぎて。

何より、多分試した事が無かったから確証が無かった。


でも、【あれ】が出来るなら、きっと私が考えている事も出来る筈。

そして、その私の考えは、二人の表情を見れば、それは【可能】である、という確証を得る事が出来た。

私は、堂々と宣言する。


「私達でシレーナの新しい文化……『映画』を作るわ。」


それは、私にとっても、この国にとっても、初めての挑戦になるのだった。

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