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第9話 一年生試合 櫻庭中VS清公中 その③(他視点)

テストが終わったので投稿します

side.とある清公中の一年生


 また、目の前の小さな女の子にシュートを決められた。目の前に突っ込んできて、私もブロックするためジャンプをするが、彼女の前ではこの行為は無意味に等しい。何故なら。


「………高すぎでしょ」


 彼女のジャンプ力が高すぎるのだ。彼女がシュートを打つボールの位置はリングとほぼ同等のため、いくら私………いや、女子中学生が飛んだとしても届くことはない。


 しかも、彼女の前で甘いドリブルをしてしまうと一瞬のスキを突かれ、ボールを奪われてしまう。そして、ボールを奪われたら最後。誰も追いつくことが出来ずにシュートを決められてしまう。


 そのせいで残り4分の時点で点数差は51対68で、約30点差もあったはずが17点差にまでなってしまった。

 私たちもあの子を無視して攻めているが、シュートを打って外れたらリバウンドを取られたり、一人抜いてもカバーであの子に来られて焦ったところを取られたりしているからなかなか点数を稼ぐことが出来なかった。


「………凄いな」


 私は彼女の凄さに無意識でつぶやいた。




◇   ◇   ◇   ◇   ◇





side.清公中の女子バスケットボール顧問吉屋


 私は今、物凄く驚いている。現在コート内で起こっている出来事に。あの23番のビブスを着た彼女に。


 私は小学生の頃からバスケをしており、高校では全国大会ベスト8の記録も残した。そして、子供たちにバスケを教えたいという心で教員になり、かれこれ20年間様々な中学校でバスケを教えてきた。現在はここ清公中で外部コーチとして6年間教えている。

 20年ほどバスケを教えてきたので、バスケを見る目はあると思っているが、あの23番の子は私が見てきた中で一番だった。


 まず、彼女に一番目を見張るのはジャンプ力だ。彼女は身体は細く小柄でおそらく140㎝も身長は無いだろう。

 そんな恵まれた身体ではないのに、大人一人を超えるほどのジャンプ力がある。これを初めて見た時は唖然としてしまい、指揮を出すのを忘れてしまった。


 そして、あのスピード。ジャンプ力も高いのである程度は足の速さもあると思っていたが予想以上だった。高校の陸上部並みの速さでコート内を駆け巡り、彼女がダッシュでドリブルすると誰も追いつけない。


 最後に、彼女のバスケットボールの才能。彼女のプレーを見てみて分かったが、彼女は未経験者なのだろう。シュートは回転があまりかかってないし、ドリブルの技術は未熟。そして、ディフェンスの守り方。まださまざまあるが、指導者が見れば彼女は未経験者だという事が分かるだろう。

 しかし、今の行っている技術を経ったの一か月で行っているという事だ。私でも初心者の頃、一か月であそこまで上手くはなれなかった。しかも、彼女のスピードでドリブルをまともにつくことも出来ないだろう。

 それなのに彼女はそれを成功しているし、少しではあるが、試合の中でディフェンスの技術が明らかに上がっている。


 そんな彼女を櫻庭中が獲得していることに羨ましさを感じていた。彼女がもっと上手くなればたとえ彼女以外が普通のバスケ選手でも強豪校に勝てるだろう。少なくとも、彼女がある程度バスケが出来る存在になってスタメンに入られれば、私たちのチームに勝ち目は薄いと思っている。


「これは………鍛えないとな」


 私は徐々に点数が追い付いている試合を見ながらそう言った。




◇   ◇   ◇   ◇   ◇





side.秦央 舞


「凄い」


 私は今目の前で行われている試合を見ながらそうつぶやく。


 私はミニバスの頃、東京のミニバス内で最優秀選手賞を受賞した。その後、東京の強豪校に入学しようと思ったが、お父さんの都合により最近引っ越してきて、一年間、静岡引っ越すことになった。

 静岡の強豪校にでも入学しようと思ったが、一年しかここに入れないので、適当に家に近い阿原中学校を選んだ。


 そこでも実力を発揮しようと思ったが、いくらバスケの技術が高くても、中学生のガタイの良さに負けてしまうので、顧問の先生はもう少し身長が伸びたら出させてもらえるようだ。なので、毎日牛乳を飲んで身長を伸ばそうとしている。


 そして、今日は中学生になってからの初めての試合。とはいっても他の学校の一年生だけでやるだけのものだが、久しぶりの試合にワクワクしていた。


 そうしていると、阿原中以外の二つの中学の一年生試合が始まった。1Q目は清公中は経験豊富な者ぞろいで櫻庭中は劣勢を強いられていたが、途中で22番の子が状況を巻き返し、1Q終了時はほぼ互角で終わった。

 しかし、2Q、3Qで点差が離れた清公中の勝ちを確信した所にあの子が現れた。


 22番のビブスを着た小柄な彼女だけど、その細く小柄な体格からどうやって出しているのか分からない身体能力の前に清公中は対処しきれず、点数は徐々に追いついて行った。


 そして4Q終了時、点数は63対70で清公中の逃げ切り勝ちで終わった。


 あの状況でほぼ彼女だけであそこまで追い詰めたのを見て、私は戦ってみたいなと思った。しかし、その願いはここでは叶わなかった。

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