三人のお茶会 ウルティハの場合
すいません、仕事が変わって色々大変なので投稿が遅くなりました…!仕事に慣れるまで投稿頻度が落ちる
とは思いますが、今後ともよろしくお願いいたします…!
「さ・て・と、次はアタシ様の番かなぁっと!」
エスセナの話が終わるとウルティハはテンション高めに言う。
「確かに、二人の話を聞いたならウルティの話も是非聞きたいわね。」
「もちろん、僕からのネタバレは無しで話してもらうとしよう!」
「あー?なんだぁ、アタシ様の話がついでみたいな感じの流れはよーう???」
「そ、そんな事は無いのだけれど…。」
ウルティハの視線が強くなる。
別にエスセナの話に対してウルティハの話に興味が無いとか重要ではないとかというわけではない。
ただ、私達、特にエスセナの話を聞いたからか、ある程度の経歴の穴埋めは大体出来てきた。
そう考えると、ウルティハの話は想像がつかない。
エスセナとの出会いの話とか、だろうか…?
「ふふん、アタシ様の話は二人の前世だとかとは全く関係ないからあまりわかんない、だとかだろろぉ?そんな事は承知の上よぉ!」
「だが!二人と違ってアタシ様は純粋にこの世界の記憶しか持っていない!だからこそ、アタシ様の見る景色はこの世界の人間から見たこの世界の景色、って事さ!はっはっは!」
ウルティハは笑う。
ここまで自信満々な態度だと、確かに私も気になってくる。
「そこまで言うなら、ぜひ聞かせてほしいわ。」
「僕はまあだいたい知っている気がするけど…改めて振り返るというのも大事だ、僕にも聞かせてくれたまえ!」
「よぉーし、テンション高くなってきたところで行くぞ!アタシ様の過去編!」
ジージージー…
「ねえ、なにかしらこれ…。」
ウルティハが指を壁に向かって指すと、その壁が突然光りだした。
その光が収まると、まるで昔のフィルム映画のようにジージーと鳴りだしたのだ。
「んー?エスセナ提案、アタシ様開発の、『人や物の記憶や情景を切り取ったかのように流す魔法』だぜ!因みに名前はまだ考えていない!」
「僕が映画や投影機を参考に提案したものだよっ。」
「な、なるほど…?」
まさかこの世界で映画のようなものを見るようになるとは思わなかった。
いやまあ多分エスセナが提案しなかったら多分この魔法も無かったんだろうけど…。
「ほらほら、こういうのを見る時は私語厳禁が基本なんだろ?始めるぞー。」
「わかったわかった…。」
とりあえず私達は座ってみる事にした…。
『この映像は、アタシ様とインベスティ家の提供でお送りするぜ!』
「いや何でよ。」
「「まあまあまあ。」」
気を取り直して…現れたのは子供の姿、そして、本や資料が散乱している室内だった。
「アタシ様の家、インベスティ家は知っていると思うが研究家の多い一族だ。そういう血筋というか、そういう性分の集まりというか…だから親も兄妹も親戚も、何かしらの研究したり学者だったりが多いんだ。」
映像の場面が切り替わっていく。
小さい子供からだんだんと少女になっていく。
…それにしても、やっぱり美少女だなと思ってしまう。
今は荒くてがさつな所が目立つウルティハだが、昔のウルティハはまるでお人形のように綺麗な、おしとやかな雰囲気が漂う姿の映像が流れる。
「昔のアタシ様は今と違って奥手でなー、まだ魔法に夢中になる前はまさにお嬢様って感じだったんだぜー。」
「そうね…確かに綺麗な女の子だわ。」
「だろ?だろ!?」
「そんなウルティハが今はこんな感じなんて…時の流れは残酷なものだねぇ。僕は悲しいよ。」
「今のアタシ様だって見た目は美人でナイスバディだろ見た目は!」
「見た目はって、自分で言うのね…。」
からかう為に悲しむフリをするエスセナと自分を見せつけようとするウルティハ。
ついそんな二人に小さく笑ってしまった。
でも、ウルティハは確かに今も物凄く綺麗だと思う。
喋りだすと破天荒というか荒い性格だが、喋らなかったら多分社交界では視線を奪う存在になるだろう。
…まあ、本人に言ったら絶対に調子に乗るので言わないが。
だんだんと映像が変わっていく。
次はウルティハが、もう一人の少女と手を握っている所だった。
「…これは、誰かしら?」
「これは間違いない、僕だね。」
「そ、貴族が集まった舞踏会で初めてエスセナと出会った時だな!懐かしいなぁ…。」
「確か、アクトリス家とインベスティ家の縁で僕達も呼ばれたんだったかなぁ。僕達の祝福すべき出会いの瞬間だ。」
「そー、それで、この時がアタシ様が魔法を研究するきっかけが出来た日だったんだぜ。」
「「そうなの??」」
「って、エスセナも知らなかったのね…。」
「あまりこういう事は聞いたことが無くってねー。」
意外だった。
いつも二人は一緒に過ごしてるからこういう事…というか、色んな事を話し合っているものだと思っていた。
この二人にもお互いについて知らないことという物があるんだなと思った。
「是非詳しく聞かせてほしいわ。」
「オッケー、なら話していくか!」
「アタシ様はインベスティ家の付き合いで社交の場に呼ばれたり貴族や王族の付き合いも多かったんだ。インベスティ家の研究資料をや研究内容を事業や商売に活かしたりな。実質王族のお抱えみたいな部分もあるしな。んで、アタシ様も世渡りの勉強の為に一緒について行ったりしていたんだ。研究の為の資材やサンプル、資金の調達にもなるしな。で、ある日アクトリス家との意見交換をしたいから兄ぃ様と一緒に舞踏会に行ったんだ。そこで初めて出会ったのが…。」
「この僕!というわけだねぇ。…でも、確かに今考えると、確かに今と比べるとだいぶ大人しかったかもしれないね、ウルティハは。まあすぐにその印象は消え失せるわけだけど…何がきっかけだったのかな?」
「………。」
私とエスセナは視線を送る。
私が同じ状況だったら多分たじろぐかもしれないけど、そこはウルティハだ、度胸が違う。
「アタシ様は、その時にエスセナに話を聞いたんだ、前世の話を。」
「えっ、初対面だったのに前世の話をしたの…?」
「ああ、思い出した。元々インベスティ家自体貴族の中でも変わり者って話を聞いていたから、前世での演出の真似をしたり出来るか聞いてみたんだった。でも、確か僕は前世の話だってのはあの時は隠していた筈だけど…?」
「もちろん、その時は前世の話ってのは聞いて無かったぜ?後で前世の話聞いたりして、もしかしてって思ったってことだよっ。」
「なーるほど、そういう事かぁ!」
「「はっはっは!!」」
二人は笑う。
何が面白いのかはよくわからないが、なんだか二人で楽しいのなら良い…のだろうか…?
「まあとりあえず、そこでアタシ様は色んな話を聞いたんだ。そうしたらな、何を研究すべきか、そもそも家を継ぐ…というか、研究家の家系を継ぐべきか悩んでた時期だったんだよ。その筈だったのに、エスセナの…エッセの経験や提案を聞いていたらドンドン新しい魔法のアイデアが浮かんで来たんだよ!」
「思い出した思い出した、確か、僕がティハに『研究家なら魔法の研究もしてるのかな?なら教えてほしい、考えてほしいんだけど』って、声を掛けたんだっけ。」
「そーそー、そしたら話してるうちに、なんというかこう…熱いものがカーッて流れ込んで巡ってきた
っていうか!魔法のアイデアを考える事ってこんなに楽しいんだなっていうか、この熱い衝動は何かって言うか!」
ウルティハは拳を握りしめる。
まるで、自分の中の心の炎を表すかのように。
抑えきれない程の思いを示すかのように。
…ウルティハは普段の行動や言動自体はどちらかというとバカとかぶっ飛んでいるとか、そういう部類に入ると思っている。
でも、誰よりも魔法をとても楽しんでいるのと、それと同時に魔法に対しての熱さ、向上心は誰よりもあると思っている。
よく遊んで、よく学ぶ。
それを体現するかのような存在である。
なんというか、色んな事を楽しんで、そこから何かを学ぶ、何かを得る。
こういう人を『天才』、というのだろうか。
「んで!アタシ様は魔法の研究をしてみる事にしたんだ!そしたら研究が進んで進んで、何よりそれが楽しくってな!もうアタシ様は天才だって思ったし、何よりこれこそアタシ様の運命だ、天啓だって思ってな!それからは魔法の開発、改良、、簡易化!魔法や儀式に使う道具や触媒の研究や代用化の研究だったり!魔科学の研究だって科学とはこういう事かって最高だ!」
「お、落ち着きなさい…ほら、お茶でも飲んで…。」
「ん…んぐ…。」
あまりにもテンションが高くなってきたウルティハに紅茶を飲ませて落ち着かせる。
顔は綺麗なのにちょっと目が怖かった。
なんというか、目に光が無いというか狂気的というか。
やはりマッドサイエンティストの部類なのではないだろうか…と思ったくらいに。
「ふぅ…ともかくアタシ様の人格形成に大きくこの出来事は関わっていて、そこからアタシ様はドンドン美しく強かな女になって行ったってことよぉ。強さも美しさもアタシ様の人生に大事だったからな。」
「強さ強かさはまあ分かるとして…美しさ?」
「ああ、まず前提として、アタシ様は強い女だ。」
「ナルシストだ…。」
「そしてアタシ様は美しい。」
「凄くナルシストだ…。」
「もちろん僕も美しい。」
「こっちもナルシストだ…。」
私の周りに居る人、自己肯定感が凄い人ばかりなのだろうか…。
なんでこんなに自分に対して自信に満ち溢れているのだろうか…。
「まあ戦いの強さは別として、研究の為にもアタシ様自身の為にも強かで居ようと思っている。」
「それは…何となくわかるけれど…。」
「それはそれとして、だ。」
ぐっ、とウルティハは拳をこちらに向ける。
「アタシ様の魔法は美しい、いや美しくなきゃいけない。だって、アタシ様の魔法は人に便利な魔法なんだ、人を笑顔にする魔法なんだ、アタシ様の魔法は、美しいものなんだ。」
「だから、アタシ様も美しく在るんだ、アタシ様の魔法に恥じないくらいに。」
「……なるほどね。」
私は無意識に笑っていた。
物語の作者が美しく在らなければいけない、なんて決まりはもちろん無い。
物語と作者の現実は別だからだ。
それは前世でも、この世界でも同じなのだろう。
だが、ウルティハは自分自身も美しくあろうとしている。
ウルティハにとって、魔法は確かに研究する物なのだろう。
それは理性的な物なのかもしれない。
でも、それと同じように、もしかしたらウルティハにとって魔法は芸術でもあるのかもしれない。
魔法は人に便利で、人を笑顔にして、人を豊かにする。
そんな魔法だからこそ、魔法も、それを生み出す自分自身も、魔法のように美しくあろうとしているのかもしれない。
この世界での魔法は当たり前の『技術』であり『文化』であり『当たり前』なのかもしれない。
けれども。
ウルティハにとって、まるで私の前世の世界の物語、おとぎ話のように。
魔法は、ウルティハにとっての『魔法』だったのだろう。
どこまでも自分の為に生きる人。
でも、自分の為に生きる事が誰かの為になる。
それを知っているウルティハも、やはり素敵な美しさもあるのだなと。
そう感じたのだった。
ウルティハとエスセナはノリが近いので書き分けが一人称以外難しいですね…というか、出していくキャラクターでウルティハが一番扱いが難しく感じます。はたしてこのエスセナ・ウルティハ編はしっかり纏められるやら…頑張ります。