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三人のお茶会 その後

「んじゃあまた明日なー、楽しかったぜ!」

「たまにはこういうのも悪くはないね、またお茶会しよう!」

「……ええ、わかったわ、その時は、また。」


唐突に始まったお茶会は遅くまで続き、気づいた時には日は沈みかけていた。

ウルティハとエスセナは自分の部屋に戻っていった。

二人を見送った私はフレリスの手伝いでお茶会の片付けをする。

本来貴族がこういう片付けなどはする必要は無いのは分かっているが、私がやりたいというのと、自分で出来るようになりたいという理由で片付けも料理も勉強している。

貴族が自分で料理をする、などという事はそうそう無いかもしれないし、この世界での花嫁修行のようなものにはならないだろうけれどもそれでも良い。

色々出来るようになる。

それが私は嬉しいのだ。

この身体を自由に動かせるというのが。


「……まさか、お嬢様が孤児院でこっそりとお友達を作っていたとは、私は知りませんでしたよ。」

「ぶっ……き、聞いてないフリをするんじゃなかったかしら…。」

「あくまで聞いてないフリですから。内容はもちろん聞いていますとも。お嬢様の事だからこそ、ええもちろん。」

「わ、私の事だからってどういう意味よ……。」

「ふふ……私からすれば、孤児院の皆は妹や弟のような物です。そして、お嬢様もそれに近い物を感じます。」

「全く……でもまあ、確かに、フレリスみたいなお姉さんが居たら、確かに頼りがいがあるわね。」

「あら、嬉しいお言葉、ありがとうございます。ではご夕食に致しましょうか。」


片付けが終わると、今日の夕食になる。

今日の夕食は野菜とお肉の煮込み料理だ、イメージとしてはシチューに近い。

他にもパンやサラダなどがある。

それをフレリスと食べていく。

本来使用人と貴族が一緒に食事を取るなどという事は無いのだろうが、私はフレリスと共に食事を取るこの時間が好きだから気にしないようにと言って一緒に食べる事にしている。

まあ恐らくそう言う事が多分フレリスも分かっていたのだろう、特に何も言わず気にせず一緒に食事を取る事にしている。

食事を取りながら、フレリスと私は話す。


「……で?フレリスはどこまで聞いていたのかしら?」

「どこまで、申しますと?」

「分かっているでしょうに……私達の話をどこまで聞いていたのかしらって事。」

「ああ、その件でしたか。」


ふふ、と分かっていなかったフリをしてフレリスは笑う。

こういう時は大体、とぼけたフリをする、それが分かりやすかったとしても。

こういうからかいや冗談の言い合いも、私達の普段のコミュニケーションだ。

もし他の貴族の人とこんな会話をしていたら果たしてクビで済むのだろうか……という風に思う事はあるけれど、まあ器用なフレリスは多分はそういう時は多分そんな下手な事はしないのだろう。

良い意味で、しっかり砕けた対応をするべき相手はしっかり選んでいるのだろう。

前世での学校の先生や先輩とか看護師さんにもこういう人は出会った事は無かったから、フレリスは本当に新鮮だし、本当に頼りになるお姉さんという感じがする。

自分とはだいぶ離れた性格だけれど、こういう人になれたらかっこいいだろうな……と、思う事もある。


「そうですね……まあ、お嬢様の話が聞こえていた時点でもう察しているかと思いますが、ウルティハ嬢のお話もエスセナ嬢のお話も大体聞こえていましたよ。」

「やっぱりね……まあフレリスの事だから言わなくとも分かっていると思うけれど、他言は無用よ?」

「ええ、私の話し相手は学園の職員や他の使用人くらいですからその方々との話のネタにするくらいで……。」

「フ~レ~リ~ス~……??」

「ふふ、冗談ですよ、私の胸に秘めておく事に致しましょう。」

「全く……まあ、そこらへんはあまり心配はしてないけれど。」

「ありがとうございます、お嬢様。」


それはそれとして、いつも会話のペースを握られているのは悔しい。

いつかフレリスを手の上で転がしたい……。

そう思う私であった。




一日のやることも明日の準備も終わらせて、後は寝るだけになった。

だが、だからこそ、一日の終わりとして、私のやりたい事があった。

私はベッドのすぐ近くにあるチェストから、ブローチを取り出す。

ベッドに座ると、目を瞑って集中する。

魔力を込めて、その糸を辿るように。

そうしていると、やがてその先から返ってくるように少女の声が届いてくる。


『……あ、マルニ様!』

「こんばんわ、ソルス。」


ソルスの声、今日も元気に、でも優しい声が私の中に響く。

今日まさに話題にした魔力通話で、いつもの夜の会話をする。

流石に毎日は出来ないけれど、ほとんど夜はソルスと寝る前にこうやって話すのが私の中でのルーティンとなっていた。

以前、よく話していて迷惑ではないかと思って聞いた事があったが、

『むしろ私は毎日話せるなら話したいです!マルニ様のお話を聞くのが私の一日の一番の楽しみですから!』

と元気に返されてしまってからは、あまり遠慮はしないようにしている。

もちろん私の為にソルスが気遣ってくれた可能性も無くはないが、少なくとも私の中でのソルスのイメージとしては、そういう時に嘘を言うようなタイプでは無いと思っている。

それに逆にソルスから声をかけてくる事も少なくない。

もちろん私はそれが嬉しい。

だから、私達の中ではそこはあまり気にしない事になっているのだ。


「今日はウルティハとエスセナと、初めてお茶会をしたのよ。お互いの昔の話をしたりしたわ。……すこしだけ、ソルスの事も話したのよ?」

『最近はウルティハ様とエスセナ様とのお話をよくしていますよね……マルニ様と一緒にお茶会なんて羨ましい~……っ。』

「来年になったらソルスもきっと色んな人に呼ばれると思うわ。だから来年を楽しみにしていなさい?」

『はいっ、もちろん、マルニ様のお茶会にも呼んでくださいねっ。』

「……そうね。」


来年…来年か。


私の中で、来年というのは運命が決まる一年だと思っている。

……私の中では、まだ迷っているのだ。

この一年は、私のどちらの道を選ぶか、それとも両方の道を選ぶのか。

私は、二つの道の中で迷っている。

……それを、ソルスに悟らせるわけにはいかない。

私は言葉を濁した。


『そういえば、私の話もしたって、どんな事を話したんですか?』

「ああ、ソルスとアルデールは私にとっての大事な存在で、特にソルスとはこうやって魔力を使って話してるくらいって話したわ。いつどうやって出会ったのかとか、一緒にどうやって過ごしたのかとか、ね。」

『私が、マルニ様の大事な存在……!!え、えへへ~、そんな、嬉しすぎて照れちゃいますよ~っ。』

「二人はそっちよりも、会話の手段の方に興味津々だったけれどね……。」


あはは、と小さく苦笑しながら言う。

でも、ソルスの反応は本当に可愛いな、と思ってしまう。

沢山話すようになってだんだんわかってきたのだが、ソルスは結構褒められるのが結構好きみたいだ。

もちろん未だに謙虚で遠慮する所もあるのだが、照れたり恥ずかしがったりしながらも、結構嬉しそうにしている。

特に照れている所なんて、ソルスの事をぎゅっと抱きしめたくなるくらいに可愛い。

小動物的でもあり、少女らしさが未だに残っている感じが沢山褒めたり可愛がりたくなるのだ。


『そういえば、最近不思議な事があるんです。』

「不思議な事?何かしら?」

『なんだか、最近私の魔力が増してきた気がして、でも何故かそれが上手く引き出せなくって…。』

「……っ!」


それは、もしかして……光の魔力に目覚め始めている兆候、という事だろうか。


『もっと出来る、もっと引き出せる筈なのに、もっと強く魔法を撃てる筈なのに、よくわからなくって…ちょっと悩み中なんです。』

「……もしかしたら、魔法の訓練の結果かもしれないわね。ソルスの才能が開花し始めているのかもしれないわよ。」

『だったら良いんですけれど……もっと上手くなって、上手く引き出せるようになりたいなぁ。』

「まだ才能に対して身体や技術も追いついていないのかもしれないわね。……焦らずゆっくり、基本から練習しなさい。」

『焦らずゆっくり……はい、頑張ります!』


(そう、貴女はいずれ、光属性の魔法に目覚める。それは貴女の大きな転換点になる。だから、いまの内に練習も勉強もしっかりやりなさい。きっと、それは貴女を助けるでしょうから。)


本当はそう言いたい。

でも、それを言うわけにはいかない。

だってその力に目覚める時は……。

きっと、私は貴女に倒される立場になるだろうから。


そう思った心を私は胸に秘めながら、今日は私達はこの後少し話をして眠る事にした。


本当はリハビリとしてちょっとした幕間にするつもりだったのですが、長くなったので普通に本編にする事にしました。新しい仕事に少しずつ慣れてきたので、段々と更新ペースを上げていけたらなぁと思います。頑張ります。

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