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もしも、昔話の登場人物が中二病だったら  作者: 三羽高明


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4/6

【大きなかぶ】当然、抜けない

「や、カブめ、とうとう生えてきおったな」


 この間植えたカブが成長しているのを見つけたのは、畑仕事に出たおじいさんでした。


「昨日、寝ないで必殺技を考えたかいがあったわい。……食らえ! 必殺、カブ抜き拳『うんとこショット』!」


 おじいさんは勇ましいかけ声と共に体をねじりました。


 しかし、カブは抜けません。


「ふん、そう来なくてはいかん」


 おじいさんは勝ち気に笑いました。


「最近の野菜は手応えがないのが多すぎる。少しはワシも楽しませてもらわんとな……。ゆけ、『よっこらショット』!」


 おじいさんは両手を高く掲げて片足立ちになりました。


 それでもカブは抜けません。


「なんとまあ、我が夫ともあろう者が、衰えたものよ……」


 そこに、おばあさんがやって来ました。


「その程度のことで、大地を裂く白の悪魔おおきなかぶが抜けるものか。……退いていろ、私がやる」


 おばあさんは近くから木の枝を拾ってくると、その先をカブに向けて突きつけました。


「この魔剣ホワイトレヴナントソードをかわせるか? ほあっちゃー!」


 おばあさんは木の枝でカブを何度も叩き始めました。


 ですが、カブは抜けません。


「ぐあっ……!」


 その内に枝が折れて、おばあさんの額に直撃しました。おばあさんは頭を押さえて、地面にうずくまります。


「こいつ、できる……!」


 おじいさんはおばあさんに駆け寄り、カブを忌々しげに睨みました。


「魔剣将軍!」


 その光景を見ていた孫娘が飛んできました。


「くっ……もはや私もこれまでか……」


 おばあさんは仰々しく手を天に伸ばしました。それを孫娘が握りしめ、唇を噛みます。


「おのれ、よくも我らの大将を……」


 孫娘は勢いよく立ち上がると、折れた木の枝を使って、地面に魔方陣を描きだしました。


「お、お前、まさかそれは禁断の……」


 おじいさんは目を見開きます。


「やめろ! そんなことをすればお前は……!」

「……今まで世話になりましたね、カブ抜き拳の伝承者よ」


 孫娘は覚悟を決めた顔をしています。それを見たおじいさんは、止めても無駄だと思ったのでしょうか。拳に力を込めました。


「待て、妻の仇だ。ワシもやろう」


 おじいさんは「はああぁ……」と唸って、気合いをため込みます。それを見たおばあさんは、よろよろと起き上がりました。


「貴様らにそこまでのことをさせておいて、この私が何もせぬというわけにもいくまいな。見せてやろうではないか、大地を裂く白の悪魔おおきなかぶに、我が究極奥義を……。この残り少ない命を賭して、な」


 彼らは三方向からカブを囲みます。そして、それぞれが得意な技を一斉に放ち始めました。


「食らえ、必殺二連拳、『うんとこショット、どっこいショット』!」

「ブラックレヴナントソード!」

「出よカブ喰らいの獣! ドーン、バーン、ズババーン!」


 三人の猛攻をカブはもろに食らいました。土煙が舞い、視界が遮られます。


「やったか……?」


 誰かが呟きました。


 そして、視界が晴れた先に広がっていた光景はというと……。


 結局カブは抜けていませんでした。

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― 新着の感想 ―
うーむ、これは「血は争えない」というべきですか、或いは「この祖父母にしてこの孫娘あり」というべきですか。 いずれにせよ、三人とも価値観がピッタリなようで仲は良さそうですね。 日頃からこうした遣り取りを…
[気になる点] うんとこショットの中二病の中に1人だけ小二病が混じってる感 [一言] 一瞬うんこショットに見えてビックリしました
[良い点] 拳士、剣士、魔導士、バランスの取れたパーティですね(笑)。 更なる力を求めて、闇の力を開放しましょう! [気になる点] 犬、猫、鼠は同じ病なのか、それとも冷ややかに三人を眺めているのか………
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