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新たな出来事の始まりは突然に

結局二人の模擬戦は決着は着かず、あまりの派手な魔法の打ち合いに、段々といつのまにかギャラリーが出来てきたので途中で中止になった。


「いやあ、ここまで派手に暴れるのはやっぱり気分が良いな!途中で終わったのは消化不良だけどよ!」

「全く、僕達の共演はこれからがクライマックスだったというのに、観衆の皆には勿体ない事をしてしまったねぇ!」

「いや、あれだけ派手に魔法を打ち合ったら目立つでしょう……。おまけに私が居るのも忘れて拡散する魔法を撃ちまくっていたし。私が魔法で弾いていたから良かったけれど……。」

「なぁに、本気になったらあれだけじゃ済まないんだ、良い予行演習になっただろう?」

「予想はしていたけれど、あれで本気じゃないのね……。」

「あったり前だろ!アタシ様の実力があんなもんなわけないだろ!」


訓練場から帰りながら私達は談笑する。

談笑と言えば談笑である、恐らく、多分、きっと、私達なりの。


だが、二人の戦いを見ていて分かった事がある。

使える魔法が違うとは言え、極力二人の装備などを同じ条件にしていても、二人は二人でスタイルの違いが出るという事えある。

エスセナは属性を付与した魔法であろうと基本に忠実なスタイルを貫く。

だが融通が聞かない頑固なスタイルというわけでは無い。

むしろ、シンプルだからこそ幅広い。

エスセナが使える属性は無、水、氷属性だ(少しだけ風属性の魔法も使えるが実戦では使えない日常レベルの魔法らしい)。

無属性はてっきり、威力重視の攻撃にしか使えないかと思っていた。

だがエスセナは無属性の魔法を壁を貫く貫通性の高い魔法にして撃ったり、攻撃だけでなくバリアみたいに広げたり下に向かって撃って跳んだり、無属性だけでも様々な使い方がある。

氷属性は氷の壁や氷の道を作ってみたり相手の魔法を凍らせたり、水属性は自分の身体を水で押したり足元に水を流して滑ったり、、水を下に噴射して空中を浮遊したり。

複雑な魔法を使わなくても、シンプルな使い方だけで幾つもの魔法の使い方を見せる応用力は、極めた基本の力があるからなのだろう。

エスセナが普段の魔法を基本の魔法に絞る理由が何となく分かった気がする。


対するウルティハの魔法は炎、水、風、氷、雷、そして前は知らなかったが熱も使えるらしい。

普通はこんなに沢山の魔法の属性は使えない。

使えないというか、属性ごとの内包する魔力量の違いのせいで、使えても実戦レベルじゃなく、あくまで日常や補助くらいでしか使えないという事がほとんどだ。

だが、ウルティハは炎で周囲を包み、水で魔法を吹き飛ばし、風で切り裂き、氷で辺りを凍らせ、雷で焦がし、熱で天候を操作した。

全ての魔法が、属性によって程度はあるものの、実戦レベルに魔法を使える。

聞けば、今まで熱属性を使わなかったのは、杖などの外部媒介が無いとまだ実戦レベルに使えないかららしい。

杖などには魔力の増幅効果がある杖などもあるとは言え、それ一つがあれば更に違う属性も使えるというのは凄い。

そして、それを、自分の手だけでコントロールしようという気持ちは凄いと思うと同時に少しだけ分かるような気がしてきた。

だって、事実上自分の魔力の一つが封印されているような状態なのだ。

私だって風の魔力はほとんど実戦レベルでは使えない。

それが使えるようになると思ったら、私も現出以外の戦い方も模索したくなる。

魔法を芸術と称する程に魔法を愛しているウルティハなら、その思いは尚更であろう。

自分の全ての魔力を、思う存分使いたい。

その為に自分だけでコントロールする力と技術を求める。

なるほど、二人がお互いに違う方法、違う道で魔法を追究する理由が、今日でまたわかった気がする。

要するに、二人とも自分に無い物を欲しているのだ。

ないものねだり、と聞くとあまり聞こえは良くないが……。


【自分の可能性はまだまだこんな物では無いはず】


そう信じて努力する事の難しさと、それが出来る心の強さ。

それを感じざるには居られない。

そうして、私の中には一つの疑問が生まれた。


(本当に、私の選択肢は二つに一つなのかな……。何か、もっと良い方法が……それこそ、両方の選択肢を手に入れる方法が……。)、と。


それがより困難な事は分かっている。

可能性が有るのかも分からない。

だが……もし、【私とソルス、二人の幸せを掴む道があるのなら】、と。

そう考えずには居られない私だった。



そんな模擬戦から少し後の事である。


「というわけで、アタシ様達の研究がバレちまった☆」

「バレちゃったっ☆」


「…………はぁ!?これバレたらいけないような実験だったの!?」


私は思わず大きな声が出てしまった。

いや、自分達の実験は周りから目立たないようにやっていた事自体は覚えている。

だがそれは、私の闇属性に対する周りからの印象の為だとか、やっている魔法の規模が大きすぎたから警戒しているのだと思ったが……。


「というか、ちゃんと訓練の許可とかは毎回取っていたはずでしょう?なら今回はバレたって、何か問題があるのかしら?」

「勝手に許可無く魔法の研究は本来しちゃいけないらしくてね。」

「がくっ。」


しまった、思わずはしたない事にギャグみたいにずっこけてしまった。


「……じゃあ、私達は勝手に許可無く魔法の研究をしていたってことになるの?」

「一応今回はアタシ様の研究論文の資料集めを目的として、学園とは関係ない魔法研究として見逃してもらった。」

「なら問題は無い筈でしょう?そのまま私は魔法研究の助手にでもなったとでも言えば……。」

「うーん、いつまでその言い訳が通じるかもわかんねえし、アタシ様の助手って立場になると、アタシ様が論文を出したり研究を発表したりで成果を出さなきゃ行けないし……。」

「……いけないし?」

「何より、お前のこの先の道がアタシ様の助手になってしまうかもしれないぞ?」

「……っ!?それは私も困るわ!」


私は騎士志望として、もしくは悪役令嬢として破滅する為にこの学園に来たのだ。

第三の選択肢が出来るのは構わないが、エスセナとウルティハの助手、という道は少なくとも私の想像する限り、私の為にはなっても、ソルスの為になるビジョンが見当たらない。

短いとはいえ、この日々でエスセナとウルティハの事を大事な友達だとは思い出ってはいる。

だけどそれでも……少なくとも今は、大事な人の為の道を変えるわけにはいかない。

大事な選択肢をここで誤るわけにはいかない、自分の想いを、自分の気持ちに譲るわけにはいかない。


「……わかったわ。とりあえず、何か考えは浮かんではいるのでしょう?」

「僕にも聞かせてほしいな。」

「エッセ?」


エスセナも知らないのは意外だった。

てっきりいつも通りエスセナとウルティハの二人で考えた物だと思っていたけど。


「色々今後の事を考えた上だが……ごにょごにょ。」

「うん……?」

「何か言ったかい?」

「ああ、えーっと、まあ深くは考えるな!」


珍しくウルティハが言い淀んだのを見て私とエスセナは首を傾げた。

だが誤魔化すように首を振るウルティハ。


(怪しい……)


そう思ったが、少なくとも今は深く気にしない方が良い……のだろうか?


「とにかくそうだな……とりあえず、当面の目標は!」



「アタシ様達の研究を、学園の正式なクラブにするぞーー!」



「「お、おー……?」」


かくして、私達は研究を学園に認めてもらう為の活動が始まった。



これが、まさかあんな事の始まりになるとは、私は、私達は思わなかった。




この物語は、バトル描写はありますが、バトル物と言い切るには恐らくバトルが多くない作品になると思います。だからこそ、この異世界での青春と、運命に向かい合う物語を楽しんでいただけるように頑張りたいと思います。私なりの思いを込めて、皆さんの中に残る何かを残せたらと思います。

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