四角関係の進展 その1
~とある宿屋の男湯にて~
バルト「なあ、ちょっといいか?」
カイル「うん?なんだよ?」
バルト「ド直球で聞くぞ??正直に答えろよ??」
カイル「お、おう…?」
バルト「お前、リゼが好きだろ…?」
カイル「そ、そ、そそそそそんな訳ねえじゃん!!ナイナイ!!」
バルト「いやもう、そんな典型的な反応はいらん。正直に教えてくれ」
カイル「…………………」
バルト「頼む。大丈夫だ。絶対にあいつらには言わん」
カイル「…………………」
バルト「信じてくれ…代わりに俺も大事な秘密を話すから…」
カイル「え…?マジで!?」
バルト「ああ…実は俺、スピカが好きなんだ…」
カイル「ええええええええええええ!?マジで!?」
バルト「声がでけえ!!」
カイル「お、おう…すまん、あまりの衝撃で…」
バルト「ああ。だからお前も教えてくれ」
カイル「お、おう。お前の言う通り、俺はリゼが好きだよ…」
バルト「やっぱりか!!お前の態度的に、そう思ってた!!」
カイル「お、おい。でも絶対に言うなよ…?」
バルト「言わねえよ。お前こそ、この秘密を誰にも話すんじゃねえぞ?(笑)」
カイル「おう!!わかった!!男同士の約束だな!!」
バルト「よし!!」
~同じく女湯にて~
リゼ「ねえ、ちょっといい?」
スピカ「はい?どうしたの?」
リゼ「あのさ、質問があるんだけど、正直に答えてね??」
スピカ「う、うん…」
リゼ「スピカ、カイルが好きでしょ…?」
スピカ「そ、そ、そそそそそんな訳ないじゃないですか!!ナイナイ!!」
リゼ「いやもう、あたしはわかってるから。もう隠さなくて大丈夫」
スピカ「…………………」
リゼ「流石に長い付き合いだし、態度見てればわかるよ…」
スピカ「…………………」
リゼ「それに、アンタだって、あたしが誰を好きか、とか、もう気づいてるんでしょ…?」
スピカ「ま、まあ、それは…」
リゼ「そうよ…実はあたし、バルトが好き…」
スピカ「ええ!?マジですか!?私はてっきり村の大工、ゴンザレスさんが好きなのかと…」
リゼ「誰だそれ!?」
スピカ「ゴンザレスさんは村1番の力持ちですよ!?」
リゼ「知らねーよ!!」
スピカ「冗談です冗談。まあ、薄々気づいてはいました。バルト…ですよね?」
リゼ「いや…まあ、好きっていう訳じゃないんだけど、まあ尊敬できるっていうか…」
スピカ「ここまで来てまだツンデレるか!?」
リゼ「ツンデレるって何!?」
リゼ「まあそう…だからスピカも教えてよ…」
スピカ「…そうね。リゼの言う通り、私は勇者様、カイルが好き…」
リゼ「やっぱり!!なんか態度的に、そんな感じがしてた!!」
スピカ「で、でも絶対に言わないでくださいね…?」
リゼ「言わないよ!!スピカこそ、この秘密、誰にも話さないでよ!?(笑)」
スピカ「もちろん!!女同士の約束ね!!」
リゼ「うん!!」
~就寝前~
カイル「なあ、バルト」
バルト「なんだよ、改まって」
カイル「お前の恋愛、俺が手助けするぜ!!」
バルト「はああ!?」
カイル「お前、スピカが好きなんだろ!?ならもっとそれをアピールしねえと!!」
バルト「いやもう結構してるけど!?」
カイル「いやもっと2人きりであれこれすべきだと思う!!」
バルト「それは…まあな」
カイル「というわけで、俺が上手く計画して、これからの旅の途中でスピカとバルトが2人きりになるようにしてやる!!」
バルト「おお!!…それでお前もリゼと2人きりになれるってわけか(笑)」
カイル「そう!!まさに一石二鳥の作戦!!」
バルト「…まあ、乗るしかねえな!!」
カイル「よっしゃ!!」
~次の日~
カイル「ヤバい!!食料を買い忘れた!!」
リゼ「はあ??」
カイル「前の村で食料を買い忘れた…困ったぜ…こうなったら、その辺りの森で探すしかねえなあ…」
スピカ「あ、それなら私、買っておきましたよ。安心してください」
カイル「ええ!?」
スピカ「え?」
バルト「おい…」
カイル「ヤバい、スピカがしっかりしすぎている…」
バルト「でも俺、フルーツが食べたいなあ…」
スピカ「そう思って何個か買ってあります」
バルト「有能すぎ!!」
カイル「でもそれじゃあ嫌だ!!やっぱり自分で直接もぎ取って、その場で新鮮な状態で食べたい食べたい食べたい~~!!!」
リゼ「子供か!!てか何なのよさっきから!!文句ばっか言うな!!」
バルト「ち、畜生…コイツがこんな体を張ってくれてるんだ…俺も手伝うぜ!!」
リゼ「ホント、カイルはしょーがないわよねえ、バルt」
バルト「俺も食べたい食べたい食べたい~~!!」
リゼ「ええ!?」
スピカ「バ、バルトさんまで…」
リゼ「一体どうしちゃったの…!?バルト、頭でも打った??大丈夫??」
カイル「おいリゼ!!俺への反応と違いすぎるだろ!!」
リゼ「当たり前でしょ。アンタは良くも悪くもいつも通りじゃない」
カイル「そんな訳あるか!!いつもはもっと知的だろうが!!」
リゼ「どこがよ!?自分の言動をもう少し振り返れ!!」
スピカ「仕方ありません…それでは二手に別れて探しましょうか…」
カイル「じゃあ、俺とリゼはあっち!!バルトとスピカはあっちね!!」
バルト「りょーかい!!」
リゼ「ってええ!?ちょ、待って急に!!」
カイル「よっしゃあ!!行くぞ!!リゼ!!」
リゼ「ちょ、いやああああああああ!!」
バルト「よし!!じゃあスピカは俺と行こう!!」
スピカ「ええ。お願いします」
バルト(よっしゃああああああ!!珍しくナイスだぜカイルウウウウウ!!)
バルト(これを機に、スピカをメロメロにしてやるぜ!!)
スピカ「この森、結構草が生い茂ってますね…」
バルト「スピカが怪我でもしたら危険だ。ちょっと下がってくれ。俺が切り開く!!」
バルト「うおおおおおおおお!!」
スピカ「ちょっと待ってください!!」
バルト「え??」
スピカ「植物だって生きています。むやみやたらにぶった切っては可哀想ですよ」
バルト「え??あ…うん。なんかごめん」
バルト(え…?ヤバイ…なんか逆に関係が悪化したかも…)
スピカ「命は大事にしませんと。バルトは力が強いことはいいことですが、少しばかり慈悲の心を持った方が良いかと私は思います。そう、勇者様みたいに」
バルト「なん…だと…?」
スピカ「勇者様は、ああ見えて弱者を慈しむ優しい心を持っています」
バルト「…………………」
バルト「なら俺は、一生カイルには勝てないのか…」
スピカ「いいえ。そんなことはありません。心だって成長させることができます。バルトが今この瞬間から慈悲の心を持てば、強いうえに優しい、もはや最強の人となるでしょう」
スピカ「マジで!?」
バルト「はい。私は信じてますよ」
スピカ「うおおおおおおおお!!」
リゼ「なんで私がカイルと…バルトと一緒が良かった…」
カイル「うん?なんか言ったか?リゼ」
リゼ「い、いや?何でもない!!」
カイル「そうか。それよりこの森は危険がいっぱいだからな。気をつけろよ?」
リゼ「はいはい。わかってるわよ」
カイル「足元気をつけろよ!?」
リゼ「はいはい」
カイル「頭上にも気をつけろよ!?」
リゼ「はいはい」
カイル「目の前にも気をつけろよ!?」
リゼ「うっさい!!アンタは親か!!」
カイル「おいおい。そんな大きな木に登って大丈夫か??」
リゼ「うるさい!!アンタは心配しすぎ!!あたしを誰だと思って…」
ボキ!
リゼ「キャーーーーー」
カイル「リゼ!!うおおおおおおおお!!今助ける!!」
カイル「すてみタックル!!」
ズドン
リゼ「ゴフッッ」
ドカーン!
カイル「大丈夫か!!リゼ!!」
リゼ「いや、アンタのせいで、重症化したわ…」
カイル「いやー危なかった。もう少しで大怪我するところだったな!」
リゼ「いや、もうしてるんだけど!?てか逆に大怪我したんだけど!?」
カイル「俺がタックルしてリゼをキャッチしなかったら、今頃お尻から落ちてたぞ?」
リゼ「だから、そっちの方が良かったわ!!てゆうかアンタ、すてみタックルしてこなかった!?助ける気なかったよね?むしろ殺す気だったよね?」
カイル「まあまあ。俺だって反動ダメージを受けてるんだから。許してくれよ」
リゼ「やっぱり攻撃技のすてみタックルじゃねえか!!もうマジで嫌い!!」
カイル「そ、そんなあ!!」
リゼ「やっぱりアンタはアホだしドジだし、ホントに頼りにならないわ!!」
カイル「つ、次こそは守ってみせる!!だから許してくれ!!」
リゼ「…まあでも、そうやっていつも考えなしに突っ込んで、真っ先にみんなを助けていく姿、あ、あたしは嫌いじゃないわよ…?」
カイル「え…マジで!?」
リゼ「ま、まあでも、もう少し頭は使って欲しいけどね!!」
カイル「任せてくれよ!!これからは頭突きで助けるから!!」
リゼ「そういう意味じゃねえよ!!」
~30分後~
カイル「おい!!お前の方はどうだった??」
バルト「完璧だったぜ!!超絶進展した!!」
カイル「俺もだぜ!!イエーイ!!」
リゼ「結局、何の時間だったのかしら…?」
スピカ「勇者様、フルーツ探してましたか…?」
リゼ「いや全く。おしゃべりして終わった(笑)」
スピカ「こっちもです。何だったんでしょう…?」
リゼ「アンタ達さあ、結局フルーツはいいの?」
カイル・バルト「「え??何の話??」」
リゼ「マジで何なの!?時間返せ!!」
~続く~




