モンスターの村 その4
~逃亡して10分後~
存微「ハア…ハア…危なかった…ゴリラ僧侶に殺されるかと思った…」
カイル「おっさん、カップ麺ごちそうさまでした!!」
存微「!?!?無事…だったんですか!?」
バルト「まあな。俺らにかかればあれくらい朝飯前よ」
カイル「これまでに食べた全てのラーメンの中で、一番おいしかったぜ!」
バルト「大ウソにも程がある!!」
カイル「いやホントだよ。俺これまでの人生でカップラーメンしか食ったことねえもん。そんなかで一番おいしかったわ(笑)」
バルト「可哀想!!今度ラーメン屋に連れて行ってあげるよ!!」
存微「そ、それで私に何の用ですかな…?」
バルト「…アンタ、なんか俺らに隠してるだろ」
存微「は!?」
リゼ「隠し事あるでしょって聞いてんの。素直に言った方がいいわよ?」
存微「…………………」
スピカ「お願いします。私達も力になれると思います!!」
存微「あ!!さっきのゴリラ僧侶!!」
スピカ「誰がゴリラ僧侶だゴルア!!」
存微「ひいいいい!!」
リゼ「まあまあ。それは事実だから」
スピカ「張り倒しますよ!?」
バルト「アンタが悪い人じゃないってことはわかってる、だから教えてくれ!」
カイル「どこが!?俺らからカップ麺で金を巻き上げた極悪人だろ(笑)」
バルト「お前はやかましい!!…でも実際それは事実!!」
存微「…どうやら、全てお見通しのようですな…」
バルト「ああ。大体はな」
カイル「…え??何何??何の話!?」
存微「なぜ気づいたのですか…?」
バルト「いや、アンタの様子が少し変だったからな。ずっと気になってたんだよ」
スピカ「私達がこうやって、長い間この家に泊まってたのは、あなたの様子を見るためです」
カイル「え!?大富豪がやりたかったから泊まってたんじゃないの!?」
リゼ「そこで、あんたは定期的に大量の食料を持って、頻繁にこの家を出て行ってることがわかったのよ」
存微「そ、そうでしたか…」
カイル「え…?みんな大富豪やりたかったよね?」
スピカ「でもあの量は、ただのペットにあげる量ではありまんよね??」
存微「そ、それは…」
カイル「え…?みんな大富豪楽しかったよね?」
バルト「ああ。ただのペットなら俺達に隠す必要もないからな」
存微「……………………」
リゼ「もういい加減教えなさいよ。こっちはもう大富豪なんてやりたくないのよ!!」
カイル「え…噓でしょ!?みんな楽しんでたじゃん!!」
バルト「あれは、楽しんでたフリだ。もうとっくに飽きてる」
カイル「嘘だ…嘘だ…噓だあアアアアアアア!!」
リゼ「何をショック受けてんのよ!!普通15時間やれば飽きるでしょ!!」
カイル「大富豪ほど楽しいゲーム、他に無いだろ!!」
リゼ「全然あるわ!!しかもトランプをゲームにカウントすんな!!」
カイル「俺これまでの人生でトランプしかやったことねえもん。トランプが一番楽しい」
リゼ「井の中の蛙!!てか可哀想!!」
スピカ「え!?じゃあスプラトゥーンやろうって話は何だったんですか!?」
カイル「いや、スプラトゥーンより大富豪の方が100倍楽しいっしょ。」
リゼ「そんなわけあるか!!任天堂ナメんな!!」
存微「…なんという不毛な会話!!」
バルト「おい。アンタがさっさとそのモンスターについて語らないと、こんな不毛な会話がいつまでも続くことになるぞ??」
カイル「いや、どんな脅し方!?」
存微「…わかりました!!もう話します!!」
カイル「なんか落ちた!?どんだけ嫌だったの!?」
存微「…こちらに来てください」
~移動中~
存微「皆様のおっしゃる通りです。私はこのような巨大モンスターを、この村で密かにずっと飼っていたのです…」
カイル「えええええええええ!?!?」
リゼ「で、でかい…」
バルト「なるほどな。そういうことだったのか」
スピカ「これは…隠したくなりますね…」
存微「じ、実は…コイツが小さい頃、怪我して倒れてるところを見つけて、助けてあげたんです…」
存微「でも大きくなるにつれて、コイツはもしかしたら相当凶暴なモンスター何じゃないかと思い始めて…でも俺に懐いてるからどうしようもなくて…捨てるのは可哀想だし、他の村に行っても大変なことになるだろうし…」
スピカ「だからこの村に1人で残って世話をしてる、ということですか??」
存微「はい…」
バルト「なるほど、それで俺達にコイツがバレないように、さっさと追い出そうとしたのか…」
存微「ええ。気持ちの悪い村だと思って、早く出て行ってくれたらよかったのですが…」
カイル「なるほど。じゃあ俺の前に現れたのっぺらぼうも、アンタの仕業か(笑)」
存微「え?なんですかそれ?」
カイル「え?」
存微「この村に、のっぺらぼうなんていませんけど?」
カイル「え??のっぺらぼうのオンパレードって話は??」
存微「あー、あれは嘘ですよ(笑) ああ言えば、怖がってすぐに出て行ってくれると思ったんで」
カイル「え?じゃあ、俺が見たのっぺらぼうって…本物…?」
泡ブクブク バタンキュー
スピカ「キャー!!勇者様が倒れた!!」
リゼ「思い出して怖くなっちゃったのね…相変わらず情けない…」
バルト「なるほど。火の玉とか皿の割れる音とか、あれは全てアンタが演出したのか」
存微「その通りです。カップ麺の嫌がらせも全て、長くとどまろうとするあなた達を早く追い出すためにしたことです…!」
スピカ「そうだったんですか…」
存微「どうか…どうか私達を見逃してください!!お願いします!!誰にも迷惑はかけません!!」
バルト「そうだな…でもやっぱり、安全のためには討伐しなきゃならん」
存微「そ、そんな…」
スピカ「流石にこの大きさのモンスターだと、軽々と無視はできませんね…」
リゼ「そうね。残念だけど…」
カイル「…なんだかよくわかんねえけど、別にこのままでいいんじゃない?」
リゼ「は…?何が?」
バルト「急に目覚めた!?」
カイル「いや、このモンスター、このままおっさんに任せていいんじゃね?」
リゼ「は!?」
バルト「いやいやいや。流石にまずいだろ!!」
スピカ「正気ですか!?勇者様!!」
カイル「いやだって、まずこの辺に他に村はないし、コイツもアンタにすごく懐いてるみたいだし」
バルト「だからと言って、人を襲わないとは限らないだろ!!」
カイル「…おっさん。アンタ、妻と子供がいなくなった悲しみを、このモンスターで埋め合わせてたんじゃないのか?」
存微「そ、それは…」
カイル「悲しみに明け暮れていたアンタの前に、怪我したコイツが現れた…」
存微「そうですね…」
カイル「このおっさんは、人に迷惑をかけないためにこんな人が寄り付かない辺鄙なところに住み、このモンスターの世話をしてるわけだろ?その思いも汲んであげるべきじゃないのか?」
存微「カイルさん…」
スピカ「勇者様…」
バルト「そうだけどよ…そもそもこのおっさんがいなくなったらどうすんだよ!?」
リゼ「そーよ!!アンタ、コイツが暴れたら責任とれるわけ!?」
カイル「このおっさんが死んだら、俺がコイツの世話を見るよ(笑)」
リゼ「は…?」
バルト「いや、それは無理だろ…(笑)」
カイル「できるできる。ほら、コイツこんなにも俺に懐いてるし。」
巨大モンスター「グルルルルルルル…」
バルト「…滅茶苦茶にらみつけられてるけど」
カイル「ツンデレだからコイツ(笑)」ポンポン
ガブリ
リゼ・バルト「「あ、噛まれた」」
カイル「ギャアアアアアアアアアアアア!!」
バルト「とまあ、あのアホはほっといて、どうする??」
スピカ「まあ…そこまで言うのであれば、私達で世話をしますか!!」
リゼ「マジで!?絶対嫌よ!!こんな化け物!!」
ガブリ
リゼ「キャアアアアアアアアアアアア!!」
スピカ「化け物とか悪口言うからですよ(笑)」
リゼ「モンスターと何が違うのよ!!」
存微「…最初は確かに、コイツは手の付けられない暴れん坊でした。この辺りの廃墟もよく破壊していました。しかし今は心を通わせ、一緒に静かな生活を送れるようになったのです!」
スピカ「…………………」
バルト「それはわかるけどよ…アンタがいなくなった後が心配なんだよ…」
存微「おそらくコイツは、私がいなくてもこの地から離れないと思います!!それに人と遭遇しても絶対に襲ったりしません!!」
カイル・リゼ「「いや、たった今襲われたんだけど!!」」
存微「それは、コイツをバカにしたからですよ。人の言葉がわかるんで」
カイル・リゼ「「短気すぎるだろ!!」」
カイル「やっぱり討伐するか…」
リゼ「そうね。そうしましょ」
バルト「おーいカイルくん。完全に意見が変わってるぞー。」
スピカ「とりあえず、私達が定期的に様子を見に来ましょ」
バルト「…そんなんで本当に大丈夫か?」
スピカ「まあ心配はありますが、とりあえずこの方を信用しましょう」
存微「あ、ありがとうございます!!恩に切ります!!」
スピカ「もしあなたに何があった時は、この子を私達のペットにします」
存微「ホントですか!?それは本当にありがたい!!」
バルト「正気かスピカ!?」
スピカ「ええ。大丈夫ですよ。だってこのモンスター、良い子ですもん」
カイル・リゼ「「どこが!?」」
スピカ「絶対いい子ですよ。ほらヨシヨシ」
キュル~~~ン デレデレ
カイル・リゼ「「ダニィ!?」」
スピカ「よくお世話されてますよ。この子なら私、信用できます」
バルト「ま、まあスピカがそこまで言うなら…」
カイル「じゃ、じゃあ俺もナデナデする!!」
リゼ「あ、あたしも!!ヨ~シヨ~シ」
ガブリ
カイル・リゼ「「ギャアアアアアアアアアア!!!!」」
存微「あ、一度嫌われると、しばらくはずっと噛みつかれます(笑)」
カイル「いや、根に持ちすぎだろ!!」
リゼ「てかもっと早く言いなさいよ!!」
~完~




