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二人の始まり、世界の始まり

皆様、遅ればせながらあけましておめでとうございます。また、この度の能登半島沖地震で災害に見舞われた皆様に対し、心よりお見舞い申し上げます。皆様の一日も早いご再建をお祈りいたします。私は一度地震で避難した経験があるくらいで直接的な被害にあった事はほとんど無いのですが、それでも避難中や報道を見るたびに心が苦しくなる日々が続いていました。直接被災したことの無い自分ですらこうなのですから、現地に居る方々の物理的生活的な負担はもちろん、心の痛みは想像もつきません。だからこそ自分の稚拙な文章でも、被災された方もそうじゃない方も少しでも元気になれるとしたら幸いです。今年は物書きとして、本気で頑張って行こうと思っていますので、どうか本年も、今後ともよろしくお願いいたします。

そうして私が現出、および日常で使える簡単な魔法…というか魔力の使い方を教え始めると、意外にも子供達は少しずつ集まり始めた。

私自信もまだフレリスの授業、あとたまに両親や他のメイドさん達、コミエドールの町の人に軽く教えてもらったくらいなので全く使いこなしているとは言えないのだが、それでもやはり質というか練度というか、ともかくそういう物は私の方が上らしい。

貴族令嬢なだけあって魔力の質が違うとかそういうことなのだろうか?

それともやはり孤児院の魔法の使い方は最低限使えれば良いから練習もあまりしないのか、私の指導に興味を向けてくれたらしい。

「炎の魔力はまずは蝋燭やマッチを意識してみて。指先に火を灯すように…そう、良い感じ。その基本は出来てるなら、次は大きさのコントロールよ。すぐに大きな火を点けるとコントロールしにくいから、少し大きくしたらしばらくキープ。やってみて。」

「水の魔力は自分の体内から出すようにする方法もあるけど、それがイメージしにくいなら、周りから水をかき集めるようにイメージしてみるのも良いわ。空気には水が含まれているの。空気だけじゃなく水は生活の色んな所にあるでしょう?それを集めるようにしてみて。大丈夫、水の魔力は動かしやすいから、心配しなくても出来るわ。」

「貴方は現出は出来るのね。なら、使いやすい形を探してみましょう。持ちやすさ、振り回しやすさ、突きやすさ。魔力は色んな形に変化させれる分、一人一人に合った形がきっとあるはずよ。一つの道を極めるのも良いけど、まずは自分の使いやすい物を色々探すのも良いと思うわ。イメージが難しいなら木剣や棒を実際に持ってそれから現出で形を変えていくのも良いわね。」

私の出来る範囲で分かりやすいように教えていく。

それでもたまに首を傾げる子も居たがそれより年上の子や違う子がもっと分かりやすいように嚙み砕いて教えてあげる。

この世界の常識を私より知っている子も居るのだからありがたい。

共に協力しながら魔法の指導をしているうちに、だんだん私を見ている目が変わってきた…気がする。

なんというか、だんだん目に輝きが増してきたような気がする。

自惚れじゃないと良いが、心無しか表情が明るくなってきた気がする。

(……嬉しいな。)

ふと、そう思った。

言ってしまえば、今日来たのは自分の為にだったけど、こんな風に誰かに心から歓迎されている…というのは、もしかしたら両親以外の誰かから受けるというのはもしかしたら初めてかもしれない。

(こういうのも…良いな。)

そう思った私だった。


そして昼頃には。

「マルニおねえさん、いっしょにたべよ!」

「おれもマルニとたべる!」

「マルニ様、一緒にご飯良いですか?」

だいぶ気に入られたのか、こうなったわけである。


そんなこんなで初日からわりと皆から好印象を持たれて成果は上々…なのだが、私には気にしなければいけない事があった。

(少なくともソルスらしい子供は見当たらないわね…。)

そこを忘れるわけにはいかない。

私がソルスの話をしだすのはおかしい気もするが、念には念を入れて聞いておく。

ソルスの話だと分かるように、そしてそれでいて遠回しに…。

そろそろ私とフレリスは帰ろうかという話をしだした辺りで、私は近くに居た女の子に聞いてみる事にしてみた。

「ごめんなさい、この孤児院に、白銀の髪で赤と緑の目の子って居るかしら?以前そんな子を町で見かけたのだけれど…。」

「んー?…あ、もしかして、ソルスのことー?」

(!!)

やはりここにソルスは居るのだろうか。

「そう、多分その子よ、見当たらないようだけど、もしかしてここの子じゃないのかしら?」

興奮気味になりそうなのを抑えて、更に聞いてみる。

「ソルスはたぶんもうすぐかえってくるよー、たぶんアルデールがいっしょにいったからもりにいったんじゃないかなー。」

「!…なるほど、わかったわ、ありがとう。」

それを聞いた私は気を引き締めた。

ソルスの事もだけど…そうだ、アルデールもこの孤児院に居るのは当たり前な事を忘れてたからだ。


アルデール・ヴォルカーン。

「やがて光の君に」における、攻略対象の一人だ。

所謂幼馴染であり、国の騎士、そしていずれルートによってはソルスを護る騎士に、恋人になる。

少し頭は抜けているけど、まっすぐで気持ちの良い、扱う火属性と同じように熱い男の子。

(ソルスが居るならアルデールも居て当たり前だった…どうしよう、考えてなかった)

どうしよう、どうしようと考えていると孤児院の玄関が開く。

「ただいま帰りましたー!!」

「かえったぜー!」

一人の女の子と男の子が玄関から入ってきた。

そしてその姿に私は目を離せなかった。

(あれは…ソルスとアルデール…!)

間違いない。

燃える炎のようなはねっけのある赤黒い短髪に、少し黒めな赤色の意思の強そうな吊り目、自分の一個下の歳のわりには高い背、彼の得意な両刃の少し大きめな剣、頼りがいのありそうな強気な笑み。

アルデール・ヴォルカーンだ。


そして、間違いない。

首元くらいのさらさらのショートボブの輝くように白い銀髪に、オレンジに近い赤色と明るめの緑色の目はまるでころころとしたビー玉のよう。

可愛らしい、私より小さい身長、小さな顔、小さく少し細めの剣。

何より、明るくて、でもどこか暖かみのある柔らかな 、まるで春の暖かな日差しに照らされる小さな花のような笑顔。


一目見て、改めて、心を射貫かれた。

ソルス・アマーブレントに。


「……お嬢様、どうかされましたか?」

「………!!?」

ビクン、と心と身体が跳ねる。

いつの間にかフレリスが後ろに居た。

いけないいけない、完全に放心状態だったらしい。

とりあえず、今やるべき事をやらなければ。

私は、もちろん攻略対象のアルデールにも会ってみたかったけど、それ以上に、ずっとソルスに会って話したかったのだから。

主人公だからというのも少しは無くは無いけど……大好きなこの子に、会ってみたかったのだから。

「お嬢様、そろそろお屋敷に帰る準備は出来ましたでしょうか?」

「ごめんなさい、フレリス。私あの二人とも話してみたいから、少し待っててもらってもいいかしら?」

「今入ってきたお二人ですか?分かりました、では私は職員の方々と次の訪問の段取りを決めてきますから。」

フレリスも最初は不思議そうにしていたが、私の単なる興味と判断したのか、何か感じるものがあったのか。

どちらかは分からないけどすぐに自分の行動を許可してくれた。

「ありがとう、行ってくるわね。」

そう言うとアルデールとソルスの近くに少しずつ歩みを進める。

落ち着け、落ち着いて話さなきゃ。

警戒や不信感をなるべく与えず、そう、笑顔を見せて。

鏡の前で笑顔の練習はしたりしているつもりだけど、緊張する。

その緊張が鎖にならないように、それでいて、この胸のときめきはそのままに。

ゆっくり、ゆっくり深呼吸をしながら歩みを進める。


アルデールとソルスは他の孤児院の子供達に囲まれて話をしていた。

にこやかに笑う二人、それに釣られて笑いだす子供達。

まさに、この場所の中心と言えるような二人だった。

子供達の輪に囲まれる二人に近づくと、ソルスとアルデールは私に気づいたらしい。

見慣れない顔に首を傾げるソルス、少し目つきが険しくなるアルデール。


そんな二人に私は、頭を深く下げて声を掛けた。


「こんにちは、可愛らしい人と勇敢そうな人。私は……マルニーニャ・オスクリダ。オスクリダ家の貴族令嬢よ。


___少し、私とお話でも、如何かしら?」



今から私、「マルニーニャ・オスクリダ」と、この世界が求めたヒロイン、「ソルス・アマーブレント」、そして二人を取り巻く人々達。


その物語が、今、始まった。

物語はまだまだ序章に過ぎませんが、ようやくこの物語の主人公マルニと、この「世界」の主人公ソルスが出会いました。これからこの世界を、周りの人々を、そして何よりこの二人を、美しく彩って行けるように努力していく所存です。これからも改めてよろしくお願いいたします。

少しでも、読んでくれた読者の皆様の心の光に、彩になれますように。

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[良い点] あけおめ、ことよろ〜
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